ニンテンドー3DSの現状について考察

爆発的な大ヒットとなったニンテンドーDS。その後継機として、本命携帯ゲーム機として登場したのがニンテンドー3DSです。

ニンテンドー3DS アクアブルー【メーカー生産終了】

ニンテンドー3DS アクアブルー【メーカー生産終了】

ニンテンドー3DS コスモブラック【メーカー生産終了】

ニンテンドー3DS コスモブラック【メーカー生産終了】

発表の段階から注目を集め、予約開始でも大盛況。体験会なども好評でしたが、発売以降は徐々に反応が低下傾向に。そんな中で大震災発生し、結果として本体余りやソフトの値下げなど、幾分伸び悩みを見せる形となっています。

こうした状況に、ITMediaで発売からの経緯とメディアクリエイトの分析コメントがのった記事が掲載されています。

日々是遊戯:3DSの立ち上がりは成功と言えるのか? データで見る3DS、DS、PSPのローンチ比較 - ITmedia ガジェット

グラフの傾向を失速感に直結させてしまっていますが、DSやPSPは3週目がちょうどクリスマス商戦だったのに対して3DSは震災直後。文章内で一応そのことに言及をしてはいますが、結局はこれを根拠に話してしまっているのはちょっと均等な比較になっていないように思えます。

とはいえ、3DSにいまいち伸び悩み感があるのは自分も思うところです。今回は現状の3DSの状態にたいして、自分なりの考察をしてコメントしてみたいと思います。

多大な大震災の影響〜消費者心理・ソフト延期・CM自粛など

まず、現状3DSがいまいち伸び悩む理由の最大のものは、なんと言っても大震災でしょう。発売が2/26、震災が3/11。発売からわずか2週間弱で、未曾有の大災害が起きてしまったわけです。震災により、しばらくは流通がストップ。さらに、消費者心理的にも災害の大きさ、計画停電のうっとうしさ、原発関連での不安、そして買い占めなどによる品不足など、とても3万以上もかかる新しい娯楽に気楽に走れる状況にはなっていません。

<相次ぐソフトの発売延期>

また、震災の関係で各種ソフトが延期したのも響いています。多くのソフトは「諸般の都合」ということで延期をしており、明確な延期理由は出して いません。理由として考えるのは、「完成はしているが流通や消費者の状況を鑑みて」、「開発拠点が被災や計画停電などで満足に稼働せず開発が間に合わない」、「ゲーム内容に地震津波、核などを含む」といったところでしょうか。中には、3DSの本体売り上げが見込みと違ってきたことで延期するというもの もあるかもしれません。こうしたことが、ただでさえいまいちと思われていたロンチランチラインナップに、ソフト不足の状況に拍車をかけてしまっている形です。

<痛い大量CM展開の中断>

特に任天堂にとって大きいのは、客層と販促方法でしょう。元々任天堂はDSの頃から「マスコミに乗せられるような人々」を得意にしてきました。家族や友達の多い、ある意味「リア充」な方々に、皆と交流したりわいわい楽しめるものでブームを作ってきたんですよね。こうした人は、昔からのゲーマーと違ってソフトに対して受動的。だからこそ、任天堂はCM費の比重を高め、TVCMでタレントなどを使って楽しそうな雰囲気を演出することに勢力を注いで来たわけです。これは、CMを大量に打ってこけても何とかなる体力があり、なおかつCMにつられて買った人が結果的に納得できるクオリティ管理がしっかりできていた任天堂だからできることで、他社が単にCM打っただけでまねられるものではありませんが。

しかし、こうした任天堂の得意のアプローチがこの震災では通じません。マスコミに流されるような人は、原発の情報で東電や政府に怒りの感情を抱き、放射能汚染の話しを聞いて買い占めに走るような人たちが多く含まれます。そして、こういった人たちが任天堂の主要客層でもあった訳です。

ソフト不足、商戦期でないなどの条件であっても、CM爆撃でブーム感を演出して売上を伸ばせる見込みが任天堂にはあったのかもしれません。ただ天災によってその目論見がくずれ、その弱点が露呈してしまっている感じです。

3DSそのものの抱える要因も

一方で、震災の影響だけ、とも言えない3D自体が抱える要因もいくつかあるように思われます。いくつかの点は、自分のファーストインプレッションでも述べています。

ニンテンドー3DS ファーストインプレッション - わぱのつれづれ日記

一番感じるのが「ニンテンドー3DSならでは」の新しさの感覚と、それの提案の少なさです。DSで言えばnintendogsWiiであればWiiSportsがロンチ、もしくはそれに準じた形で発表などもされており、新ハードの新要素を効果的にアピールできていました。今回はそうした「ならでは」のソフトが発表されていません。

3DSの一番の要素として裸眼立体視が上げられていますが、これは結局のところ一つの技術にすぎません。見たときのインパクトはあるのですが、ある意味一発芸というか。3D視の後に2D視だと物足りなく感じるとか、そういったコメントも社長が訊くなどであり、たしかにそういた点もあるのですが、それでも「味付け」の域を超えられてないように感じます。

その他の要素としては、ARや顔シューティングでしょうか。しかしこちらはこちらで、ジャイロのために動きながら操作すると立体視のポイントがずれ、クロストークが発生して不快に感じたり、立体カメラの画質がいまいちなのが露呈したりします。ボリューム的にも大きくなく、WiiSportsやnintendogsに当たるほどのインパクトかというとそれほどでもない、という印象。すれちがい通信は、3DSでスタンバイ状態で複数行えるようになったことのメリットを一番大きく感じます。ただ、これらも結局はDSの延長でしか無いんですよね。DSの時のような「今まで体験したこともないようなおもしろさ」に欠けています。DSを楽しんでいた人ほど、差分としてしか楽しめていない、それが今の3DSのように感じます。

グラフィックスについても、CG描画能力などは大幅に向上しているのですが、結局解像度が低いままのため、オブジェの輪郭などでジャギが目立ちます。Wiiみたいというか。PSPとは比較論では上のはずなんですが、あえてPSPから買い換えなければいけないほどの差と感じれるかどうか。DSの頃のメインであったライト層だと、そもそもグラフィックスへのこだわりが弱いため、「DSと同じことが綺麗になって楽しめる」というだけでは購買動機としては弱いでしょう。また、続編に関してもこの層はあまり「続編だから無条件に買う」という傾向はありません。DSで人気が出たソフトがWiiでこけていたり任天堂製でも結構ありましたからね。本体だけで2万5000円もするなか、似たようなソフトをさらに何千円も買うか、ということですから。

すべてはソフト、サービス次第

根本的に、今回の2月発売は、ソフトが間に合っていない印象です。おそらく、元々は昨年末のシーズンの発売予定だったんじゃないでしょうか?それが、ソフト開発が間に合わず延期した、と。OSの機能ですら、ネットショップにOS自動アップデートなど、コアとなる部分が間に合ってませんからね。ソフトに対して本体の出荷が潤沢なのも、そういった事態を想定させます。

昨年度は、WiiとDSについても大きな落ち込みが見られた年でした。任天堂的にも会計年度内に発売することでなんとかトータルで売上高を巻き返したいという意図もあったんでしょう。商戦期をはずしてもライバル不在だし、勝ちハード後継機の初期需要だけで年度内150万台はさばける…そういった青写真があったおかもしれません。ただ、天災のために抱えていた不安要素が一気に露出されてしまったいる形ですね。

「運を天に任せる」というのが任天堂のポリシー。今回の天災も仕方ないと思っていることもあるでしょう。ただ、元々物の売れない時期に発売し、たよりの初物需要が吹き飛んでしまいました。そして、いまだ3DSの新提案は見えてきません。ゼルダやマリオも、結局は任天堂ファン向け。続編では客層が広がっていかないのは、何もサードに限ったことではないでしょう。任天堂がDS、Wiiと伸びてきたのは「驚き」があったから。これを演出できないことには、この先も任天堂シリーズ物による「予測できるレベルでの売上」ぐらいのものに収まってしまうように思います。

ただでさえ、最近のゲーム機では続編やギャルゲなど同じようなソフトばかり。ファンとして応援しているものは続編でも買いますが、その状況に満足しているわけではありません。自己模倣の繰り返し、果ては他機種完全版などを繰り返していっては、ファンにも愛想をつかされていきます。任天堂さえ、いつまでもマリオやポケモンという定番モノに頼るだけではGCのころに逆戻り。3DSのハード自体はいまさら変えられませんが、ソフトとサービスはまだ可能性はあります。イノベーターとしての輝きをこの先任天堂が見せてくれることを期待したいと思います。