PS2互換性無し新型PS3発売 〜 関連記事あれこれ

2006年11月11日に発売されたPS3。BD用レンズなどの生産に手間取ったこともあり、ほとんどのショップで予約不可。なおかつ世界で一番最初に日本での発売と言うこともあり、海外からの転売屋も押しかけて発売日は暴動寸前の混乱ぶりとなり、「物売るっていうレベルじゃねぇぞ」という名言が生まれたりもしました。

そんな大盛況の発売からちょうど今日で一年。発売日になってPS2互換性が完璧でないと発表したり、独占だったタイトルがゾクゾクと延期やマルチ化。一方でライバルのWiiはWiiSportsの爆発的ヒットで瞬く間に売上を伸ばし、この一年ですでに200万台以上、3倍近い差をPS3につけている状態に。さらに最近ではHDゲーム機としても1年先行でソフトが増えてきており、海外での好調もあって徐々に注目を集めているXbox360に週販で抜かれるなど、PS3をとりまく状況はあまり好ましくありません。ソニーの決算でもエレクトロニクスの好調をゲーム事業の不調がかき消す形になっており、PSの父・久夛良木氏もついに降板、新社長・平井氏の元、ゲーム事業の立て直しを図っているところです。

そんな中、本日発売された新型PS3。値段はついに4万円を切る価格となりましたが、一方でPS2互換性を持たないことでいろいろと論議を呼んだモデルでもあります。以下、新型PS3に関していくつか話題を取り上げてみたいと思います。

初日販売動向〜行列は特になし

まずは、初日の販売動向から。以下にマスコミでの記事を紹介しておきます。

【レポート】新プレイステーション 3ついに発売!! - 小雨の振る中、秋葉原の販売状況は? | ホビー | マイコミジャーナル
新モデルのプレイステーション3発売を記念して、都内量販店でソフト体験イベント / ファミ通.com
SCEJ、新「プレイステーション 3」発売。「DUALSHOCK3」も人気
SCEJ 新型PS3発売、有楽町ビックカメラなど量販店でイベントを実施 - GameSpot Japan

あいにくの天気と言うこともあってか、開店前の行列は生じなかったようですね。(ちなみにファミ通の記事(魚拓)で新型PS3の価格が33980円と書かれていますが、まあファミ通にはよくあることです。)

売れ行きとしては、新型PS3の売上ですが、初日で売り切れと言うことは無かった模様。まあ、各種量販店でも予約を取っていましたし、かなり潤沢な出荷はされていたのでしょう。ただ、この1日だけで4万台ほどの売上が上げられたか、というとちょっと微妙な印象も受けますね。Wiiを週販で越えるのは、来週まで持ち越しになるかもしれません。

むしろ同日発売のDUALSHOCK3の方が好調だったようですね。元々振動が付いていなかったこともあり、PS3ユーザーからはあまり振動をそこまで必要視している意見は聞こえてきませんでした。別売りで5500円もすることからそこまで売れないだろうとは思っていたのですが、これはちょっと意外でしたね。2プレイ用のコントローラとして使うことも意図して購入、ということなんでしょうか?それとも、やはり「ゲームに振動は必要」とPS3ユーザーも思っていたということですかね。

自分も前から振動好きで、Forza2などをプレイしていて路面状況の変化をリアルに振動で感じられることもあり、振動機能は非常に重要なものだと思っています。次世代機で唯一振動が標準装備で無かったPS3で、新型にもDUALSHOCK3が同梱されず、振動機能の浸透が進まないことを危惧していましたが、なんとかDUALSHOCK3がたくさん売れてくれるといいですね。

新型PS3に対するSCEの思惑

さて、今回発売されたPS3の特徴はなんと言っても「PS2互換性なし」。先代久夛良木氏が「文化」とまで言い切った互換性ですが、先日掲載された平井氏のインタビューによれば、PS2互換性を切ったことはコスト削減とPS3ソフト販売促進のためとのこと。

「新型PS3の秘密」と「これからのPS3」− SCE平井社長に聞く39,980円の理由 - 西田宗千佳のRandomTracking

さらに、PS2互換性を持つ従来PS3は販売を継続するも、現在はすでに生産していないと語っています。「需要が盛り上がってくるようならば、生産を検討」と平井氏は発言していますが、果たして本当かどうかは疑問が残るところです。従来PS3を生産するためのラインを工場内に残して眠らせておくのは非効率的ですし、今後新型PS3ベースでPS2互換性をつけた新基盤を設計するのも非常に大きなコストがかかります。

もちろん、これまで生産してきたのだから、その気になれば再生産出来ないことは無いでしょうが、多大な巻き戻しコストを生じてまで再生産するかどうか。経営健全化のためにカツカツの努力をしているSCEの現状から見れば、基本的には従来PS3は現在の在庫限りという可能性が高いと思われます。ただ、今回の発言を聞く限りではまだ十分な在庫が残っており、当分併売が続きそうな感じですけどね。

また、上記インタビューでは新型PS3の4万弱の価格についても面白い発言をしていますね。

「ここで、“自分たちの経営健全化のために800万台で抑えます”と言った瞬間に、サードパーティの方々が、“じゃあそのくらいの台数なら、このソフトは供給しないでおきます”、“マルチで考えていたんですが、PS3版は発売を遅らせます”と判断してしまう可能性が出ます。こういうネガティブな要因を出してしまうと、5年後の台数が少なくなってしまう可能性がある。現在、短期的な経営健全化を求めることで、5年後に大きな差が出てしまう可能性があります。そういう経営は、私は採りません」。

要するに、本体売上が伸びないとサードのマルチソフトがXbox360先行にされてしまうという危惧があり、そのために戦略的価格で勝負に出ている、という感じです。日本では、むしろマルチソフトはアクティビジョンローカライズPS3のみに絞っていることもあり、PS3の方がXbox360より先行している印象もありますが、世界的に見るとそうでも無いのかもしれません。こうした発言が出ると言うことは、平井氏はおそらくリアルにEAなどの大手サードからこうした趣旨の発言を受けているんでしょうね。EAなんかは、第3四半期の売上の50%はXbox360で、PS3は約4%程度と、ソフトでは10倍以上の差が付いている状態ですから、無理もないという感じですが。

EA's Q3 revenues led by Xbox 360 - Joystiq

PS3の今年度の第一・第二四半期での全世界売上台数は今のところ約200万台となっています。今年度1100万台達成するには、残り半年で900万台売る必要があり、現状ではかなり難しい状況だと予想されています。

ハードウェア売上台数 | 会社情報 | ソニー・コンピュータエンタテインメント

しかし、この目標が達成できず800万台程度にとどまると、この先PS3のマルチソフト発売に影響が出てくる危険性がありそうです。新型PS3の売上は、既存PS3ユーザーにとっても、今後のソフトリリースという点で非常に重要な意味を持ってきそうですね。

新型PS3本体詳細 〜 「ポケットニュース」で分解記事

さて、新型ゲーム機の発売となると、一部で注目されるのは分解記事。PC Watchが老舗ですが、最近ではTech-Onやユーザーレベルでの分解レポートも出始め、なぜかスピード勝負な面も出だしています。

そんな中、いち早く分解記事をアップしたのが、ポケットニュースさん。PS3の詳細な紹介やWiiの自作ワイヤレスバーなど貴重な情報を数々提供されていますが、今回も分解記事一番乗りを果たされた形です。

ポケットニュース: 速報!PC Watchより早く新型PS3分解したよ その1
ポケットニュース: 速報!PC Watchより早く新型PS3分解したよ その2
ポケットニュース: PC Watchより早く新型PS3分解したよ その3
ポケットニュース: 新型PS3分解したよ その4

一見して、まず基盤の大きさが2/3ぐらいになり、搭載されているチップも減っていますね。旧型ではどーんとCellやRSXと同じ大きさであったEE+GSが綺麗に無くなっているのが分かります。また、電源もガワが金属からプラスチックとなり、搭載されているコンデンサも大幅に減っています。このあたりにコスト削減の跡が見受けられますね。あと、冷却用の大型ファンも、旧型ではヒートパイプとの組み合わせだったのが、ヒートシンクとの組み合わせに変わっています。チップのシュリンクやEE+GSの削減などで発熱が減った結果、冷却機構も簡素化して軽量化・低コスト化が出来ている感じですね。

さて、一方出し抜かれた形のPC Watchですが、一応簡易的なレポートは上がっています。

「新型PS3 CECHH00」ファーストインプレッション

こちらは、パッケージの紹介と外観の違いなどの紹介に加え、最後にワットチェッカーを使って電力の差を検証しています。これによると、本体起動したアイドル状態で旧型では174W、新型で107W。先日の「続・「Xbox 360バリューパック」ハードウェアレポート」でのXbox360のアイドル時は旧型153W、新型103Wでしたので、Xbox360とほぼ同等にまで持ってきた形ですね。1年の差が有りながら同等まで持ってくるあたり、さすがは技術のソニーといった感じです(まあ、機能削ってチップも削ってはいますが)。

分解記事は明日アップされると言うことなので、そちらも注目ですね。Xbox360のときはグダグダしたところがあったので、今回は時間をおく分、クリアで分かりやすい、プロから見た充実の記事を期待したいものです。

まとめ〜今後のPS3を占う新型の動向

以上、新型PS3に関連して、初日動向、新型に対するSCEの意図、そして本体レポートについて紹介してきました。現状、ビジネス的にいろいろとヤバイ状況にあるPS3にとって、この新型PS3の動向は非常に重要なものとなるでしょう。今までの、「何でも出来るけど高い」という状態から、PS2非互換という大胆な決断をしてコストを削減し、勝負に出たPS3。果たしてこの決断が吉と出るか、凶と出るか。消費者の中でのPSに対するブランドイメージがどの程度強くあるのかをはかるバロメータになるかもしれませんね。とりあえず、今週、来週あたりの新型PS3販売台数に注目です。