メタルギアソリッド4、発売前に文化庁メディア芸術祭で優秀賞受賞

新型PS3発売し、エンターブレイン調査では3週連続Wiiの週販を上回り、11月月間でも据置トップになったPS3メディアクリエイト調査では先週の段階でWiiに抜かれており2週連続止まりですが、年末商戦に向けてまずは好調なスタートを切った感じです。

ただ、PS3の課題となっているのはソフトのラインナップ。今年はすでに真三國無双5とウイイレ2008というキラータイトルを切ってしまい、あとGT5Pがあるぐらいで、今後のソフト充実が必要なところ。そんなPS3の中で期待のタイトルといえばメタルギアソリッド4。今年の東京ゲームショーでプレイアブル出展し、本来は今年の年末年始のPS3目玉タイトルだったはずでしたが、その後クオリティ向上を理由に2008年第一四半期(2008年4月以降)に変更されています。

『METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS』 の発売時期について

そんな形で、まだ具体的な発売日も決まっていない、未完成な状態のMGS4な訳ですが、なんとこの状態で今年度の「文化庁メディア芸術祭」において優秀賞を受賞してしまいました。

平成19年度(第11回)文化庁メディア芸術祭 受賞作品 | 文化庁メディア芸術プラザ

たしかに、現時点でもMGS4はすごそうなタイトルではあるのですが、まだ完成したタイトルではありません。そして、今年度中に発売されることもないことは、上記で紹介したとおり。それなのに、なぜ今年度の選考で受賞となったのでしょうか?理解に苦しむところです。

発売前に表彰された過去の例

これまでにも、ゲーム関連では発売前に賞を受賞してしまうことは例はありました。例えば、この間の東京ゲームショーで授賞式が行われた「日本ゲーム大賞2007」でも「フューチャー部門」なるものがあってエースコンバット6やドラクエIXなどが受賞していましたね。

「フューチャー部門」受賞作品決定!! - 日本ゲーム大賞2007

これは一応CESA主催の物な訳ですが、発売前のソフトに賞を与えるという趣旨な訳でいろいろと裏を感じさせる物でもありました。このあたりはN-Stylesさんのところで詳しく分析がされていますね。

[NS] 日本ゲーム大賞の「フューチャー部門」の選考過程が気持ち悪い

一方、今回の文化庁メディア芸術祭についても、たとえば2004年には鬼武者3のプロモーション動画が優秀賞を受賞していたりします。以下のページで、贈賞理由なども掲載されています。

2004年 文化庁メディア芸術祭 エンターテインメント部門 「鬼武者 3 」 オープニングシネマティクス | 文化庁メディア芸術プラザ

ただ、上記のものは明確に「映像」というジャンルでの受賞なのに対して、MGS4の場合は「ゲーム」のジャンルでの受賞となっています。下記ページではまだ贈賞理由は書かれていませんが、果たしてどんな理由になるのでしょうか?

2007年 文化庁メディア芸術祭 エンターテインメント部門 優秀賞 METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS | 文化庁メディア芸術プラザ

ゲーム関係者・デザイナー・評論家

ちなみに、今回の「エンターテインメント部門」の審査員は以下の通り。

主査  : 水口 哲也(プロデューサー)
   
  河津 秋敏(ゲームデザイナー)
  田中 秀幸(アートディレクター)
  福井 信蔵(クリエイティブディレクター)
  桝山 寛(コンテンツ・プロデューサー)

開催概要 | 平成19年度(第11回)文化庁メディア芸術祭 | 文化庁メディア芸術プラザ

水口氏は元セガで現在Q ENTERTAINMENTでゲーム開発をしていますし、河津氏はスクエニでFF関連の中心人物。この二人はゲームに詳しい人ならご存じでしょう。

水口哲也 - Wikipedia
河津秋敏 - Wikipedia

続いて田中氏は、『スーパーミルクちゃん』などで個性的なデザインを手がける方のようです。

田中秀幸 (アートディレクター) - Wikipedia

福井氏はウェブデザインなどで有名な方のようですね。今回の文化庁メディア芸術のページでインタビューが掲載されています。

Entertainment Meister - Vol.3 福井 信蔵 インタビュー | 文化庁メディア芸術プラザ

最後に桝山氏は「テレビゲーム文化論」などで知られたメディア研究者のようです。

テレビゲーム文化論―インタラクティブ・メディアのゆくえ (講談社現代新書)

テレビゲーム文化論―インタラクティブ・メディアのゆくえ (講談社現代新書)

桝山 寛 Hiroshi MASUYAMA - who's who

以上のメンバーを見ると、ゲーム関係者とデザイナー・研究者という構成。この人達がどういった感性と基準を持って選考を行ったのか、非常に気になるところです。

「ゲーム」ジャンルで発売前に受賞することの意味

個人的には、「ゲーム」というジャンルである以上、未完成な状態での贈賞というのはいかがなものか、と思います。日本ゲーム大賞のものはまだ「フューチャー」という名前が付いていましたが、今回の優秀賞は「平成19年度」という枠での贈賞。一体、今年度の状態で「ゲーム」として何を評価されたのでしょう?東京ゲームショウのプレイアブルバージョンで評価されたのでしょうか?それともこの芸術祭用に特別のバージョンを審査員にプレイしてもらったのでしょうか?

少なくとも、現状「ゲーム」としては未完成、一般人もプレイしたのは東京ゲームショウ参加者だけ。完成度としても、ゲーム性としても今後ブラッシュアップされていくものです。完成してからの贈賞ではいけなかったんですかね?過去10年の受賞作品も基本的には完成したタイトルのようですし、この賞は今後の期待を含めたような形で送るべきではないのではないでしょうか。

一応、大賞としてはWiiSportsが受賞していますが、他にも今年発売されたゲームは多数あります。そうした、すでに完成して発売しているどんなゲームよりも、未だ体験プレイしかできないMGS4が素晴らしかったと言うことなんでしょうか。完成していることも、作品の一つの価値のように思います。何か、頑張ってゲームを完成させている多数のクリエーター達が気の毒にも思えますね。

正直、小島秀夫氏もプライドの高い人ですし、このような未完成の状態での受賞は快く思っていないのではないでしょうか?スポーツの例では、イチロー選手がこれまで何度か国民栄誉賞を打診されながら、「まだ現役だから」と受賞を辞退しています。小島氏も、「まだ未完成だから」という理由で受賞を辞退してしまっていい気もするんですけどね。その方が、小島氏の株が上がりそうな気もしますし。

国民が納得できる選考を希望

以上、個人的感想を含めて紹介してきましたが、今回の選考理由については今後コメントが出されることになっています。文化庁主催で税金を使って行っている事案な訳ですから、国民が納得できる理由を示して頂きたいですね。現状では、納得が出来ないところがありますので。

日本ゲーム大賞のフューチャー部門なんかは、バンナムエースコンバット6の宣伝道具として多用していましたが、今回は公的な賞。一企業の宣伝代わりに濫用されることが無いよう、分かりやすい選考理由の提示・賞の設定をお願いしたいものです。


P.S.
スラッシュドットでもこの件が取り上げられていますね。
スラッシュドット ジャパン | "発売前"の「MGS4」が文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞
また、コメント欄で情報をいただきましたが、今回の芸術祭の応募要項なるものも公開されているようです。
第11回 文化庁メディア芸術祭 作品募集
こちらの記述によれば、応募対象として「平成18年10月21日から平成19年10月5日までの間に完成または、完成作品として発表された作品」と書かれています。この記述と照らし合わせると、今回受賞したMGS4は一体何が完成されたバージョンなんでしょうね?