Apple、iPhone4のアンテナ問題について会見〜ケースを無償配布、リコールは無し

世間をさんざん騒がせているiPhone4のアンテナ受信感度騒動。コンシューマーレポートで「購入費推奨」となったことを受けて株価が大幅下落、各所からその対策についてリコールも含めて様々な憶測が飛ぶ中、Appleが現地7/16 10AMから急遽会見を開きました。

速報:アップル iPhone 4 プレスカンファレンス

自分は以下の翻訳実況を聞きながら英語のテキスト中継などを見てチェックしていました。

mwlive on USTREAM
Live iPhone 4 press event coverage – gdgt live

以下、会見の内容についての紹介や感想を述べてみたいと思います。

冒頭から言い訳に終始した会見

会見としては、冒頭から言い訳のオンパレード。「どの携帯でもおこること」と、わざわざ他社の携帯を使って実証するシーンまで流すところを見て、おいおい、という感じでしたね。比較広告OK、自らの非は容易に認めないアメリカ企業らしいといえばらしいですが。その後も返品率や苦情が少ないことを上げていましたが、これもまだ発売間もないですし、全員が全員苦情等をいうわけでなく、返品に関しては代替機もない状態ですから、ある意味詭弁ですよね。マスコミが悪乗りしすぎなのは確かとは思いますけど。その後、「我々は立派な電波施設を使って実験している」と、自社自慢を始めたときにはどうなることかと思いました。思わず、PSPのボタン問題のときの、「建築家のデザインに文句付ける人はいない」という論法を展開してくるのではと、ヒヤヒヤしました。

「それがPSPの仕様だ」、久多良木SCE社長がゲーム機不具合騒動を一蹴 - ニュース - nikkei BPnet

少数の問題のためにケース無料配布〜返品もAT&Tで受付

しかし、ドロップコールは1/100未満であると説明したあと、「それでもすべての人に満足して欲しい」と切り出したところで、おっ、という展開。iOS4.0.1での電波表示改善の後、ついにケースの無料配布についてアナウンスされました。

アップル、iPhone 4の全購入者に無料でケースを配布

その後の質疑応答によれば、とりあえず9/30までの施策で、それ以降どうするかは状況を見ながら検討するとのこと。問題収束すればやめるかもしれないし、別の対処法が見つかればそれに切り替えるかもしれない、という事のようです。

これを受けて、日本のApple Storeでもすでにバンパーのページが販売停止となり、アナウンスも表示されています。

iPhone 4 Bumpersは現在ご注文いただけません。

アップルはiPhone 4 Bumperまたは他のケースをiPhone 4のお客様へ無料で提供します。詳細につきましては、間もなくapple.comのサイトにてご案内します。

Apple iPhone 4 Bumper - Black - Apple Store (Japan)

これまでにバンパーした人には全額返金。ただし、サード製のケースの場合の返金には受け付けないとのことです。まあ、それは確かにそうでしょうね。また、それでも気に入らない場合は返品も受付。AT&Tの契約解除と返金も対応することになるとの見解をしめしていました。これは、先日のAppleの見解発表でも出ていたことですが、日本ではまだこれの対策が発表されていません。返品する人はほとんどいないと思いますが、ソフトバンクがどう対応するか、正式な発表をお願いしたいところです。(黒を返品して白に乗り換える、って人は出てくるかもしれませんが…)

ちなみに、iPhone4白と世界での販売拡大は7月末からということです。あと、他にもiPhone4には近接センサーの不具合があり、これについては次のiOS更新で対応する人のこと。現在iOS4.1がbetaテスト中ですが、これのリリースが早まるか、4.0.2のリリースがあるのかもしれません。

株価の変動〜バンパー無償配布発表で急激に変化

一方、今回の発表はかなり株主や投資市場を意識したものにもなっていて、その株価変動もチェックしていたのですが、なかなか面白い形になっていました。

AAPL: Apple Inc. - Google Finance

以下、コンシューマーレポートの発表があったときから、会見週後までを切り出したものです。(※下の時刻の数値は米東部時間のため、時差の関係でAppleのあるクパチーノからは+3時間されています。)

14日に記者会見のアナウンスをだしたことで、リコールを懸念してか$5ほどの大幅下落。そして、その後は緩やかな上昇を見せていましたが、会見の始まる少し前の12時のあたりまで下げが継続。一方会見が始まり徐々に上昇し、バンパー無償配布が発表された直後の13時半あたりでに急激に株価が上昇しているのが分かります。その後はがくんと一旦値が戻ったものの、徐々に上昇を見せ、コンシューマーレポート前の値まで戻ってきている形ですね。リアルタイムで会見の内容に反応している様が見えて面白いです。

P.S.
16日はその後下落し、結局前日から$-1.55 (-0.62%)、$249.90となった模様です。

まとめ〜とりあえずの収束か

以上、ざっと会見内容について触れてきましたが、自分も前から現実的な解法として考えていたバンパーケースの無償配布が示されたことで、とりあえず今回の騒動は収束傾向に向かうことでしょう。Wiiのリモコンカバー無償配布がひとつの良いケーススタディとなっていたように思います。

任天堂 Wiiリモコン用ジャケットを無償配布 〜 今後は同梱に - わぱのつれづれ日記

ケースの配布方法はまだ具体的に説明しておらず、色などが選べるのかどうかなどはよくわかりませんが、iPhone4ユーザーとしてそんな方向には転ばないでしょう。

一方、会見的には、最初に言い訳に終始したのは正直あまり印象はよくありません。問題があるのは極小数、マスコミが騒ぎ過ぎと、かなりしつこく質疑応答でも言っていましたね。ただ、今回の件は再現性が非常に高く、また設計的な不良であると安易に想定できるため、多くの人が問題視していたわけです。単なる顧客としての視点だけでなく、「そもそもモノを売る側の対応としてどうよ?」という感じですよね。ヤッカミ半分なところがあるのは確かにあるでしょうが、ものには何事も程度というものがあるわけですので。「握り方で感度が落ちるのがあるのは業界全体の問題、iPhone4は『どこを持てば感度が落ちるかが明確』になっているぐらい」とか言っていましたが、「問題が先に分かっていたら対処していた」とも言っているように、結局は後付の言い訳だったことは質疑応答で明らかになっていましたし。

まあ、このあたりの本音でバシバシ言っちゃうところも、ジョブズの人気なところなんでしょうけどね。サードパーティと発売前に連携することに対して「盗品を勝手にWebに上げるようなやつもいるから」と言ったり、電波受信改善の検討を顧客の家に行ってやる件に関して「我々はドアは壊さないよ」と、ギズモードの家宅捜索時にドアが壊された件をあげて爆笑を誘うあたり、さすがジョブズという感じでしたが。

ともかく、アンテナ騒動について、一旦の結論を迎えたように思います。あとはこれを受けて市場や集団訴訟の件などがどういった反応を見せるか。次期モデルも含めて、ファンや消費者に取って嬉しい方向にすすめばいいなと思います。


P.S.
会見中にジョブズが展開した「他社でも同様」という実証例。なんと、それがHPにまで動画付きで公開されました。

Apple - Smartphone Antenna Performance

正直、このページが作られた時点でドン引きですよね、日本人だと。アメリカでは比較広告が許されていますが、自社製品の批判の矛先をそらすため、ここまで他社製品を使うとは。しかも、実験条件、電波環境などのデータ詳細は不明。そもそもDroidなんてキャリア自体違いますので、同一条件での比較などできません。また、iPhone4は電波が3から1になったという結果で書かれていますが、すでにネットでは0になった例もあるわけで、ここでもバイアスがかかっています。…これはなかなか騒動は収束しないかもしれませんねぇ。