キングダムハーツ3Dで進行不可のバグ発覚〜3DSの課題が浮き彫りに

年末年始の大爆発以降も、毎月注目作が堅実な売上をあげて好調なニンテンドー3DS。先週は春休みということもあり、12万台の売上を上げるなど、なかなか景気のいい状況が続いています。

4Gamer.net ― 3DSで登場したシリーズ最新作「KINGDOM HEARTS 3D」は21万3000本。「プロ野球スピリッツ2012」は合計16万7000本の「週間販売ランキング+」

そんな先週の3DSの販売数を引っ張ったソフトとして、初週21万台を売り上げたキングダムハーツ3Dが挙げられます。

先日はついに俗称ノムリッシュこと野村氏と岩田社長の対談が社長が訊くで実現したりしていましたね。

ニンテンドー3DS|社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇|Nintendo

ディズニーの社員相手に途中で先方のプレゼンを打ち切らせ、自分のキャラに大きなチェーンソー持たせて「これでやりたい」と行ったり、nintendogsのすれ違いに戦闘を期待したりと、なかなかノムリッシュ分が感じられる内容もありましたが、いろいろクリエイターとしてのこだわりとかも聞けて面白かったです。

進行不可のバグが判明

本体の売上が伸びるなど、ある意味「新しい客」を3DSに連れてきた本作品なのですが、本日ゲーム進行が不可になる重大なバグが公表されました。

キングダム ハーツ3D ドリーム ドロップ ディスタンス 進行不可となる現象について:スクウェア・エニックス サポートセンター

シナリオ進行条件と時間切れ条件が両方同時に起きてしまったときに、先に進めなくなるという状況のようですね。その状態でセーブしてしまって、前のデータが残っていないと詰む、と。典型的な「状況想定ミス」で、テスト工程の甘さが予想されます。論理的に考えうる状況を、テストで洗い出せていなかったということですからね。なんらかの仕事の進め方に欠陥があった、時間などの関係でテスト不十分だったなどが考えられます。

対策は「詰まる状況を回避すること」〜根本的解決に至らず

上記のバグにたいして、サポートページで示されているのは、基本的に「問題が起こる行動をとらない」というもの。どうしても詰まった場合はサポートに電話してくれ、とあります。これ、全然解決法になってないですよね。購入した人が、そんなに頻繁に公式ページにアクセスするとも思えませんし。こうした情報を集めるのは、通常、ゲームを買うまでと、ゲームを買って何か困難にぶつかったとき。つまり、ハマってしまってから見たのでは遅いわけです。この対策でよしとするなら、それこそ購入者全員に直接電話連絡とかいれないといけませんが、そんなの不可能ですしね。

今回は先に進めないセーブデータが出来上がるわけなので、電話対応で考えられるものとしては一旦メーカーに送ってもらって、メーカー側でセーブデータ復帰、そして再送付という形でしょうか。同様の進行不可の問題を起こしてしまったWiiゼルダSSでは、セーブデータ修正プログラムを配信していましたね。

任天堂株式会社 Wii『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』ナリシャに出会った後の「勇者の詩」イベントの進め方についてのお願い

しかし、これも結局は「問題が起きた後」への対策にすぎず、根本的な問題解決になっていません。

深刻な3DSでのバグ〜パッチ修正が現時点で不可?

こうしたプログラム的な致命的バグについては、本来であればパッチを配信して、プログラムごと修正してしまうのが最近では主流です。HDインストールするソフトでは当たり前ですね。360でHD無しのときでも修正パッチは対応していました。

ただ、3DSでは今のところそうしたパッチが可能である、という話は聞きません。3DSのROM自体にパッチを入れ込む機構は聞いていません。ROMとして書き換え不可なら難しいでしょう。Vitaの場合だとカードで買った場合でも、その中にパッチ用の書き換え領域がもうけることも可能らしく、また最初からメモカ必須ならそっちでパッチも可能な模様です。3DSではそうした機構が今のところ無いと予想され、そのためこれまでいくつかバグが発見されながらも対応が進まない状況となっています。

モンスターハンター3G - 3DS NEWラブプラス (通常版) - 3DS

闘技大会をクリアした際のご褒美に関して (モンスターハンター3(トライ)G) | 株式会社カプコン : サポート
「NEWラブプラス」に関するお詫びとお知らせ

モンスターハンター3GNewラブプラスと両方3DSを代表するソフトでありながら、前者は2/23、後者は3/13にバグに関する告知を発表。未だ具体的対策が発表されていません。ラブプラスについては、店頭での販売停止、店によっては返品受付にまで発展しているようで、古くからのファンの大きな失望を買っています。

ROMカードだからこそ求められる高い品質

今回のように、パッチが当てられないケースというのはコンシューマーゲーム機ではむしろメジャーなことでした。ファミコンスーファミPS2とどれもパッチが当てられないROMばかり。しかし、最近のHDゲーム機ではHDDも付いたこともあり、パッチはあたり前になっています。特に、今回問題となっているスクエニ和田社長など、「オンライン接続があればデバグコスト減らせる」とか曰わってましたからね。

「アップデートがあるからデバッグコストは軽減できる」 by CESA会長和田氏 - わぱのつれづれ日記

パッチがない時代は、バグを出すと回収とかで大きなコストが掛かるため、発売前のデバグはかなり時間とお金をかけてやるものでした。しかし、上記の和田社長の発言でもあるように、パッチが当たり前の時代になり、さらにプログラムも複雑化したことで、かなりデバグコストは今は削られてしまっているんでしょうね。発売前にバグを出しきる、ということができなくなってきているのかもしれません。便利になれば人は堕落するというか。

しかし、現にMH3Gラブプラス、そして今回のKH3Dと注目作で連続でバグが発生しています。各々深刻度は違いますが、ラブプラスは回収レベルのバグオンパレード、KH3Dも進行不可と結構致命的なものです。任天堂ですらマリオカート7などでいくつかバグが放置されています。

『マリオカート7』攻略、裏技wiki - 小ネタ・バグ

こういった状況だと、任天堂含めて「いったいどういう品質管理、保証をしているんだ!」と消費者の怒りを買っても致し方ないところもあるのではないでしょうか?簡単にパッチを当てられない環境だからこそ、高い基準を持って品質チェックを行うのが当然なのですが、こういった不具合連発を見ているとそもそもその基準作りやチェックがちゃんとできているのか疑問も出てきます。一度、根本的なプロセス見直しを行うべきなんじゃないでしょうか。

可能なら欲しい「パッチ機能」

一方で、パッチ機能もできれば欲しいところです。3DSの場合、カード本体にパッチを格納できるほどの容量があるとも思えないので、基本的にSDカードにパッチを置くことになるんでしょうが、その場合も結局は最初からROMのプログラムがSDカードのパッチファイルを読みにいくようになっていないといけません。現状のROMではおそらくそういった仕組みはないでしょう。まずは、任天堂3DSファームウェアレベルでそういった仕組みを提供、そのファームの機能を使ったROM側でもパッチを読み込む機構を設けて、はじめてパッチ機構が実現できます。

ですので、すでに問題に発生しているMH3Gラブプラスにパッチを当てるのは、ファームにソフト固有コード入れて例外対応するぐらいしか難しいでしょう。しかし、共通の仕組みを今から入れておけば、今後のソフトではパッチがある程度可能なものもできるかもしれません。まずは品質チェックのクオリティを上げるのが先決だとは思うのですが、他のハードでパッチが当たり前になっていて人的コストに苦労している昨今、パッチ機構はできればあったほうがいいとは思いますね。

消費者の信頼を失う前に対策を

今回の件を含めて、バグなどによる問題多発は、消費者のコンシューマーゲームに対する目をますます厳しくしてしまうことでしょう。3DSでなくPSPやVitaとかでも問題多発していますしね。特に今主軸となっている3DSで一番問題が深刻となると、またコンシューマーバッシングにつながりかねません。株主総会とかでも質疑応答に出てきそうなレベルになるのではないでしょうか。

問題自体をおこしているのはサードであるところも多いのですが、インフラを築いているファーストとして、品質チェックの要求レベル上げやパッチ機能実現など、抜本的な対策をとってそのことを消費者にアピールし、信頼を失わない努力を示してほしいな、と思います。