任天堂、3DS関連訴訟で米国連邦地裁陪審より特許侵害認定を受ける

3DSは国内好調ながら、WiiUの失速と3DSの海外普及速度が想定通りでないことでなかなか軌道に乗れないでいる任天堂。そんな中、また一つ気がかりなニュースが飛び込んできました。

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訂正:米連邦地裁陪審、3DSで任天堂<7974.OS>の特許侵害を認める | マネーニュース | 最新経済ニュース | Reuters
朝日新聞デジタル:「3DSは特許侵害」任天堂に29億円賠償命じる評決 - 社会

2011年にアメリカで起こされていた3DSに関する特許訴訟で、連邦地裁の陪審団が「任天堂が特許侵害している」と認定して賠償するよう評決を出したとのこと。大企業は始終訴訟起こされているので、起こされること自体はあまり関心はなかったのですが、陪審で特許侵害認定出るというのは、ちょっと事態が大きくなっていますね。

ソニー社員の富田氏が提訴〜裸眼3D表示に関する特許で

今回の特許訴訟ですが、提訴したのは富田誠次郎という人物。なんでも2002年までソニーに30年努めておりそこで退職、その後おこした個人の企業で個人名において特許を申請したのが、今回問題となっている特許のようです。当然ベースとなるのはソニー在籍時の研究でしょうから、ある意味ソニーは技術持ち逃げされたような形なんですかね。

具体的に該当特許としてあげられているのは米国特許7417664というもののようです。
特許 US7417664 - Stereoscopic image picking up and display system based upon optical axes ... - Google 特許検索

これは、日本では以下の特許がほぼ対応する模様。
立体映像信号生成回路及び立体映像表示装置 - astamuse(アスタミューゼ)

こちらで請求項や説明の図などを見ることができますね。

焦点は「立体感の調整」?〜事前に富田氏が営業行っていることもマイナスに

出願が2002年とかなり前なだけに、内容もアナログテレビのインタレースなどを意識した内容になっていますね。ただ、請求項1は一般的な立体視における映像調整全般にかかりそうな広い内容で、これが有効となっているとすると立体視系にはなんらか引っかかってるととれなくもありません。どっちかというと肝は請求項2にある「情報取得手段」と「立体感の調整」の方でしょうか?説明の方を読んでいくと、撮影時に想定している画像サイズや視差と異なると不快な映像になることがあり、これを後から調整する、というのがポイントみたいですし。基本的には情報は自動的に取得して調整する想定のようですが、説明の0107のところに「個人差にも対応できるよう手動による微調整機能も有する」とも書かれており、この辺を加味すると3DSのボリュームでの立体感調整が焦点になっているように感じます。これが裸眼3D液晶納めているシャープでなく任天堂が訴えられているところなのかもしれません。

今回の陪審の評定にあることで気になるのは「以前に富田氏が任天堂に営業に行っており、その時に応対した人が3DSの主要開発になっている」というところでしょうか?この点が、陪審の心象を大きく損なった可能性はありますね。2003年の営業の内容が頭にあり、それを元に任天堂がボリューム調整などのアイデアを生み出したのでは、と捉えられたのかもしれません。そうでないことを証明するのも、なかなか大変そう。悪魔の証明状態ですから。逆に、当時のメモやメールに富田氏の営業に関して立体感調整などを評価するものが残っていれば、裁判では非常に不利になるでしょう。

地裁判決、控訴審はどうなるか

今回の判定はあくまで地裁の陪審が出した評決。この後さらにこれを見て裁判官が判決を出します。ただ、陪審の内容を裁判官が完全否定するというのも珍しいでしょうから、地裁判決については概ねこの内容を踏襲したものになると予想されます。あとは、その後任天堂も控訴するとしたら控訴審でどうなるかですね。以前に任天堂Wiiリモコンで地裁で負けたあと控訴審で逆転勝訴した例はあります。

任天堂、ゲーム機めぐる特許訴訟で逆転勝訴 - ITmedia ニュース

この時も2008年に敗訴した後、控訴審で勝訴したのは2010年と結構な時間が経っています。今回のものでも控訴するのだとしたら、最終的に結果が出るのは2015年とかになってそうですね。控訴して勝てるかどうかはケースバイケースなので、上記例が今回も当てはまるとも限りません。もし控訴しても敗訴濃厚という感じならば、事前にお金払って和解してしまう可能性もあります。下手に長引くとその分裁判費用負担や懲罰的賠償、利子などで払う額も増えますからね。

もしこの裁判で負けるようなことになると、イノベーティブな点を売りにしている任天堂としては大きな痛手となります。すでに陪審から侵害評決くらっているだけでも、イメージ的な悪化はありますけどね。これで控訴審でも負けて賠償金も増加などとなると、かなり厳しいことになりそう。やっと逆ざや解消したところなだけに、1台10ドルというライセンスも払うとするとかなり重荷になるでしょうし。任天堂としては、是が非でも負けられない戦いにはなります。願わくば、本当に黒でないことを祈っています。