ソフトバンクがプラチナバンド900MHzを獲得〜iPhone4,4Sなどの電波改善へ

日本で3大携帯キャリアといえばドコモ、auソフトバンク。ドコモが半分ぐらいのシェアを持っており、時点がau、3位がソフトバンクという形ですが、iPhone発売以降の攻勢でソフトバンクがシェアを伸ばしており、対するドコモやauAndroidで巻き返している状況です。

Androidのシェア拡大を受けてAppleも方針転換して1国複数キャリアを認めるようになっているので、iPhoneKDDIが出すようになりますます熾烈になっていますね。一方で、以前はiPhoneによる爆発的利用集中で問題多発していたソフトバンクを非難していたドコモやKDDIでもスマホでのトラフィック増加に基づく通信障害が多発し、問題点という意味でも3社共通してきたところがあります。

大手3社で唯一プラチナバンドを持っていなかったソフトバンク

ただ、そんな中でも一番大きく違ったのが、「プラチナバンド」と言われる周波数帯域の保持状況。ドコモとKDDIは800MHz帯の周波数利用権を持っており、これが屋内や山などでの電波繋がりやすさに貢献していました。同じ通信方式のドコモとソフトバンクW-CDMA)でも、ドコモは800MHz帯を「FOMAプラスエリア」として提供しているので、これがかなり大きな差につながっていたところがあります。

ケータイ用語の基礎知識 第277回:FOMAプラスエリア とは

ドコモもプラスエリアに対応する前の3Gは、2G時代に比べて繋がりにくいといろいろ批難を受けたものですしね。一方のソフトバンクはこの帯域が無く、2.1GHzのみ。電波の届き具合が違うので、この帯域でドコモに対抗するには、とにかく基地局を立てまくるという戦略しかない状態でした(玉石混淆な感じだったみたいですが)。

このため、相当昔からソフトバンクは800MHzに相当する電波を要求していたのですが、他の事業でも使われている認可制の貸電波であるため状況打破には至らず。そんな中800MHz相当の性能で世界的にもメジャーな900MHzの割り振り認定が行われるということで、ソフトバンクががむしゃらにとりに行ったわけです。

イーモバイルとの熾烈な闘いの末、ソフトバンクが900MHz帯獲得

そのプラチナバンド900MHz帯、有利な帯域であるため業界4番手のイーモバイルも同様に強烈に獲得をアピール。熾烈な闘いとなったわけですが、結果ソフトバンクへの割り当てとなりました。

“プラチナバンド”900MHz帯はソフトバンクへ、電監審が答申 - ケータイ Watch

上記に審査項目なども書いてありなかなかわかりやすいですね。結果的に、イーモバイルの方が事業計画が優秀だったものの、周波数帯域あたりの契約者数、つまり切迫具合の観点でソフトバンクと2点差となり、1点差でからくもソフトバンク勝利、となったようです。このあたりの得点の重み付けとかが後付だとどうしようもないですけど、見た目としては一応審査基準はクリアになっている形です。

孫社長は垂直立ち上げをアピール〜iPhone4,4,iPad2などが対象

これをうけて、孫社長も会見を開き、いろいろコメントしていますね。

ソフトバンクの900MHz帯、iPhoneなど“一気に”改善と孫氏 - ケータイ Watch
プラチナバンド認可記者会見 | ソフトバンクモバイル株式会社

電波を配信出来るようになるのが7/25から。すでにフライングでアンテナ関係の機器の発注は進めていたため、これを今から一気に設置し、7/25から垂直立ち上げで拡大をすると言っています。ただ、以前の発表会では「すでに900MHzの基地局立ててる」とか言っていた気がするんですけどね。質疑応答でも実際そう質問した記者がいますし。900MHz取れなかったら訴訟、とか息巻いていた割に、「機器の発注は認可取れなかったらキャンセルするつもりだった」とか言っちゃってますし。キャンセル料だけでも結構な額だとはたしかに思いますが、以前発現されていた内容が多分に誇張されていたことには変わりありません。というわけで、孫社長の発言は「誇張含む」という認識で聞いておいたほうがいいでしょうね。

機器もiPhone4, 4S, iPad2など主力製品が対応しているとのこと。このあたり、世界で普及している900MHz帯の強みですね。ガラケーについては今度出るPANTONE4から対応ということのようです。それでもiPhoneユーザーが900MHzに分散する分、従来のガラケーにも恩恵があるとのこと。

ちなみに7/25時点では上り下り15MHzずつ割り当てられたもののうち、現在使われていない5MHzずつだけ資料可能。残りの10x2は、既存事業者の移行をソフトバンクも出資して促進したのち、2013年移行になるということです。果たしてこの5x2だけでどれほど改善が見られるのか。

700MHz帯は3社へ〜ドコモ、KDDIイーモバイルで確定か

一方で、ここまで熾烈な闘いをしたプラチナバンド900MHzですが、もう一つのプラチナバンド700MHzの割り当てについても発表されていて、これは3社へ割り振られるとのこと。審査基準からして今回900MHzを割り当てられたソフトバンクは点数が落ちるので不利。それも踏まえて孫社長も申請しないとのこと。900と700の同時設備投資とか、さすがに無理があるでしょうからね。ということで、700MHzについては今回敗れた3社、ドコモ、KDDIイーモバイルで確定と言っていいでしょう。UQとか来るかもしれませんが、KDDI資本なだけにKDDIUQが同時にとるというのも考えづらいですし。

もっとも、700MHzについては3Gでは世界的に全然使われておらず、グローバル端末全盛の時代では使いづらい電波。LTEなどへの応用がメインとなるでしょうね。電波関連はクアルコムがどういった対応をしてくるかも非常に大きなポイントとなるため、世界的な情勢によっては大きく使い勝手が変わってくる帯域となります。900MHzはLTEへの応用はいろいろ課題があるようですが、3GについてはなんといってもiPhoneが使えるのが非常に大きいですよね。3Gはまだまだ5年以上は使われていくでしょうし、そういう意味で端末対応ということでは有利な帯域と言えるでしょう

ユーザーにとっても待望のプラチナバンド

ざっとソフトバンクが獲得した件について触れてきましたが、個人的なことを言えばJ-PHONE時代からずっとこのキャリアを使ってきただけに、このプラチナバンド獲得は「ついに!」って感じですね。自分の生活範囲では特に電波問題になるようなことはこれまで無かったのですが、飲み会とかでビルの奥に行ったとき、それから山とかに行ったときに電波が入らなくなることがあり、こういったときによくVodafone使えねー、ソフトバンク使えねー、って話になりました。そういった状況が緩和されるのは喜ばしいことです。
後は、毎回調子のいいことを宣う孫社長の公言がどの程度実現されるかですね。7/25に開始になったとしても、素人ではそう簡単に900なのか2.1Gなのか分からないようにも思うのですが、体感として繋がりやすさが上がっているのかどうか。時期的には夏休み、山とか田舎に行く人も多いだけに、そういうところでの感想が一つ参考になりそうです。できれば、開始前にどの辺で900MHzの効果がでるのか、エリア提示などで詳しい情報を公開して欲しいですね。

後は、発表会でうっかり口をすべられていた「弱い公共WiFiをつかみっぱなしになる現象の改善」というものにも期待。これ、駅や繁華街で頻繁にポップアップされては歩いているうちに繋がらなくなる、ってことが多くて鬱陶しいんですよね。プロファイルで自動ログインになっているだけに特に。世界的にも例がない技術的解決策、と言っていますが、果たしてそんなものがあるのか。「言ってほしくなかった」というのが単に実現の目処や効果が不明だからなのか、画期的すぎて特許とかで他社に先回りされるのが嫌だったのか、それによって大きく違うんですが。ともかく、問題事項だと思うので対処に期待です。

今回のプラチナバンド獲得で、現行ソフトバンクユーザーとしてはまたひとつMNPする理由が減ったとも言えるでしょう。MMSとかいまだなんだかんだで使いますし、MNPも何かと面倒なんですよね。Vodafone時代はあまりの改悪オンパレードで真剣にMNPを待ちわびたものでしたが、ソフトバンクになってからは比較的満ましですし(孫社長のビックマウス、詐欺まがい商法などで世間からの風当たりはきつくなりましたが)。毎月高い固定通信費を払っているのは既存契約者な訳ですし、今後もメリットと満足度向上に努めていただきたいものです。