任天堂の生産性について 〜 決算報告会質疑応答を通じて

先日のエントリで紹介した、任天堂の決算説明会における質疑応答。

「任天堂決算説明会 質疑応答」から見る「DSの今後」について - わぱのつれづれ日記

プラットホームサイクルとDSの今後については上記エントリで触れたのですが、それ以外にもなかなか面白い内容が、この質疑応答には含まれています。今回はその中から「任天堂の生産性」に関する質問(Q13)について取り上げてみたいと思います。

任天堂の生産性について

Q13の質問では、任天堂の生産性が向上できるかどうか、ということについて問われています。これは、PC Watchで後藤氏が主張している話題ですね。

後藤弘茂のWeekly海外ニュース

任天堂はこれだけ儲かっている割には、会社規模はあまり大きくしていません。M&Aについてもあくまで「必要な技術を特許ごと抱えるため」という展開に限定しており、これについてはQ21で答えています。最近ではモノリスソフトを買収しましたが、これは特別な例と昨年の決算報告質疑応答のQ3で答えていましたね。

2007年3月期 決算説明会 質疑応答

後藤氏は、Wiiチャンネルなどでの展開が遅い点について、任天堂の弱点としてあげていました。今回のQ13も、実は後藤氏が質問したんじゃないかと思うほど。ただ、実際問題Wiiチャンネルの一つ一つは面白いところはあるものの、展開が遅く感じることは自分もあります。

「急激に人気の出た老舗料理店」みたいな状態?

この辺は、岩田社長の返答でもなかなか苦しんでいる感じが伝わってきますね。任天堂としての社風、クオリティを維持できるかたちで人的リソースを増やすことが必要と言うことで、通常の人事ではなかなかうまくいかないということなんでしょうね。

これらのコメントを見てると、何か「急に人気が出た老舗料理店」みたいな印象も受けます。世の中に評価されたのは、その料理店の持つ優秀な料理人、そして秘伝のレシピに基づく料理なわけですが、人気を受けて人を増やし、マニュアル化して大々的に展開してしまうと、個々のクオリティが低下して結果的に平凡的なものになってしまうことがあります。任天堂は、そうした状況を危惧している感じに見えます。

外部から見れば、「今やればもっと儲かるのに」と思うことがあっても、会社としてのクオリティを維持するためあえて我慢する、こんな判断は社長でなければ下せないでしょう。そして、そうした判断ができる社長もいまどきそんなにいないのではないでしょうか。

他社にとっては貴重なビジネスチャンスか

逆に他社にしてみれば、任天堂に主導権を握られる前に、貴重なビジネスチャンスを得られるところでもあります。ただ、そのクオリティがどの程度のものになるかは、ハードの展開にも影響を及ぼすかもしれません。WiiやDSで任天堂が我慢しているところを他の会社が中途半端に実行して、その結果成功の目がしぼんでしまうと、プラットホームとしての展開はまずくなりますからね。

とはいえ、任天堂だけではすべての顧客を満足させきれないのは当然のことで、いかに他社と連携し、協力を仰ぎながら質の高いサービスを提供するか、この先も任天堂が取り組まなければならない課題でしょうね。