「とびだせ どうぶつの森」パッケージ版品薄について岩田社長が謝罪〜DL版の紹介も

3週連続で週販トップ、ミリオンも軽々と突破した「とびだせどうぶつの森」。

とびだせ どうぶつの森 - 3DS

とびだせ どうぶつの森 - 3DS

ただ、店頭ではパッケージ版は発売日午前から瞬殺が続いており、「DL版買わせるために出荷絞ってるんじゃないか?」などと揶揄されたり、プレゼントなどでパッケージ版をこのむ人などからの不満の声もチラホラ聞かれていました。

そんな中、このパッケージ版品薄について任天堂から生産状況説明と謝罪を行うアナウンスがなされました。

ニンテンドー3DS専用ソフト『とびだせ どうぶつの森』生産に関するお知らせ(動画)
ニンテンドー3DS専用ソフト『とびだせ どうぶつの森』生産に関するお知らせ

なんと、岩田社長が動画で自ら説明することに。未だかつて、自社製品の品薄を社長が動画で謝罪、説明するシーンを見たことがありませんw。ある意味、ネットの活用ということでは世界一レベルかも知れませんね。

セーブ用にSLC-NANDを採用していることが品薄原因〜しばらく解消見込みなし

説明によると、品薄の原因はパッケージ版で採用しているSLC-NAND。SDカードやUSBメモリの良し悪しを語るときには聞く言葉ですが、聞いたこともない人も多いでしょうね。説明のとおり、SLCは高速だが高価、MLCは中速だが安価。最近だとさらにTLCというさらに遅く安価なものもあるようですが、メインはMLCのものばかりですよね。

どうぶつの森では、大きなデータをセーブで書き換えるため、SLCを採用したとのこと。ただ、最近ではSLCは元々高級SDカードなどに限られ、半導体ベンダーでも生産は絞って売れ筋のMLCとかを量産している状態。このため、ある意味特別発注的に任天堂が依頼してつくってもらっていたようです。ここで、任天堂が「余裕を持って」見積もっていたぶつ森のパッケージ版用SLCが、あっという間に底をついてしまったとのこと。出来たそばからカード生産に回しているようですが、品薄解消にはまだまだ時間がかかるということで、このアナウンスとなったようです。

DL版の起爆剤?機会損失?

この見込み違いですが、ある程度仕方ないところはあります。元々過去のぶつ森も初動は30万程度で後は口コミでジワ売れしていく、という売れ方でした。DS版のおい森もトータルでは500万越えというドラクエ以上の国民的タイトルになっている訳ですが、初動命ってタイトルでもないんですよね。任天堂が出荷した初回の60万本というのもマリオやモンハン以上の3DS過去最大の量であり、任天堂的には十分な数という見込みがあったのかもしれません。また、DL版を始めたこと、ぶつ森がDL版に最適なタイトルであることから、「最悪品切れでもDL版で」という目論見もあった気もします。何しろ、SLC-NANDは高価ですしね。DL版とパッケージ版では同価格、その割に店頭ではパッケージ版の方が安かったりします。SLCを使うという高コストを考えても、任天堂の取り分はDL版の方が圧倒的に大きいでしょう。ぶつ森をDL版の起爆剤に、という意識はあったとは思います。

ただ、DLカードまで売り切れてしまっている、さらにパッケージ版はほぼ見かけることが出来ないという状態は、正直誤算だったのではないでしょうか?DL版を伸ばしたいだけならば、DLカードは品切れしないぐらい用意しておかないと駄目だったわけですし。DL版を込みでも売れ行きが想定をはるかに超えており、クリスマス前の本番になって本格的にROM不足の深刻な事態になっているのかもしれません。

いくらDL版に適したタイトルとはいえ、世の中的にはまだまだ少なく見積もっても8割ぐらいはパッケージ版を好んで買っています。その状態で「物がない」というのは、ビジネス的には機会損失になっていると思いますね。クリスマスプレゼントにぶつ森を考えていた親が購入できず、仕方なく別のソフトに流れてしまうケースも想定されます。そうなれば、赤字挽回が至上命題の任天堂としては大きな痛手でしょう。北米でもWiiUが出荷が需要を下回ってしまい360やPS3の後塵を拝する事になってしまったようですし、生産関係でどうも問題が続いている印象です。

DL版とパッケージ版のパフォーマンス差は?

パッケージ版でのパフォーマンスを優先し高いSLCを採用したのですが、結局そのパッケージ版は満足に欲しいユーザーに行き渡らず、代わりにDL版を買ってもらおうと今回動画で詳しく説明しています。ただ、現状のSDカードはほとんどはMLCのもの。SLCはサンディスクや東芝パナソニックなどの高級モデルに限ります。定番と言われていた東芝のSDカード、通称「白芝」も最近のモデルはベンチマーク結果からMLCだと言われていますし。

東芝 SDHC 16GB Class10 海外パッケージ品

東芝 SDHC 16GB Class10 海外パッケージ品

具体的にパッケージのSLCと上記のようなMLCのSDカードで、どちらの方がパフォーマンスが高いんでしょうね?もしパッケージ版の方が上なんだとしたら、結果として「限られた人だけSLCを体感」という、ある意味不公平な状況をまねいてしまったと言えるかもしれません。

どっちかというと、パッケージの方は耐久度の方が重要だったのかもしれませんが、SDカードも品質はピンきり。同じメーカーのものでも不良が混ざる可能性もあります。その割にぶつ森はセーブデータのバックアップには対応してないんですよね。FAQによれば、PCにバックアップをとってもその後本体で遊んでしまうとバックアップは使えなくなるようですし。

とびだせ どうぶつの森:Q&A

SDカードに保存したスクリーンショットなどをPCに保存するときにSDカードの抜き差しをしますので、どうしてもSDカードを壊したりするリスクは高まります。個人的にも以前microSDでデータ飛ばした経験があるので、この辺りバックアップを可能にする方法を用意するなど対応して欲しいところもあります。バックアップデータに戻すにはネットアクティベーションが必要、とかでもいいので。

DL版のメリットの拡充、デメリットの払拭を

任天堂的には「根本的な解決にはならないけれど」とDL版を進めていますが、上記のバックアップの件も含めてまだまだDL版には課題があるように感じます。3DS間データのやりとりに回数・期限ありの引越しでないと出来ない、値段が店頭でパッケージ版より高い、eShopでのDLカードを使った購入が「その他設定」からと洗練されていない、などなど。たしかにDL版のメリットは自分も感じてはいますが、手放しで褒められる状態でないのもまた確か。今回のようなパッケージ版品薄のための対策として建前的には導入したDL版なのに、DLカードも品切れしたりと問題が続いています。これからWiiUの発売でリソース的にはキツキツなところもあるのでしょうが、コンシューマーゲーム市場そのものがスマホ他娯楽との競争でしぼみつつある中で甘いことを言ってられる状態でもないでしょう。コンシューマーゲーム業界を守る、世界に誇る日本企業として、任天堂には正念場と思ってさらなる企業努力を期待したいものです。