MS泉水氏が語る、Xbox360の2008年度分析と次年度展望

2008年度ももうすぐ終わり。ゲーム業界では、各社今年度の目玉タイトルは大体出し尽くした感がありますね。年度末と言うことで弾は出尽くし、大きな発表もなくてゲームファン的には話題に欠けもやもやする時期ではあるのですが、次年度に向けた取り組みをそろそろ語り始める時期でもあります。今回、MSの泉水氏が、日経トレンディでいろいろ語っているようなので紹介してみたいと思います。

もはや100万台は通過点! マイクロソフトXbox 360の次なる野望とは? - デジタル - 日経トレンディネット

7ページにわたる記事で、いろいろと語っていますね。全体を通して感じるのは、良い点悪い点も含めて、日本におけるXbox360の現在の位置づけを分析できている、というところでしょうか。過剰にハッタリをかますことはなく、かといって悲観的すぎることもない感じです。以下、内容についてざっと触れてみたいと思います。

今年度だけで7割増〜MS的に日本市場の価値向上

まず、本体の売上が今年度だけで7割増加したということ。これは、米MS本社的に予想外だったようです。テイルズオブヴェスペリアのときは、非常に大きな弾となるタイトルにもかかわらず、米MSではHDD60GB通常版へのモデルチェンジとバッティング。結果的に日本では大きな品薄を招き、機会損失となりました。市場規模的にMS本社は欧州を大きなターゲットとしており、日本市場を軽視していた現れですよね。そうした意味では、今年度の日本市場でのXbox360拡大は、米MS的にも好印象だったようで、来年度の力の入れ具合に期待がかかるところです。米国企業としては、円高の現在日本市場は前よりは魅力的になってきているでしょうしね。

一方100万台が見えてきたということも、MS的には未踏の領域であり一つのマイルストーンではある模様。ただしようやく100万台というのは、客観的に見ればまだまだ非常に厳しい状態です。そのことについても、泉水氏は正直に触れています。MS自身で見た相対的な指標としては高評価ながらも、絶対的指標として厳しいところを今後何とかしていきたいという感じでしょうか。

JRPG戦略は継続〜動画配信・自作ゲームも

来年度の具体的な取り組みとしては、このインタビューを見る限りでは今年度と大きな違いは無い模様。日本は日本なりのタイトルをそろえていくという感じのようです。特に、今年度の本体売上増加とイメージ向上につながったJRPGについては、来年度も継続的に提供していく意向のようですね。

これだけ継続していくということは、XBOXの失敗以降、相当JRPGについては誘致に積極的だったのでしょう。RPGは特に開発に時間がかかる分、継続的な仕込みを実施していたということでしょうか。最も、具体的にどんなタイトルなのか、独占タイトルなのかなどは一切不明ですけどね。(個人的には同一ジャンルばかりに力を入れられも飽きてくるので、和製タイトルとしてもうちょっとバリエーションをつけてもらいところでもありますが。)

また、動画配信についても触れられています。「動画配信がXbox360を購入する第1の要因とはならないが、価値は高まる」という発言は、ゲーム機としての位置づけを重視していることの表れで、好感が持てますね。一方で、Xbox360は海外ではNetflixと提携した大型配信サービスを行っており、インフラ的には期待の持てるところ。日本ではブロードバンドも普及してきていますし、「返却のいらないレンタルビデオ」として魅力的なコンテンツ&価格でサービスして頂きたいところですね。

その他には、直感的にゲーム構築可能な「Kodu」や「Xbox LIVE コミュニティー」といった自作ゲームの展開についても触れられています。これは、海外主導で取り組まれていることを日本でも、という感じですね。他の陣営にない展開として、個人的には期待しているところです。他にも、携帯ゲーム機は特に作る計画は無いこと、Xbox360自体は長期に展開していくであろうことなど、今後の見通しについても語られています。

来年度の他社の展開は?

2009年に入ってから、HDゲーム機で龍が如く3バイオハザード5スターオーシャン4など、いわゆる「有名タイトルの続編」という安定して売上が望めるタイトルが出て、それぞれ一定の成果を残していました。各々本体も牽引はしましたが、PSPモンスターハンターのような「キラー」と呼ぶほど爆発的な牽引効果は無かったように思います。本体台数的な比率は、この調子だと当分劇的な変化は見られないでしょう。

一方、本体台数的には圧倒的に勝者である任天堂も、Wiiどうぶつの森以降大きなタイトルは無く、GCゲームのWii焼き直しを多数リリースして「しのいでいる」といった印象があります。DSについても、それほど目新しいタイトルは見あたらず、他陣営と比べると見劣りするラインナップだったように思います。任天堂自社スタッフ製の意欲的タイトルがあまり見られないことから、今は仕込みの段階なのか、はたまたDSやWiiの次世代機を研究開発中なのか。今月末のGDC2009で何らかの発表があるかどうか、というところでしょうか?

ゲームデベロッパーズカンファレンス 2009

最近では新規に開発拠点建設も発表していただけに、任天堂が何もしていないということは無いでしょう。いつ頃新しい発表があるか興味があるところです。

対して、国内では断トツ最下位のXbox360。昨年のJRPGラインナップでも絶対的にはシェアを伸ばせず、正直360が国内据置ゲーム機最下位を脱することは無いと思われます。ただ、今回の泉水氏のインタビューを見る限り、相対的には成長している日本市場で、Sは継続的に販売努力を続けていく模様です。世界市場ではHDゲーム機でトップであり、開発が比較的容易であることなどもあって、ソフトラインナップは充実しているXbox360。和製タイトルについても、来年度もそれなりに期待できそうですね。さすがにPS3とのマルチが多くなるとは思いますが、来年度もなおXbox360の独占タイトルを増やせるようであればたいしたものでしょう。既に360を所有しているユーザーは、当分安定してゲームを楽しむことが出来そうです。

一方のPS3PSPは、国内市場ではPS2のライトな市場を引き継ぎつつあるといった状況ですが、世界市場は他の陣営に押され気味。PSNソニーのサービスの中核として組み込まれたことが、ゲーム機としてどの程度魅力向上につながるか。まだソニーからは来年度の展開についてそれほど具体的には語られていないので、それ待ちといったところでしょうか。

本体台数的には、既に各社逆転の出来ないレベルに来ている現行のゲーム機ですが、PS2時代と違い客層が一極集中しておらず、まだまだ各陣営いろいろと戦略の打ち所はあるでしょう。ハードができあがっている以上、あとはソフトとサービスが鍵を握ってきます。どういったソフト・サービスを提供し、どれだけお金を稼げる客を囲い込めるか。次世代機も多少見据えた、各社の来年度の戦略に注目ですね。