任天堂、四半期決算報告会資料&質疑応答〜eShopの拡張やメディア対応について

3DS値下げ以降、攻めの姿勢を見せる任天堂。これまでどっちかというと自社のインフラに固執して保守的なイメージが強かったですが、発表会をニコ生やUstreamでも配信したり、社長がTwitterでつぶやいたりと、他のメディアとの連携も柔軟に進めてきています。

そんな中、任天堂が中間決算報告を公開。円高による為替差損もありますが、3DSWiiの見込みに届かない売れ行き、3DSの逆ざやから通年赤字に転落するということで、衝撃的なニュースとなりました。

任天堂:今期は初の赤字に、円高とソフト低調で−純損失200億円(2) - Bloomberg

その決算報告会の中で、eShopに関する今後の展望が公開されていますね。

2011年10月28日(金)第2四半期(中間)決算説明会 任天堂株式会社 社長 岩田聡 講演内容全文
任天堂、3DSの eShop に試遊版やDLCを追加、ウェブ版ストアも展開 -- Engadget Japanese

起動回数制限付きの体験版、DLC対応、そして一番個人的にも要望の強かったまとめてコンテンツダウンロードとスリープダウンロードの対応に対応するようです。Engadgetの指摘にもあるように、他のプラットホームでは出来て当然のレベルで、今まで任天堂が遅れていたところですね。

他のマスコミ、アナリストの偏見への対応が課題

DLCの部分は、「任天堂アイテム課金のソーシャル系のようなゲームを出す」と誤解されて報道されていたところがありました。
任天堂、3DSに「アイテム課金型ソフト」 来年中に投入 - MSN産経ニュース

産経のソーシャル偏向、誤解まじりの任天堂バッシングはちょっとひどいですね。3DS関連も何がなんでもネガティブですし。元々右よりで思い込みの強い記事を書くメディアですが、どうも任天堂に関しては変な感情があるかのような書き方。この件に関してはあまり仲が良くないと思われるファミ通がわざわざフォローしているぐらいです。

なお、本件に関して一部で“アイテム課金型”と報じられているが、任天堂の広報部に問い合わせたところ、課金でゲームが進行する形式とは異なる、との回答を得た。ただし、追加コンテンツを有料でダウンロード販売する可能性はあるとのことだ。
ニンテンドー3DSが追加コンテンツに対応 - ファミ通.com

任天堂も質疑応答のページで補足していますね。

(※一部に、「任天堂ソーシャルゲームのようなアイテム課金型ゲームを投入予定」との報道がございましたが、これは、事実ではございません。)
2011年10月28日(金)第2四半期決算説明会 - 質疑応答

おそらく、産経記者の中で、DLCアイテム課金型の区別が出来ていないんでしょうね。以前平林氏が、任天堂の発表会で「ソーシャルに関する話題が無い」ということを侮蔑的な態度でコメントしていた一般経済紙記者の話がありました。

たまたまであるが、私の席の隣には経済誌の記者が座っていた。開幕前に同僚記者同士でフィリピンパブの雑談をしていた。内心、「場をわきまえろ」と思っていた。時は過ぎ、岩田社長のスピーチが終了した。

その瞬間、ひとりの記者は「ソーシャルの話とか、全然出てこなかったな」と吐き捨てるような口調で感想を述べていた。類推するに、その経済誌記者は「ソーシャルを無視した任天堂の見えない次世代戦略」とネガティブな報道をするのだろう。

ニンテンドー3DSカンファレンス2011速報コラム・・・平林久和「ゲームの未来を語る」第22回 / GameBusiness.jp

こうした一般紙、アナリストの、ソーシャル系と絡めた安直な批判にたいして、質疑応答のA-9でも岩田社長は因果関係の弱さなどをいろいろコメントしています。
2011年10月28日(金)第2四半期決算説明会 - 質疑応答

各種データも示して論理的な説明をしているのですが、ぶっちゃけこれ、上記のような態度をとった人たちには理解出来ないじゃないでしょうか?理系の説明を文系の人が理解できない、というのと似た感覚があります。質疑応答のQ6で、報道がネガティブになっていることへの対応、という質問が投げられているのですが、岩田社長の返答はちょっとずれている感じもするんですよね。

正直、任天堂はあまりに正攻法過ぎる気もします。ネットでは個人ブログやまとめブログ、一般紙やアナリストも含めて、むちゃくちゃな理論で感覚的、感情的に煽りを入れる記事が目につきます。元々に悪意を含んでいるわけで、さらにそうした情報を嬉々として受け入れてしまうような人々には、論理的な説明は正直伝わらないんじゃないか、と思うんですよね。任天堂はこうした部分には、基本的にテレビなどのCMでの芸能人大量投入とかで「ポジティブな雰囲気」を創りだすことで対応していると思うんですが、どこかでもうちょっと大鉈を奮ってもいい時期に来ているようにも感じます。今回のように、「一部報道と異なる」と積極的にアピールするのも一つの方法。また、まとめブログ系で問題のある捏造・歪曲、著作権無視の転載なども、法的手段に訴えても構わないと思うんですがね。

岩田社長の性格的に難しいのかもしれませんし、そうしたところに強気に出ることで任天堂のクリーンなイメージが壊れることを恐れているのかなとは思いますが、実業に影響が出ているとコメントするぐらいなので、偏向・浅薄報道への対応はもうちょっと考えた方がいいようにも感じます。(とはいえ、間違っても、国内サードとかで一部見られるような、そうした非合法まがいのサイトに下手に出て仲良くしていく、なんて方向で対応して欲しくはないところです。総会屋に屈するのと似たような構図なので。一時的効果はあるかもしれませんが、社会的信用が低下しますし。)

任天堂の立ち位置の変革の時期か

質疑応答のA6のところで、「社内でやるところと社外でやるところ」についての意識変革も進めてきている、とあります。なまじDS、Wiiと成功してきただけに、何でもかんでも自社でやろう、やるべきだという風潮があったことを認めていますね。それが、結果的にソフト不足を招いたり、経験不十分なインフラ系の機能不足、サービス不足を招いているようにも感じます。メディア対応も、ファミ通などの偏向に対応するためみんなのニンテンドーチャンネルなどで対抗していましたが、「自分で見に行かないといけない」というところではやはり弱いところも感じます。Nintendo Directもそれに近いところも感じますね。

ソフト開発、インフラ開発での社外との連携、メディア対応でも単なる正攻法ではなく、他社や世間の誤解へのカウンターアクション的な対策も打っていく必要があるのでは、と感じます。コンテンツ・サービス不足から業績が落ち込み、結果として招いた短絡的な「保守的で古い、世間の流れから外れた会社」といったレッテルをどう克服していくか。任天堂の、立ち位置、行動の仕方について変革が求められている時期に来ているように、個人的には感じます。あえて我流で挽回する、というのも、できればそれがかっこいいとは思いますけどね。

ともかく、ある程度体制は整えて迎える年末年始。メディア対応も含めて任天堂のお手並み拝見、というところです。