PS2互換機能付きPS3が1月末で出荷終了〜廉価版新型に一本化

販売台数で伸び悩みを見せるPS3。苦戦の最大の理由として価格が上げられていましたが、発売から1年して4万円を切る価格で新型PS3を販売。2007年11月の売り上げでは初めてWiiを上回るなどの成果を上げていました。

ただ、この新型はPS3の大きな特徴であったPS2互換性が除かれた廉価版であり、その点でも大きな話題になっていましたね。

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一応PS2互換機能のある60GB版、20GB版は併売されていたものの、これはこれで3種類のモデルが価格とHDD容量、そして機能とが微妙に異なる非常に分かりづらい状態。さらにSCE自体も価格では新型PS3をアピールしながらカタログやポスターでは旧PS3PS2互換機能をアピールするなどなりふり構わぬ展開を見せていたため、ネットではいろいろと苦言が呈されていました。

そんなPS3ですが、本日PS2互換機能付き旧PS3の出荷が今月末に終了することが発表され、大きな話題となっています。

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PS3国内販売におけるこれまでの経緯

絶対王者PS2の光景として圧倒的前人気を誇っていたPS3。しかし、E3 2006で発表されたときにはHDMI無20GB版でも6万円越え、60GB版は7万円越えという想像以上の高価格で、大勢の人が声を失いました。

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その後、東京ゲームショウ2006で約1万円の値下げが行われましたが、それでも20GB版で5万円とWiiの2倍、Xbox360に対しても1万円高価と、高い印象はぬぐえませんでした。

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そして発売時には青色レーザー製造難で台数がそろえられず、海外転売などの影響もあって「物売るってレベルじゃねぇぞ」という名言が生まれるほどの混乱が発生。しばらく品切れが続くも年明けには仙台ヨドバシで1000台用意したPS3が大量に売れ残り、日本全国のヨドバシで「緊急入荷」の名の下、在庫潤沢な販売が続くことに。

その後は、壊滅状態のXbox360に対しては圧勝ながらも、WiiSports&はじめてのWiiで好調に売れ行きを伸ばすWiiに対しては大きく差をつけられる状態が続きました。ただ、Wiiの方も9月以降初期需要が収まって売れ行きが落ちてきた2007/10/9、ついにPS3が新型投入で値下げが発表されました。ただ、上記で述べたようにこれはPS2互換機能無しのモデルで、今回の発表でとうとうこちらに一本化された形ですね。

赤字モデルの60GB・20GB版〜出荷終了は既定路線

今回の発表でPS2互換付きPS3の販売が無くなるということで、ネットでは非常に大きな反響が起きています。ただ、ゲーム業界の情報に詳しい人であれば、実は特別驚くようなことではなかったりします。

そもそも、当初の60GB・20GB版はPS2互換機能のためにPS2の主要チップであるEE+GSを丸々載せた非常にコストの高いモデル。久夛良木氏がE3での最初の価格発表で「安すぎたかも」という発言をして叩かれましたが、実際に本体コスト的には安すぎるぐらいの価格設定だったわけです。発売直前に1万円価格を下げたことで、まさに赤字だらけのハード。その後の売れ行きもいまいち伸び悩んだことから、その逆ざや構造のためにソニーの収益を圧迫するほどであり、この逆ざやをどうにかすることがソニーの至上命題だったわけです。

そうした経緯から、2007年3月の欧州発売モデルでPS2互換用チップのうちEEが無くなった「PS2低互換モデル」が発売。さらに北米でも2007年7月に同等の互換性でHDDが80GBのモデルが発売された際には、60GBと20GBのモデルが在庫限りである旨が報じられていました。

PS3 FAN || 北米PS3、60GB版は段階的に販売を終了

要するに、すでに半年ほど前には60GB・20GB版PS3の生産は止まっていたわけですよね。今回、北米から大きく遅れて日本で1月末での出荷停止がアナウンスされたのは、それだけSCEが日本向け需要を多く見込み、大量に生産して在庫を抱えていたということなのでしょう。日本でもようやく在庫解消の目処がついたので発表したというのが、一つの見方のように思います。

目論見通り?〜ネットでは転売・駆け込み需要発生

一方、それ以外にも「PS2互換機能付きPS3は今しか買えない」という意識を煽ることで、残る在庫の解消に勢いをつけるという目論見もあったかもしれません。

実際、今回の事態をうけてオンライン販売でのPS3は完売が続出。Amazonでも5%割引だったのが割り引き無しになり、ランキングでも7位に急浮上するような展開となっています。

あまりに急激な売れ行きを見る限り、いつかPS3を買おうと思っていた人の駆け込み需要だけでなく、将来的プレミアを狙った転売目的での購入も結構あるように感じます。もっとも、SCE的には転売屋に買われようと売り上げに計上できる「売上台数」に違いないので、問題ないのかもしれませんが。

新型PS3発売の時でも、TSUTAYAなどでは60GB版の方が売れたと報じられるなど、「PS2互換付きPS3が欲しい」と思っているPSファンも結構いるはず。そうした人たちに対して、今回の発表は背中の後押しとなった気はしますね。

今後の「PS2互換機能」の可能性は?

一応、SCEの言葉としてはPS2互換機能の削除は逆ざや解消が主目的ではなく、今回のプレスリリースでも触れられていますが「PS3プラットフォームの普及拡大のため」、という事になっています。PS2互換機能削除ではコストにあまり響かないとSCEAのトレットン氏も語っていますしね。

PS3のPS2互換機能廃止の本当の理由--SCEA幹部が語る - GameSpot Japan

また、PS2互換機能自体も、一応「要望が多ければ復活するかも」という発言はしています。ただ、わざわざチップのシュリンクに合わせて、基盤構成などまで大幅に見直してまでPS2互換機能用LSIを削ったのに、再度現在のPS2互換機能無しの設計を見直してコストの増えるPS2互換チップを搭載するというのは、ちょっと考えづらいところです。(PS3が順調に軌道に乗れば、コア需要を満たすためにコスト度外視でPS2機能付きモデルを少数用意など無くはないでしょうが。)

ただ、安易にPS2互換機能を復活させる方法が残っていないわけでもありません。それはすでにネットでいろいろ語られていますが、北米で展開されている80GB版の国内投入です。80GB版は先に述べたようにPS2互換用にGSだけ搭載され、一応PS2のソフトのいくらかは動くという「PS2低互換モデル」。40GB版一つに絞って一旦60GB・20GB版を売りさばいてしまい、その後で「ご要望が多かったのでPS2互換機能復活!」と言って80GB版を上位モデルとして売る、という戦略はたしかに考えられます。実際には、Cellのプロセスが80GB版はまだ90nmで古い設計なのですが、普通の消費者ではそこまで見抜けないでしょうからね。結構売れてしまう気もします。

「駆け込み需要」後の展開は

今回の発表で、とりあえずしばらくはPS3は好調な売り上げを上げるように思います。これまでもGCでのD端子出力削除など、ゲーム機本体の機能削減と言うことは何度かありましたが、今回ほどの「駆け込み需要」は発生していなかったのではないでしょうか。それだけ、PS2が偉大なプラットホームだったということなんでしょうね。

ただ、気になるのはそうした「駆け込み需要」後です。PS2互換が完全に無くなった後は、純粋にPS3タイトルだけの勝負になります。この状態で消費者に買ってもらうには、さらなるソフトの充実や値下げなどが必要となってくるように思います。はてなブックマークなどでの反応を見ても、今回の発表に対してネガティブな意見は結構出ていますしね。

はてなブックマーク - PS3、PS2互換モデル販売終了 非互換モデルに一本化 - ITmedia News

個人的にはPS2のアプコンに技術的興味はあるのですが、今のPS3のソフトラインナップでは手を出す気にならず、かといって様子見していたらPS2アプコン機能は消えてしまうという悩ましい状態ですね。新型PS3の方がCellがシュリンクされていて低発熱や静音性では上なだけに、本当はシュリンクPS3チップ+PS2チップという組み合わせが理想なんですけどね。「いつかPS3を買うかも」と漠然と構えていた消費者にとっては、なかなか難しい状況が続きそうです。果たして、市場はどういった判断を下しますやら。