ニンテンドー3DS、国内500万台販売達成〜次なるステージへ

発売前には多大な期待を集めたものの、発売直後の震災とソフト不足から伸び悩んだ3DS
ニンテンドー3DS アクアブルー【メーカー生産終了】 ニンテンドー3DS コスモブラック【メーカー生産終了】

しかし、捨て身の値下げとマリオ・マリカ・モンハンという大型タイトルを揃えたことで年末年始に大ブースト、今や国内No.1ゲーム機として君臨しています。

それでも、先代のニンテンドーDSの人気が桁外れだったこと、そしてソーシャル系が宣伝費ばらまいて高利益率を維持しているからか、特に一般マスコミの任天堂への風当たりが非常に厳しい状態。絶えず任天堂の岩田社長もイメージ挽回に苦心している様が見て取れますが、そんな中また一つ、イメージ向上の意味も含めた発表が任天堂からなされました。

ニュースリリース : 2012年2月20日
ニンテンドー3DSが国内500万台突破 国内最速ペース - ITmedia ニュース

2011/2/26の発売でしたので、1年に満たないうちに500万台達成。過去のハードで最速という記録を打ち立てています。ただ、掲載されているグラフを見ても途中までは他のハードの時より苦戦してたのが見て取れますね。値下げ以降グッと上がり、年末年始に猛烈に伸びたという感じです。

特に風当たりのきつい経済紙

こうした状況のためか、これだけの勢いがあっても相変わらず一般マスコミは辛いですね。特にその先鋒に立っているのが産経と日経。今回のニュースでも産経は「直近は好調」、日経は「最近は7万と鈍化」扱いです。

任天堂の「3DS」が国内販売500万台達成 - SankeiBiz(サンケイビズ)
任天堂の3DS、国内販売500万台突破  :日本経済新聞

500万台達成直前に今日日経が上げていた記事の見出しなんて以下のようなものですからね。

岩田社長が口にした、任天堂の「没落」 :日本経済新聞

「ソーシャル」という言葉一人歩きの危うさ

特に経済紙は、ソーシャルソーシャルの連呼が続いています。たしかにモバゲーグリーなどは高利益率で無借金、非常に健全な会計状態になっていたりして、ビジネス中心の目線で見ている経済紙、投資家などには非常に受けがいいです。コストの掛かるハード部門が無くてもソフトでいくらでも金を手軽に生み出せる、その錬金的な世界に魅了されている、というところもあるかもしれません。

ただ、どうもこういった人たちが勘違いしているというか、あんまり意識出来ていないと思うのは、「ソフトもハードなしでは価値を発揮できない」ということ。今のモバグリも、元々はガラケーというメーカーのハードとドコモインフラがあってこそ。いまだって、AppleGoogleのソフトとハードがあってこその世界なわけです。AppleGoogleによるスマホタブレットが大成功しているからといって、彼らはちゃんとハードにも投資しています。Googleだってソフトだけでは価値を発揮しきれないから、サムスンと組んだりモトローラ買ったりしているわけで。サービス、ソフトとしての価値を引き出すためには、ハードの魅力を高めることは必要不可欠だと思うんですよね。

任天堂にも変化を期待

もっとも、今の任天堂が一番かと言えばそんな感じもしません。マリオ、マリカ、モンハン、どれも続編ものばかり。今後予定されている任天堂の強力タイトルと言われているものも、続編ばかり。任天堂自身もソフト面での進化がめっきり止まってしまっている、鈍化してしまっている感じは否めません。据置の超リアリスティック・高自由度なゲームが主流になっている海外では、特に存在感が徐々に弱まっているように感じます。

DSのころはTouchGenerationsで、一般書籍ネタ、テレビでの話題ネタなどとうまく絡め、日常生活に溶け込む形で大きなブームを作りました。イメージ戦略としてタレントを多く使うなども功を奏しましたが、今はそっち方面のアプローチはモバグリにお株を奪われているような状態。今回の500万台達成は堅実な任天堂ソフトとサードソフトの充実で達成したものですが、この先どうしてもDSLiteでの大爆発と比べられることになります。今回過去の自社ハードと比べて好調さをアピールしているのは、ある意味1年後にDSLiteと比較されるという諸刃の剣でもあるわけです。

人は飽きっぽいもの。単にDSの戦略をなぞるだけでは先が見えています。今の堅調な勢いを維持した上で、いかにしてより多くの人を巻き込んだ新しい「ムーブメント」を起こせるか。プラットホームとしての大成功まで行くには、今の世の中非常にハードルは高いですね。

「ハード」と「ソフト」による新しい価値・存在感創出を

「モノづくりは終わった、これからはソフト」みたいに杓子定規にのたまうアナリストとかもいますが、なんだかそういうのはIT革命とかWeb2.0とかのときとダブって見えます。世の中、そんな単純なものじゃないというか。ソーシャルだって、実態はアイテム課金やガチャ、変動性調整とかそういった仕掛けだったりするわけで、キーワードだけでステレオタイプに考えてしまう人は、アナリストにしても経営者にしてもおそらく失敗するでしょう。

技術的な飛躍率が鈍化している昨今、技術を柱とする娯楽の必要性は薄れ、メーカーやゲーム業界なども非常に苦戦しています。業界の再編成、淘汰も進んでいます。そんな中で、日銭を稼ぐために過去の資産・ブランドを切り売りして稼いだり、消費者や小売を騙したような商売を繰り広げているところも出てきている状態。ある意味、なりふりかまってないというか。ただ、そうして目先の金に溺れれば、その先にまっているのは消費者の無関心のような気がしてなりません。結局は娯楽産業。そういった企業の「ギラつき」が見えてしまうと、消費者も心から楽しめなくなってしまいます。

目先の好不調、ライバル企業との勝ち負けだけでない、エレクトロニクス、コンピュータエンターテイメント全体としても「価値」、消費者として気持よく金を出すことに値する社会的存在感、そういったものを貪欲に追及していくべきときなように感じます。Appleなんかは結構そういったアプローチですよね。ジョブズが死んでどうなるかは分からないところもありますが。任天堂も、任天堂ソフト資産だけにたよらない「価値」を提案して欲しいですし、ソニーやMSも、ネットワークサービスを軸とするなら、それを用いた「何か」を見せて欲しい。それが提示できなければ、人々にとって「必要のないもの」に格下げされてしまうでしょうから。

デジタルと共に成長してきた一人として、今後とも各社健全に切磋琢磨して新しいものを産み出していってほしいなと思います。