nasneの直前発売延期の原因をソニーが発表〜原因は「素材の気化」
オリンピックに合わせて大々的にアピールされていた、新生ソニーを象徴する商品でもあったnasne。
nasne (ナスネ) (CECH-ZNR1J)【メーカー生産終了】
- 出版社/メーカー: ソニー・コンピュータエンタテインメント
- 発売日: 2012/08/30
- メディア: Video Game
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しかし、いろいろ発売にあわせてタイアップ記事やイベントなどを設定していたにもかかわらず、発売前日になって急遽発売延期という、あまりない事態になったことは記憶に新しいです。
nasne、発売前日に不具合発覚、発売延期に〜HDDに輸送時起因の破損、全数再検査へ - わぱのつれづれ日記
結局、この時は出荷に間に合わないところもあり、一部ユーザーは入手可能に。ただ、実際に入手した人もかなりの頻度でHDD故障だったという、ソニーの発表を裏付けるような事態となっていました。
とはいえ、いくらなんでも輸送中の衝撃でそんな全部まとめて故障するなんて無いだろ、という意見も。コンテナを落とすとかしたらさすがに分かるでしょうし。実は別の理由があるんじゃないかと、いろいろ勘ぐられていたところもあったのですが、今回ソニーが原因を発表したようです。
nasne発売延期の原因は「素材に含まれる物質の気化」 -AV Watch
AV Watchの記事によれば、理由は「本体の滑り止めなどで使っている素材に含まれる材料が気化したもの」、つまり科学的なガスが原因とのことです。
電子機器では比較的メジャーなガスによる故障
このガスに因る故障、AV Watchでは「アウトガス」の問題は比較的よく知られた物、と解説が入っています。実際、検索してみるといろいろな事例が出てきます。とくに「シロキサンガス」というのが有名なようですね。
ハードディスクのHDI技術の解説 10. ガスの話
富士通ビジネスパソコン FMVのこだわり > 信頼性・安定稼働 -FMWORLD(法人):富士通
専門的な説明としては、以下のような論文もあります。
ハードディスクドライブ(HDD)における有機系アウトガス(PDF)
シリコンなどの素材から発生する微量のガスがヘッドなどの腐食、付着による故障につながることがあるとのこと。このため、各社この問題には神経を使い、塗装や素材に工夫を凝らしているようです。
任天堂はWiiのシリコンジャケットで対策済み
このシロキサンガスの件で面白いのは任天堂の事例が引っかかるところです。
上記は任天堂のリエゾン用の社員インタビューのページなのですが、ここでシロキサンへの取り組みが書かれています。この例では発生源になりうるのはリモコンジャケット。問題になりそうなのはWii本体のディスクなどの駆動部分ですね。Wiiでは安全対策への問題から後からWiiリモコンに全数シリコンジャケットが付くことになり、これが故障の原因にならないよう、かなりの苦労があった模様です。
nasneの底辺のゴムが原因?
一方、今回の騒動、根本的にはソニーの品質チェック、およびそもそもの素材認定に問題があったように思われます。コメントがある「本体底部の滑り止め部材などごく一部に使われていた」というのは、以下の写真の部分でしょうか?
[拡大画像]「nasne」のハードウェアをチェック。分解してみた -AV Watch
「下面にゴムを配置して、滑りにくくなっている」と書かれていますが、たしかにかなり大部分にわたって使われている感じですね。この素材に問題のガスが発生するものがあったということなんでしょう。社内の規定は満たしていた、ということなので、ようするに「規定そのものが甘かった」ということ。ソニーの品質管理基準に傷をつけてしまった形ですね。品質部門の方はかなり社内で厳しい評価を与えられているかもしれません。
交換していないnasneも危険?〜今後は問題ない製品に期待
今回の件、素材に問題があったとすると、結局今回収に出さずに届いてしまったnasneを使っている人も、故障の危険性をはらんだまま使っている、という話になるのかもしれません。ソニーは全数交換を受け付けていますので、心配な方はやはり交換を申し込まれたほうがいいと思われます。(ただ、録画したデータは消えてしまいますし、交換までに日数も掛かるでしょうが)
nasne (ナスネ)™ オンライン交換受付 | プレイステーション® オフィシャルサイト
結局、今回の件はオリンピックという最大の録画商戦を逃し、購入して利用することを楽しみにしていた人をがっかりさせる結果ともなりました。商品の評価自体は高いようですので、つくづく惜しいことですね。ソニーはnasne以外にも多数のHDD内蔵機器を発売している実績があったのに、なぜnasneに限ってこんな事故が起きてしまったのか。ソニーの他のHDD内蔵製品についての信頼性を高めるためにも、より高い基準での製品開発をしていただきたいものです。