米AT&Tが契約終了済みiPhoneのSIMアンロックを開始〜日本でも論争再燃か
日本の携帯業界で熾烈な闘いをしているドコモ、KDDI、ソフトバンク。シェア的にはドコモが半数近くを持っているのですが、ここ数年はiPhone、iPad効果でソフトバンクがぐっとシェアを伸ばしてきています。
ソフトバンク独走、ドコモ苦戦まだ続く? 顧客争奪戦さらに激化 (1/2ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)
ソフトバンク躍進のきっかけであるiPhoneですが、3Gにおいてはドコモとソフトバンクは互換性があります。ドコモの方がシェアがあり、電波に関する技術力も高く、周波数帯的にも800MHzのプラチナバンドを持っているなどから、「つながりにくいソフトバンクよりドコモを使いたい」「ドコモから変えたくない」「孫社長が嫌い」といった人たちも大勢いました。しかし、それを阻んでいたのが「SIMロック」。ソフトバンク販売のiPhoneにはソフトバンクのSIMしか動かないロックがかかっており、ドコモのSIMを挿しても使えなかったわけです。
このため、ドコモは「全部SIMロック解除すべきだ!」と国も巻き込んで政治的絡め手でSIMアンロックをソフトバンクに圧力をかけてきていましたが、現在になってもSIMアンロックは実現していません。そんなことをしているうちにKDDIからもiPhone4Sが発売されるようになり、さらにはソフトバンクもプラチナバンドの周波数を取得してしまったことから、電波の繋がりやすさや孫社長以外という選択肢もできてしまい、ドコモ待望論・SIMアンロックの世論はトーンダウンしてしまったように思います。
AT&TがSIMアンロック開始〜手続き完了はAppleから
しかしそんな中、世界最大のiPhoneキャリアであり、最大のSIMロック維持であったAT&Tが、この度契約完了のiPhoneに限りSIMアンロックを開始しました。
AT&T、契約の終了したiPhoneのSIMロック解除サービスを開始 | スラッシュドット・ジャパン アップル
AT&T iPhone Unlocking Process Detailed, Successful for Some - Mac Rumors
手続きについては、macrumorsの記事を見ると以下のとおり。
アンロックの要請はAT&Tなのですが、アンロック関係はAppleからというのが面白いですね。iPhoneはiOSをバージョンアップするときや復元するときなど、Appleのサーバーとアクティベーションが必要になるのですが、上記を見た感じだと、Apple側でどの端末がどのキャリアでロックがかかっているか判定していて、それがアクティベーションの時に反映されるということなんでしょうかね。
SIMアンロックができるのは、AT&Tの2年契約を完了したiPhoneのみということで、実際には今はiPhone3G, 3GSだけということみたいです。iPhone4も途中解約でいけそうな感じもするのですが、断られたケースが報告されているようです。
日本でのSIMアンロック解除論争再燃か
さて、こうなると気になるのが日本。日本の約過半数を占めるドコモユーザーにも、これまで「これじゃないiPhone」という感じでAndroidケータイを仕方なく使っていた人たちがいるでしょう。そういった人たちがまた孫社長のTwitterとかで「さっさとSIMロック解除しろ!」と強い口調で要請するようになりそうですね。
孫社長のコメントでは「SIMロックをかけているのはアップル」とのことでしたが、一方で今回のAT&TのSIMロック解除にはティムクックCEOの働きかけがあったとの記事もあります。
孫正義 : iPhone 4S販売記者会見……孫正義社長との一問一答 | RBB TODAY (デジタル機器、モバイル端末のニュース)
AT&T、ティム・クックの要請を受け、iPhoneのアンロック解禁 - WirelessWire News(ワイヤレスワイヤーニュース)
ティムクックがSIMロック解除を推奨しているのであれば、孫社長的にもSIMロックを正当化するお題目も難しい気はしますね。
とはいえ、米ではすでにマルチキャリアになっており、キャリアしばりの効果は小さくなっていました。日本でも、次のiPhoneがドコモから出るなら、契約終了済みiPhoneのアンロックを許容しやすい状態になる気もします。ですので、個人的には次のiPhoneが出るタイミングが日本では次の山かな、という印象も。Appleも、Androidの攻勢を受けて世界中でマルチキャリア、数を出す戦略をとっていますし、日本でもKDDIではすでに出ています。そのうちドコモから出てもおかしくないでしょう。ソフトバンクは、それまでにどれだけ電波改善を実現できるか。もともと値段的なところではソフトバンクに分がありましたし、「iPhoneといえばソフトバンク」的な印象も出来ています。「わざわざドコモでなくてもいいや」といかに思わせることができるか、ソフトバンクも正念場という感じじゃないでしょうか。この後の各社戦略に注目です。