「2011年にはPS3がWiiを抜く」?〜iSuppli社の予測

年末年始はWiiFitで盛り上がり、その後のスマブラXにもつながり絶好調なWii。一方、PS3も値下げ以降は一定の売り上げを継続し、BD関連や新色発売などいろいろ景気のいい話も聞こえてきます。Xbox360は北米でのソフト売り上げは未だ強力ですが、じわじわPS3も近づいて来ているという感じですかね。

北米1月の販売台数はPS3Xbox360〜MSは品薄主張

ちなみに1月に限っては、北米でPS3の販売台数がXbox360を上回ったようですし。

1月の米ゲーム機・ゲームソフト売上高、前年比6%減=調査 | エンタテインメント | Reuters
ちなみに、MS側はこの結果を予測してか、「1月は品切れだった」みたいなコメントしています。

米国内で「Xbox360」の在庫が不足=マイクロソフト | エンタテインメント | Reuters

ただ、任天堂の様に前もって品切れをアナウンスするならともかく、1月の台数が判明した段階で「実は品薄だった」と発表するのは、あまり説得力が無い感じはします。(実際に品切れしているのかよく分かりませんが。)

まあ、もっとも商戦期を過ぎたタイミングで数万上回っただけですので、PS3Xbox360の本体台数差が急激につまる、というものでもなさそうですし、この程度の差ではまだ大勢に影響が出ている、という感じはしませんね。マルチだらけのHDゲームならばなおのことです。

2008年はPS3の方が売れる?トータルでも2011年にはトップ?

さて、そんな据置3機種なのですが、ロイターの報道で「PS3が2011年にWiiを抜く」と報じて様々なメディアで紹介されていますね。

08年ゲーム機販売、「PS3」が他機種を上回る伸びに=調査会社 | エンタテインメント | Reuters
2011年にPS3がWiiを追い抜く---iSuppli社が予測 - 産業動向オブザーバ - Tech-On!

この予測を出したのはiSuppliという調査会社だそうです。Tech-Onの記事の方を見ると具体的にグラフなどを見ることができますね。

この予測で気になるのが、そもそもの根拠が非常に曖昧な点です。PS3Wiiを抜く根拠は「コアなゲーム・ファンの支持により,PS3Wiiを上回る成長を遂げる」ということだけ。この理由だと、Xbox360も同じく伸びていくはずで、ちょっと根拠としては漠然としすぎていますよね。その根拠に基づき成長率を設定しているわけで、iSuppliの希望的観測の域を出ていないように感じます。

出展が不明確で定義が曖昧な数字(2/16追記)

さらにこのiSupplyのグラフで気になるのが、2006年と2007年の販売台数。すでに世界的にはWiiXbox360の総販売台数を抜かしているはずなのですが、このiSupplyのグラフで2006年と2007年を足すとXbox360が一位になってしまいます。これについて、各々公式出荷台数を元に検証してみたいと思います。

Wiiの発売以来の世界的な出荷台数は、任天堂のHPから参照することができます。

「2007年3月期 決算説明会資料」
「2008年3月期 第3四半期決算説明会資料」

こちらの資料の数値によれば、Wiiの2006年の出荷台数は319万台。2007年の出荷台数は1496万台で、2007年末までの累計出荷台数は1815万台になります。(任天堂の報告書では「販売台数」と書いてありますが、これは「小売りに販売した」という意味(セルイン)なので、出荷台数でそろえます。)

一方、Xbox360の累計出荷台数は、以下の記事で確認できます。

米マイクロソフト、「Xbox360」出荷台数が06年末で1040万台 | テクノロジー | Reuters
「Xbox360」の12月末時点の累計販売台数、1770万台=米マイクロソフト | エンタテインメント | Reuters

これによれば、Xbox360の2006年末までの出荷台数は1040万台。2007年末までの累計出荷台数は1770万台となっています。つまり、2007年末の時点で公式報告レベルですでにWiiの方がXbox360を45万台上回っているんですよね。

それでもXbox360Wiiを2007年の時点で上回っていたとするなら、それは実際の消費者に売れた数(セルスルー)での数値なのかもしれません。ただ、ヨーロッパのセルスルーはしっかりとは分からないはずなんですけどね。それに、累計販売台数であっても累計出荷台数であっても、2010年から2011年にかけてWiiXbox360の数字が減少しているのは明らかにおかしいですよね。

元の英語の文章では「installed-base」という言葉が使われているようですが、これをどうとらえるか、ですね。

TG Daily - Wii expected to surpass Xbox 360 installed base this year

実際にユーザが稼働している率だとするとこんなに高くはないでしょうし、購入したユーザが故障などで廃棄したかどうかなんて分かるわけがありませんし。2010年にXbox360Wiiは次世代機が登場し、販売がストップ、その後1年で故障する率でも使っているのでしょうか?どちらにしろ、予測を述べるなら述べるで、明確な根拠と正確な数字を提示して欲しいですよね。

予測の付かない将来像

もっとも、iSuppliの予想が当たるのか外れるのかはよく分かりません。ただ、少なくともPS3Xbox360をさしおいて世界的に独走して行くには、「コアゲーマーの支持」という理由だけでない、もっと他の要因が必要になるとは思いますね。国ごとに売り上げの傾向に差があり、一方のハードに独占供給するメリットがほとんど無い以上、HDゲームのマルチ展開は今後も続くでしょう。(ファーストが多額の開発費援助したりすれば別ですが。)そうであるならば、本体の売れ行きの違いは静音性、オンライン機能、動画再生機能、そして価格という複数の要素での勝負になるわけですが、ハードの違いだけで、そこまで決定的な違いになるかは疑問が残るところです。

2011年というと、WiiXbox360だとすでに次世代機が見えてくるころ。日本でもアナログ停波になりますし、世代交代時期としては悪くないタイミングですよね。果たして2011年には据置ゲーム機業界はどうなっていますやら。