逆転裁判5感想〜「新たな逆裁の始まり」を感じさせる良作

先月発売された逆転裁判5

逆転裁判5 - 3DS

逆転裁判5 - 3DS

自分はAmazonで発売日に購入。プレイ自体はドラクエX日課が忙しくぼちぼちと進めていましたが、今週一気に最終話をクリアしました。以下、プレイしての感想です。(ネタバレを多少含むので注意)

シナリオについて〜5話構成、時系列を一部前後、最後の盛り上がりは秀逸

シナリオとしては5話構成。1話はいつものようにチュートリアル的な内容ですが、4でダルホドウ化していた成歩堂君が弁護士として登壇、「逆転裁判らしい逆転裁判」をプレイ出来たのはいい感じでしたね。その後2話では4の主人公、王泥喜法介がプレイキャラに。ただ、自分でプレイしてしまうと成歩堂とあまり差がないのが。元々4で世代交代を意識して作られた主人公キャラなので仕方ないのかもしれませんが。この辺から、話の時系列が前後してきて頭が混乱したところも。

第3話が新キャラ「希月心音」が主人公で学園話。1話で出てきた少女、森澄しのぶが再登場してきます。ここもやっていて頭が混乱したところ。時系列的には2話→3話→1話→4話→5話なんですが、新キャラの心音としのぶがさらに幼少から知り合いだったりするのが、状況把握が難しかったところかもしれません。まあ、ちゃんと整理してプレイしていればいいですし、各話をプレイしている間は特に問題は無いんですけど。

4話と5話はある意味セットとなるもの。宇宙関連が舞台なのははやぶさ宇宙兄弟の影響かな。どのぐらいからストーリープランがねられていたのかが分かるというかw。この2つは成歩堂がプレーヤーキャラに。さらに過去の事件の真相を暴くパートでは御剣怜侍も登場してきましたね。3話までは犯人はすぐわかったのですが、4話では真犯人わからず。5話では残りの人物で犯人になりそうなの、ってことで宇宙飛行士に当たりを付けていたのですが、見事外されて「おー」という感じでした。まあ、ある意味定番の真犯人パターンではあるんですけどね、シリーズ物の犯人としては。(個人的には森博嗣の作品で「一人称で話していた人が犯人」ってパターンが一番「やりやがった」感がありましたが。)5話の過去事件からの流れは成歩堂VS御剣の久しぶりの法廷バトルでファンとしてもグッと来ましたし、その後主要キャラのバックグラウンドや人間性の良さが描かれていて、いい感じでした。

グラフィック&システム

グラフィックについてですが、キャラの3Dグラフィックはかなりすばらしいですね。というか、2D絵なんじゃないの?って見まごうばかりでした。立体視にした時も若干平たいような感じになっていて。ぐるっと回り込むカメラアングルとかないと、プリレンダと思ってしまいそうな感じ。3DSの解像度でもジャギは目立たず、いろいろこった「逆裁らしい表情」もうまく表現されていてよかったです。

システムとしては、これまでのシリーズのシステムを寄せ集め、さらに新要素として心理システムを採用。新システムは発言の内容と心理表現の矛盾を突くというものなのですが、結構難しいところもありました。単に感情反応が出るところだけ指摘すればいいのではなく、「発言に反して感情が出ていない」という方向でも指摘しなければなりません。総当りとなると各セリフごとに4択となって大変。何回かはまりそうになったところがありました。最後の方は大分慣れてきましたが。特にペナルティがないのも良かったです。

4で出てきた「みぬき」の腕輪については、4で「インチキすぎる」と大バッシングされいたからかすごく気を使って出していましたね。途中「インチキ」呼ばわりで本当に使えなくなったり、自分で封印したりと。心理システムも、最後の方で「聴衆はうさんくさいと思っている」とか、ある意味自虐的セリフをキャラに吐かしていたのは良かったです。最後は証拠で、という。

推理パートについては、古臭いカーソル総当りが簡略化され、調べる箇所でアイコンの形が変わり、さらに調べ終わったらチェックマークが付く形。さくさく進み、二度手間もいらないのはいいですが、その分簡単すぎる印象も。移動とかでも、次にどこにいけばいいかは明確にしめされ、たまに突きつけないといけいない場面でも「あれをつきつけてみるか」と親切に説明があり、かなり難易度は低かったように思います。

裁判パートでも、何度も失敗していると「相談する」というコマンドが現れ、証拠品を提示すべきセリフを明示してくれます。「指摘したい矛盾はわかってるんだけど、どのセリフと証拠を使えばいいか分からない」みたいなのでハマったときに役立ちましたね。もっとも、ペナルティでどんどんゲージが減ってゲームオーバーになっても、ノーリスクでその場再開できるので良かったですけど。そして、裁判パートの最後では推理のまとめ、みたいな選択の連続。いままでだとこういう「最後の大逆転」も証拠品で示していましたが、論理展開に選択肢を組み合わせることでより綺麗にまとまった感じはします。ある程度頭の中では分かっているものが多かったですけどね。

キャラクターについて

続いてはキャラクターについて。4がファンの間で黒歴史化されていたので、もっと4は無かったかのような扱いにするかと思っていたのですが、結構きれいにまとめてきていましたね。自分は4がそもそも世間の評判ほど嫌いではなく、キャラもいい感じだと思っていただけに、こういったフォローはよかったですね。王泥喜はよりたくましさが出た感じ。ただプレイヤーキャラだと個性に乏しく、4話からのホモ臭い親友設定もちょっと後付感は強かったですけど。成歩堂については「もうちょっと馬鹿でもいいかな」と思うところはあれど、まあ成長したということでしょうか。非常に落ち着いた、大人な感じでした。御剣については、ブレがないですね。真理を追求するのが一番で、仮想裁判でもガンガン矛盾付いてくるところはかっこよかったです。ただ、キャラデザは唯一ちょっと違和感があったところも。髪のボリュームかなぁ。メガネは良かったですけど。

新キャラでは心音はかなり元気がある感じ。服装のせいか、肩幅が広く「ごつい」印象がするのも。リアクションも体育会系ですしね。まあ、この辺はシナリオの中で伏線もあるんですが。かわいいというよりは「男前」な感じでした。もう一人の新キャラの夕神検事は、「心理操作で有利に」とか「単なる詐欺じゃん」とゲーム中でも成歩堂か誰かがつっこんでいたところ。すぐ暴力に訴えたり、そのくせ最後は負ける、と2話3話はあまりいいとこ無し。ただ、4話5話ではストーリー本筋と絡んで良さが出てきてトントンという感じでしょうか。4の臥龍よりは存在感ありました。もう一人新しく出た番刑事は、アメリカンな形でかなりくどい印象。ただ2話とかでは結構プレイヤーに有利な動きをしたりと、結構味のある動きはしていました。これ以上はここでは触れるのは辞めておきます。

その他、旧キャラとしては春美ちゃんが大きくなって登場。仕草や立ち位置的に、真宵のポジションを兼ねているような感じになっていましたね。彼女との会話で、現状の真宵と成歩堂とのかかわりが今もあることが判明。たまに会っているし、王泥喜とか心音も真宵を知っているという状態で、結局「プレイヤーだけが今の真宵と会えない」という非常にもどかしいところも。もしかしたら、今後のDLCか、逆裁6で出してくるため取っておいている感じですかね。それ以外だと、イトノコ刑事と狩魔冥が特に出てこなかったですね。この辺も今後に期待でしょうか。

まとめ〜「新たな逆転裁判のスタート」がようやく

以上がざっとした感想です。まだDLCのクイズや追加シナリオはプレイしていない状態ですが、トータルとしてはあの4の後長期間空いたことで警戒していた割には非常に面白かった印象です。成歩堂も弁護士にもどり、御剣も登場。時間が立ったことでお互い立ち位置が変わり、前ほど「若気のいたりのぶつけ合い」みたいなノリはないですが、7年以上経過したという4の大きな変化を受け継ぎながら、ファンの批判に向き合いうまく「逆転裁判」としてのレールに戻してきたという感じがします。インタビューを見ても、新スタッフでも逆裁の良さを活かして新作をつくる、ということでいろいろ工夫されたのが分かります。

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シナリオとしては、タクシューが抜けた分、全体の「アクの強さ」は抑え目になった感じ。論理的な無茶が少なくなった分、こじんまりとまとまってしまってる感じも。シナリオについては、スタッフロールで428や閃乱カグラ北島行徳が関わっていたことが分かりました。これはあまり発売前はアピールしてなかったですね。他の作品のイメージを持ち込みたくなかった、ということなんでしょうかね。言われてみれば、たしかにシナリオのロジックや盛り上がりの調子なんかが似ている印象はしますね。

全体として、ようやく新たな時間軸での逆転裁判がスタートした、という感じです。1〜3の世界原理主義な人とかだと5もだめなのかもしれませんが、個人的には4の悪評で新作や展開が危惧されていた中、よくぞもう一度メインステージに戻してくれた、という感じがします。真宵関連ではまだ露出が少なく、糸鋸関連の話も残っているので、これがDLCで出るのか、新作で出るのか。いずれにせよ、5からまた新たな逆裁ワールドの展開が続いていきそうな、そんな感じがしますね。キャラも増えて、サブシナリオとかもいろいろ作れそうですし。今後の展開を楽しみにしていきたいと思います。