旧型PS3、4/1の新ファーム3.21からLinuxのインストール&実行が不可に

単なるゲーム機としてだけでなく、Linuxをインストールしてスーパーコンピュータとしての利用も可能だったPS3

一方で、薄型になった新型PS3ではそのOSインストール機能が削除され、また旧型については先日の閏年バグ問題でシステムクロック関連での不具合があることも明らかとなりました。

そんな旧型PS3において、とうとうLinuxなどの他OSのインストールおよび実行が、次のファームウェアより不可となることが明らかになりました。

PlayStation.com(Japan) | インフォメーションセンターからのお知らせ

4/1のファーム3.21から機能制限〜アップデートしなければPSNアクセスも不可に

3.21のアップデートは4/1からとのこと。一応、ファームのアップデートをしないことでLinuxの起動は続けられるようですが、その代わり以下のようなものが利用不可になるという、制約が加わることになります。

  • PlayStation®Networkへのアクセス、PlayStation®Networkを利用したコンテンツ及びサービス
  • システムソフトウェア バージョン3.21以降で動作するPS3®向けゲームソフトウェアおよびBlu-ray Discビデオコンテンツ
  • メディアサーバー上の著作権保護されたビデオの再生(本体設定でDTCP-IPを有効に設定している場合)
  • システムソフトウェア バージョン3.21以降で提供される新機能や動作品質の改善等のアップデート

特に、PSNにアクセス出来ないのが大きいですね。トロフィーの機能のオンライン共有もできなくなりますし、ネットで体験版をダウンロードすることすらできなくなります。オンライン対戦も不可。これまでに発売されたゲームを、オフラインでのみ楽しみことはできますが、これではPS3のゲーム機としての魅力は半減。Linuxを使い続けたいのであれば、実質ゲーム機としてのPS3の利用は諦める、もしくは別途新規に購入するなどの対策が必要となります。

PS3オープンコンピューティングの終焉

PS3でのLinuxも、設定次第ではそれなりに軽快に動作、Cellへのアクセスも可能などいろいろ遊べるところが多くありました。有志によるチュートリアル、サンプルなどもいろいろ公開されています。自分もこれらのページを参考にセットアップさせていただいたものです。

メインページ - PS3 Linux Information Site / Cell/B.E.のパワーを体験しよう
PS3 LinuxでCellプログラミング! - 楽天ブログ(Blog)

しかし、今回のアップデートで、これらCellのアマチュアによる利用の道は閉ざされた事になります。OSなどの対応も期待できませんし、有志によるソフト開発も行われなくなるため、過去の情報も放置、削除されていくことが進むでしょう。実質的にPS3でのオープンなソフト開発は終焉を迎えた、と言えると思います。

他のOSインストール機能でのセキュリティ的脆弱性が要因

今回の他OSインストール機能削除について、この機能のセキュリティ脆弱性が理由としてあげられています。これは、2月頃一時ネットでも話題になっていた問題です。

PS3ハック出回る : ギズモード・ジャパン

他のOSの機能から、PS3の全機能にアクセス出来るようになる、というもので、これを利用すれば海賊版などの実現可能性も出てきていました。そのため、この機能が今後のアップデートで塞がれることになる可能性も想定はしていましたが、一方ですでに上記のように多数の有志による開発者やLinuxでの利用をしている人がおり、それらの人を無視してまでいきなり機能制限に踏み切ることはないのでは、とも思っていたのですが、実際には異なったようです。

急すぎる告知〜ゲームとLinux双方利用していたユーザーへの配慮は?

しかし、これだけ制約が加わる事項について、3日前の告知という非常に急な告知はいかがなものでしょう?たしかに、PS3Linuxなどをインストールして使っている人は全体に対しての割合は少ないでしょう。しかし、PS3Linuxを利用することは、これまで公式にサポートされていたことのはずです。そうした人たちが、いきなり上記のような制約が加わるというのに、3日前になって問題を告知するというのは、正直配慮に欠けているように思います。

本当ならば、機能を切ること無く、セキュリティ脆弱性を修正する、という選択肢をとってもおかしくないはずだと思うのですが、今回は機能削除という方針がとられました。技術的に解決の難しい、PS3のHW的脆弱性ということなんでしょうか?それとも、新型PS3での他OSインストール機能削除を見て、SCE的に利用者の少なく金にもならない他OSインストール機能に対して、そこにコストを費やす余裕も意志もないということなんでしょうか。せめて、3.15へのダウングレードのパスだけでも残しておいてもらえればいいのですけど、セキュリティ上の問題だとすると、それもできないんでしょうね。

実際、自分も旧型PS3Linuxをインストールして使っています。Linuxの設定も、いろいろWebでインストール方法を調べたり、必要なソフトをインストールしたりと、かなりの時間を要しました。トータル何十時間以上と。その費やした時間はどうすればよいのでしょう?確かに、アップデートしなければLinuxは使い続けられます。しかし、PSNにもアクセス出来ず、オンライン対戦も楽しむことができず、今後でるソフトで最新ファームを要求するソフトも遊べません。PS3でゲームも楽しみたいなら、新規にもう一台買えって事なんでしょうか?PS3一台でLinuxもゲームも両方利用しようと思っていた自分は何か間違っていたのでしょうか?時間をかけた自分が馬鹿だったのでしょうか?

Linux自体は他にもいくらでも利用することは可能ですが、PS3のCellまで触ることのできるLinuxPS3しか存在しません。それを利用したいと思ってPS3を購入した人は、PS3でネット機能を利用してはいけないのでしょうか?公式にインストールは認められていたのではないのでしょうか?我々が愚かだったのでしょうか?…非常に、やるせない思いでいっぱいです。

アップデート見送りか、新型購入か…

とりあえず、自分の場合は一旦はアップデートを見送ることになるでしょうか。なにしろ、あまりに急な告知だったため、気持ちの整理がついていませんので。やりかけているGOWコレクション、そして実は購入してあったGOWIIIはどうしましょうね。オフラインでプレイしておき、後でトロフィーなどのデータも移行できるように保存しておきますか。それ以外、体験版などは諦める、という感じ。オンライン対戦のあるゲームも購入を控えることになるでしょうか。これまで設定したLinuxを破棄するのは忍びないので、新型PS3の購入も視野に入れるべきでしょうかね。

ゲーム機能の他、BDやtorneなどAV機能といった多機能でも魅力的であったPS3。そして、ゲームもSCE製の優秀なタイトルが揃っていて魅力あるハードなのは確かですし、海賊版対策に非常に強い姿勢で望むことも賛成ではあります。ただ、今回ダイレクトに被害をこうむった一人としては、ただただ残念であるとしか言えないところもあります。3日前の告知という対応も、ショックが大きいところ。いまさらSCEの方針が変更されるとは思いませんが、今後こうした機能制限などが行われるときは、少数派ではあっても一応客ではあるはずのユーザーに配慮した対応をしていただきたいものです…。