突如再燃した小学館の著作権騒動

なにやらネットで急に騒ぎになっていた小学館の「画像使用・著作権」についてのページ。

小学館はインターネット及びイントラネット上において、当社の出版物を以下の行為に無断で使用することを禁止しております。

* 出版物の装丁及び見開きなどの画像の全体又は一部を掲載すること。
* 出版物の内容及び目次などの全体又は一部を掲載すること。
* 出版物の要約及び出版物を元に制作した小説などを掲載すること。
* キャラクターの画像及び写真等の全体又は一部を掲載すること。
* キャラクターの自作画(イラスト・パロディなど)を掲載すること。
* 出版物やキャラクター(自作画を含む)をフリーソフトやアイコン、壁紙等に加工して掲載すること。
* 小学館ホームページの内容(画像・データ・ソース)の全体又は一部を転載すること。

以上の行為は営利非営利の目的いかんに関わらず著作権等の権利侵害となります。
守っていただけない方には法的手段を講じることもありますので、ご注意ください。
画像使用・著作権 | 小学館

自作画も含む内容でたしかに厳しい内容だな…、と思ったのですが、何かデジャブを感じるような内容。そこでネットを調べてみたところ、いろいろと興味深い事項が分かりました。

10年以上前から同じ文面

今回の小学館のページですが、同ページの過去のログをWayback Machineというサイトで調べてみたところ、実はずっと以前からこの文章であったことが判明しました。

2002年10月8日のログ→小学館 : 画像使用・著作権について

また、2000年の時点でも同一文章で論議していたことが以下のリンクでも見て取れます。

●小学館の著作権問題 Q&A

ついでに、けいおん!ひだまりスケッチなどで知られる芳文社でもほぼ同様の文面が記されています。

まんがタイムきらら - 著作権について- まんがタイムきららWeb

こちらも、ログを調べると2006年末には出ていたことが分かります。

2006年12月2日のログ→まんがタイムきらら - 著作権について- まんがタイムきららWeb

このように、今回の文面は古くは10年以上前から同一の内容でネットに出されており、以前にも結構な物議を醸していたものだったわけです。

なぜ突然ひろまったのか?

こうなると、なぜこの文面が急に騒がれた出したのかが気になりますね。以下のまとめによれば、3/27の14時の時点で発言が出ているようです。

小学館、二次創作ネット上全面禁止が突如話題に - さまざまなめりっと

そして、28日深夜になってから急激に広まり始めたかんじです。Togetterのまとめの先頭がAM1時半頃となっていますね。

Togetter - 「小学館の画像使用・著作権について」

この中では、畑健二郎さんも批判的なツイートしてしまっています。畑さんでも、これが以前より出されていた文面だという認識が無かったようですね。(P.S.やはり発言は削除されたようです。)

こうした、「文章自体はかなり厳しいこと言っているけど、皆があまり認知していなかったこと」というのが、今回の伝搬の根底にあるのかもしれません。自分も最初見たときに「えっ?!」とか思ってしまいましたし。特に二次創作などでは10〜20代の人も多く、そもそもあまり深く意識していなかった人がいたとしても、不思議ではありませんしね。二次創作というグレーな世界だけに、テーマに普遍性があるということでしょうか。この件は、同人界隈で引き続き議論されていく話題でしょうね。

ただ、情報の拡散具合や経緯を調べ、元情報が古かったことなどを調べていくと、改めてネットの伝搬力の凄さと危うさを感じました。特に最近、東日本大震災に関連して多数のデマ情報などがネットを流れていました。

東北地方太平洋沖地震、ネット上でのデマまとめ - 荻上式BLOG

今回の件は別にデマ情報では無いのですが、あたかも「急に小学館が二次創作に締め付けを開始した」かのようなニュアンスに取られ、はや二次創作存亡の危機か、との危機感から一気に情報が拡散していったように思います。こうした、ちょっとした不安を煽る事項が、深く裏付けや分析が行われずに爆発的に伝搬していく。昨今のツイッターなどでよく見かけられる現象です。

求められる個々人の情報リテラシー

ツイッターの性質上、こうした情報の伝播が起こるのはある程度致し方ないことでしょう。後は、個々人の情報に対する取り組み方、リテラシーが重要になってくると思います。ネットでは、センセーショナル性だけで深く情報の裏を取らず掲載したり、意図的にネット上の一部意見を抽出し偏向したタイトルをつけて煽る記事なども多く見られます。そもそも感情を動かす目的で書かれているだけに、そうした記事に乗せられてしまう人も多くいて、それも仕方ないところもあります。

情報配信側が正しい情報を発する、間違った場合に訂正するなどはもちろん重要です。ただ、昨今では情報発信側もマスコミだけでなく、一個人だったり、煽り屋・広告会社など多種多様になっており、発せられる情報の質も様々。そのため、受け手側もただ盲目的に情報を信じるのでなく、二次ソースを見てみる、一歩引いて情報を見てみる、後から情報を再確認してみる、そういった取り組みも必要になってくるように思います。学校教育などでも、小学校など早い段階から、情報リテラシーについての教育などが求められてくるかもしれませんね。

特に震災で皆のフラストレーションが高まっている時ですので、こういうときこそ落ち着いた反応がとれるよう個人個人努めたいものです。今回の件に関しても、急に締め付けが強くなったのだと熱くなることなく、二次創作などで過去10年どういった距離感で皆がやってきたかをこれを機会に見つめ直し、冷静な行動を期待したいところです。


P.S.
講談社の場合はこちら。
版権・著作権・出版物の使用に関して : 講談社「おもしろくて、ためになる」出版を

Wayback Machineでたどれる一番古いログと最新のログが以下のもの。
2006/4/11のログ
2009/5/6のログ

講談社も他社と昔から同様の内容なのですが、2009年5月のものと比較すると以下の文面が加わっています。

出版物をたとえ個人や家庭内の利用であっても、代行業者等の第三者に依頼してコピー、スキャン、デジタル化すること。出版物の無断複製は著作権法上の例外を除き禁じられています。

これはiPad以降の自炊関連を受けて追加されたものなのかもしれませんね。