アメーバニュースに「任天堂がFF13を批判?」なる記事が掲載

昨年のネット流行語大賞として、「アサヒる」という言葉が選ばれました。これは、朝日新聞が「『アベる』という言葉が流行っている」と捏造くさい報道をしたことがきっかけで、その後もマスコミによる恣意的情報操作を揶揄する言葉として時々使われています。

ネット流行語大賞に「アサヒる」 - ITmedia News

ゲーム業界だと、ファミ通による偏向報道が有名ですが、今回別のメディアからなかなか強烈なニュースが出てきました。それは、ブログで有名な「アメーバ」による以下のニュース記事です。

任天堂社長インタビューに「FF13批判か?」と波紋 - Ameba News [アメーバニュース]

情報ソースが明らかでない「FF13批判についての波紋」

まず、タイトルからして「?」という感じ。特に社長の言葉でFF13を批難する言葉など聞かれませんでしたので。本文を読んでみると、どうやら岩田社長の以下の発言を問題視しているようです。

――リモコンを振って操作するWiiは、体を動かす遊び方が売りですね。

 操作が簡単という意味ではDSの延長線上にあるが、リビングに置くという点がはっきり違う。大画面テレビが増える中で、どういうゲーム機を作れるか。高精細なグラフィックや壮大なストーリーを目指すという選択肢もあったが、それではゲーム人口は増えない。出した答えが画面に入って本当にスポーツをする感覚で体を動かす、体感型のゲームだった。
asahi.com:任天堂社長「ゲームの敵だったお母さんが買ってくれれば」 - 関西

上記引用部の太字部分が、問題の箇所のようですが、これは別に今言い出したことではありません。Wii発売前、それどころかDS発売前から発言していた内容です。この発言自体も、あくまでそっちの方向を否定するわけではないが、よりゲーム人口が増える方向を目指した、という趣旨だと思われます。(実際のところは、性能勝負でガチでソニー・MSとやりあっても勝ち目が薄い、という背景もあると思いますけど。)

当時からこうした岩田社長の発言は、高性能路線を支持している層などから批判の声は上がっていましたので、急に降ってわいたという印象はありません。また、少なくともこのインタビューを機に「任天堂FF13を批判している!」などという騒動が起きているのを見かけたことはありませんでした。

唯一、FF13に絡めて批判しているとすれば、以下のソースでしょうか?

痛いニュース(ノ∀`):任天堂社長「高精細なグラフィックや壮大なストーリーではゲーム人口は増えない」

ただこちらのソースでも、ピックアップされた>>7の書き込みで「FF13批判か」という記述があるだけで、その後はFF13とは関係無しに「任天堂の路線についての妥当性」について賛否両論議論が行われている形。このソースを持ってしても「『任天堂FF13を批判』と波紋」とするには、いささか無理があるように思われます。

不確かなソースをもってして、あたかも流行っているかのように見える見出しをつけているわけが、こういうのを「アサヒる」と言えばいいんでしょうかね?「詭弁のガイドライン」で言えば「5.資料を示さず持論が支持されていると思わせる」に該当する形でしょうか。

珍しい「匿名任天堂社員」のコメント

また、このニュース記事では、これまであまり見かけたことのない「匿名の任天堂社員」によるコメントが載っています。これは非常に珍しいことですよね。

任天堂の場合、特に岩田社長が就任当初、GCに関する発言がマスコミに曲解してとられて苦い経験をした背景があり、マスコミに出す発言については非常に神経をとがらせているように思います。自社のインタビュー記事などは、出来る限り自社のサイトを使って情報を掲載します。「社長が訊く」シリーズなどがそうですよね。

Wii.com JP - 社長が訊く『Wii Fit』

また、経営方針説明会なども動画で毎回公開し、その質疑応答についても後から文章化してウェブに掲載しています。

任天堂株式会社 経営方針説明会 質疑応答

実際、他のメディアが自分なりの解釈で書いたものと、任天堂が公開した詳細なものでは、微妙にニュアンスが異なっていることもありますし、「正しく自分たちの言葉を伝える」という事について努力を惜しんでいない感じですね。

任天堂の場合、担当レベルの社員の発言さえ、公式のHPで記事にしたりしています。

Wii.com JP - 開発スタッフが語る『Wiiショッピングチャンネル−プレゼント機能−』の話。

公の場に積極的に発言を出していくのと合わせて、徹底して曲解されないようコントロールする、それが自分の任天堂に対する印象でした。

それに対して、このアメーバニュースの記事は「任天堂で開発の中核に携わる社員」という、非常に匿名性の高いもの。その発言も、明らかに口調が鼻につくようなものになっています。そもそも、任天堂の社員が匿名でマスコミの取材を受けるということ自体不自然ですが、もし社員の発言だとしても、文章化する際にわざとかんに障る記述をしているのではないかと、疑いたくなります。そもそも、冒頭が「任天堂FF13批判」で始まっているニュースですしね。

任天堂VSゲーマー」という構図を演出?

結局のところ、最後に引用されている「ゲーム雑誌ライター」の発言の部分が、この記事の根底にある考えなのでしょう。

「ゲーム通の共通の認識として、『任天堂の“お手軽ゲーム”は本気で楽しめない』という意見はあるんじゃないでしょうか。確かに、任天堂が女性や子供に受けるゲームで売り上げを伸ばし、我々のようなコアなゲーマーを切り捨てるのは勝手です。しかし、社長や社員の話を聞く限り、『ゲーマー向けのゲームに未来はなし』といったような意識を彼らが抱いているような気がして、悲しいかぎりですね」(ゲーム雑誌ライター)。

この発言自体が、アメーバニュースに極端に記述されている可能性もありますね。マリオギャラクシーゼルダなど、任天堂のゲームでもゲーマーから支持されているゲームはいろいろあります。また、脳トレをスコアアタックととらえて楽しんでいるゲーマーもいますし、共通認識と言い切るのは語弊があるのではないでしょうか?

また、「コアゲーマー切り捨て」という批判もされますが、じゃあファイアーエンブレムやDSで出た「ASH」などはコアゲーマー向けじゃないんですかね?どうもファミ通などがよく使う「ゲームらしいゲーム」といい、今回の「ゲーム通」という言葉といい、ほとんど「PSで出ていたようなゲーム」と同義のような感じもするんですよね。任天堂のゲームは、たとえコア向けであったとしても、PSでは出ていなかったためPSゲーマーにはなじみは薄く、結果的に「ゲームらしいゲームではない」と見なされているように思えてなりません。

アメーバニュース自体、普通の一般マスコミと違い、ネットとかで話題になっていること、それこそブログで一部盛り上がっているような事でも普通に報じてしまうような、ようするにスポーツ新聞的・俗なニュース媒体。ですので、あまり高いことを望んでも仕方のないことなのかもしれませんが、一応は会社の名前を冠してニュースを出しているわけですから、それなりに語弊の少ない形で報道してほしいところです。

「アンチ任天堂」な層をどれだけとりこめるか

とはいえ、確かに任天堂の躍進により、ゲーム業界における中心的存在がコアなゲーマーから、ライトなゲーマーにシフトしています。これまで大量にソフトを購入し、ゲーム業界を支えていたという自負のある人たちから見れば、自分たち好みのゲームよりもライト向けゲームが重視して発売される現状に不満を感じているのも事実でしょう。

コアなゲーマーは、相対的に数が減ったとはいえ、タイレシオを引き上げる存在であり、完全に無視できる存在ではありません。だからこそ、任天堂もサードとの連携を強め、モンスターハンター3を引き込んだり、自社でもコアなRPGで有名な松野泰己氏やモノリスソフトを取り込み、開発を進めている訳です。

ただ、ファミコンスーファミを知らない層だと、任天堂ゲームというだけで最初から吟味することもなく対象外にすることが、これまで当たり前だったわけです。そういった層に「任天堂のコアゲーム」を売っていくのは、今のライト向けCM戦略とはまた違ったアプローチが必要になってくるでしょうね。保守的傾向の強いゲーマーに対して、MSが「洋ゲー嫌い」の克服を推進しなければいけないのと同様、任天堂も「任天堂ゲー嫌い」の克服の推進が必要になるのではないでしょうか?

ライト層の取り込みではWiiが主導権を握った据置ゲーム機ですが、コア向け、オタク向け路線はまだまだPS2PS3Xbox360と分散傾向が見られ、予断を許しません。この先、こうしたコアな層を任天堂が取り逃がすのか、それとも取り込んでしまうのか、任天堂の方策に注目したいと思います。


P.S.
今回のアメーバニュースがさらに痛いニュースで取り上げられたようです。

asahi.com:任天堂社長「ゲームの敵だったお母さんが買ってくれれば」 - 関西
痛いニュース(ノ∀`):任天堂社長「高精細なグラフィックや壮大なストーリーではゲーム人口は増えない」
任天堂社長インタビューに「FF13批判か?」と波紋 - Ameba News [アメーバニュース]
痛いニュース(ノ∀`):任天堂社員「ゲーム雑誌を開くと美少女アニメ絵ばかり。もはや我々の作るものと同じゲームとは思えない」 New!

なんという華麗なソースロンダリング