iOSアプリ版Google Maps提供開始に見る「iPhoneの脱Apple化」

現在もモバイル業界の先頭に立ち引っ張っているiPhone。日本ではauが4S以降発売してからより一層支配力が強まった感じがしますね。以前はソフトバンクの一部からの嫌われ方と一緒くたにされて嫌われているところがありましたが、シェアの大きいauが取り扱ったことで「持っていて当然」感がより高まった感じがあります。iPhoneを取り扱わないドコモが一人負けしている状態ですし。

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ただ、iPhoneがよりコモディティ化する一方、Apple自体への信者的な盛り上がりが若干落ちてきている感じもします。Apple自体を崇拝しているというよりは「みんなが持っている」「いっぱいいいソフトがある」という、周辺環境に惹かれて利用している人も見かけるというか。「標準スマホとしてのiPhone」を利用している印象もあります。

iOS6の「アップルマップ」で噴出したiPhoneユーザの不満

そうした傾向を個人的に強く感じたのは、iOS6で採用された地図で聞かれたユーザーの不満についてです。

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情報が少ない、見た目になれないというのはまだしも、情報が根本的に間違っているというのがかなりひどいですね。先日はオーストラリアでiOS6の地図のせいで遭難者が出ているということで警察から使用自粛要請が来るなど、洒落にならない状態にもなっています。

世界の雑記帳:「アップル地図アプリで遭難多発」、豪警察が使用中止を呼び掛け− 毎日jp(毎日新聞)

こうした日頃日常的に使うアプリで大きなソフト的低下を見せた結果、ネットでもかなり大勢の方が公然と不満をTwitterなどで見かけるようになりました。昔のAppleというと、こういう不満があってもファン側の許容意見の方が目立った印象があるのですが、地図についてはむしろ許容意見の方が珍しいという感じですね。特にiPhoneは一度OSのバージョンをあげると逆には戻せません。生活の一部となっているiPhoneにおいて影響が大きい箇所なので、不満が目立ったというところでしょうか。

自分の場合はアップルが地図会社を買収した頃から嫌な予感がしており、その後iOS6で地図置き換え発表でいよいよ、という印象。で、出てきたものを見て危惧していたことが実現してしまった、という失望感を覚えました。結局自分のiPhone4SiOS5のまま今のところ利用してます。またこの地図アプリ導入を強行したアップルに疑念を抱き、今後の流れに備えて初AndroidとしてNexus7を購入し比較、あらためてiPhoneiPadを客観的に見つめるいいきっかけになったと思っています。

待望のiOS版「Google Maps」公開〜サードアプリからの利用は対応待ち

iPhone5では最初からiOS6ためグーグルマップに戻す手段がなかったことからもGoogleMap復活への期待はずっと高まりつづけ、またその間代替地図アプリも話題を集めるなど、サードアプリが注目を集めていたところがあります。

そんな中、昨日待望のiOSアプリ版「Google Maps」がAppStoreで公開となりました。

Google、iPhone向け「Google Maps」提供開始 - ケータイ Watch

自分も早速ダウンロードして体験。ベクトル化された地図により一度読み込んだ箇所はスムーズに拡大縮小ができ、地図自体の回転も自在、ナビもバスを含めて細かくできるなど、非常に高機能で使いやすくなっています。ストリートビューもできますし、質的にも量的にもアップルマップを凌駕している印象です。

ただこのGoogle Maps、単独のアプリであるため、他の地図を用いるアプリからはまだ使えません。GoogleAPIを公開しているので、アプリ側が独自に対応する必要があります。また、Apple純正のアプリである「連絡先」などからは使えず、今後も使えるようにならないのではと思われます。ティムクックが先日地図の件で謝罪し、改善までは他社アプリを使って欲しいと言っていましたが、そうであるならばデフォルトの地図呼び出しを入れ替える機能などを用意して欲しいぐらいですね。

iPhoneの満足度」に占める他社アプリ・サービスの割合の高さ

個人的にはiPhone3GSを手にしてから、もう生活の中で無くてはならないというほどiPhoneを重宝しています。今もiPhone4Sを日常的に情報端末として利用していますし。Nexus7を買って以降も、なんだかんだで片手に収まり操作しやすいiPhoneはモバイル環境下では主役として活躍しています。

ただ、実際にiPhoneを使っていて恩恵を感じるところというと、地図、メール、ツイッター、ウェブといったサービス。それらをヌルヌル動く直感的、快適な操作で手軽に利用出来ることが、非常に高い満足度に繋がっているのだと思います。特に地図はGPSとマルチタッチによる操作の相乗効果で、もっともスマホでの利用価値が高いアプリであるとも。海外でも日本と同じように検索して乗り換え案内などが使えるのは感動的でしたし。

それが、今回地図がGoogleからアップルに変わっただけでガクッと魅力が落ちる結果になりました。これにより、結構な人がiPhoneの高い満足度の中で結構な割合をGoogleMapが占めていたと理解したのではないでしょうか?

それ以外にも、たとえばメールでも、iPhoneGmailを利用している人は多いでしょう。ツイッターFacebookもアップルのサービスではなく他社のサービス。オンラインストレージもDropboxなどが有名です。だからこそApplePingやらiCloud、そしてアップルマップで自社サービスへの引きこみを図っているわけですが、PCや他の端末でも利用している人からするとアップル製品に縛られるこれらサービスは使い勝手が悪いところがあります。このようにiPhoneの魅力のうち少なくない部分が、他社アプリやサービスに依存しているわけです。

快適にiPhoneを利用するための「脱Apple化」

iPhoneという端末はすばらしく、ヌルヌル操作などハードとOS的な魅力は存分にあると思います。一方で、その中にある個別のAppleアプリやサービスについては、他との連携性やアップル独自サービスという縛りでの不自由度などで不満を抱くところもあります。

今後も、Apple純正アプリを使い続ける限りは地図の面では不都合を強いられることになります。サードアプリで地図を利用するものは、GoogleAPIを使って今回公開されたiOSネイティブGoogleマップとの連携を高めてくるでしょう。そうした中で、AppleのアプリはむしろiPhoneの中で孤立化してくる怖れもあります。もっとも、そうした事態を避けようとアップルはまたいろいろ縛ってくる可能性はあります。ただ、そうした「無茶」をしても「しょうがないなぁ」とファンが許してくれるカリスマをもったジョブズはもういませんので、どこまで消費者が素直に受け止めてくれるか。

Apple製品とサービスに囲まれて暮らしたい」という人なら、現状のままでも特に問題ないかもしれません。ただiPhoneコモディティ化したことで、「便利なモバイル端末としてiPhoneを利用している」という人はむしろ「iPhoneは使ってもApple製アプリを極力使わない」という利用法の方が今後便利になってくるかもしれません。Apple製の製品なのに「脱Apple化」という皮肉な使い方ではありますが、今回の地図騒動を機会にそうした動きが一部で起きてもおかしくないのでは、と個人的に思います。

もっともAppleTwitterFacebook連動をiOSに組み込んだり、決してすべてが排他的という訳ではありません。iPhoneとしての満足度を高めるため、他社の優れたサービスとの連動と共に自社サービスのクオリティを上げることが今後重要となってくるでしょう。ティムクック体制のAppleがどういった歩みをすすめるのか、注目ですね。