DS用ワンセグチューナーついに登場!〜その名も「DSテレビ」

携帯機のニンテンドーDS Lite、据置機のWiiと双方が好調な任天堂。一方で、過去に公式に発売を宣言しながらずるずると発売を延期したり、そもそも発売するかどうかも怪しいような項目もあったりします。代表格としては「DVD再生機能付きWii」と「DS用ワンセグチューナー」、少し古いものを入れれば「ゲームボーイミクロフェイスプレート」でしょうか。

そうした任天堂の公約未実行項目のうち、DS用ワンセグチューナーの発売が、本日の中間決算発表で発表されました。

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以下、発売までの経緯や実際のチューナーについて、いくつかコメントしてみたいと思います。

発表から発売までの経緯

まず、製品の詳細に触れる前に、これまでの経緯を振り返ってみたいと思います。

DS用ワンセグチューナーは約1年8ヶ月前の2006年2月15日に発表されました。旧DSが脳トレどうぶつの森・マリカで年末年始に爆発的に売れ、DS Lite発売が目前に迫ったときであり、まだ市場でワンセグ視聴できる端末もあまりなく、そのインパクトは相当大きいものでした。

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しかし、その後はぷっつりと情報が途絶えます。そうしている内にまずPC用ワンセグUSBチューナーがブレイク。1万円程度で手軽にテレビ視聴ができるということで、量販店などで多数売られていましたね。

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また、携帯電話もデジカメに続くトレンドとして各社・キャリアが一斉に携帯電話に搭載を始めます。もともとワンセグという規格自体が、携帯端末での地デジ視聴を想定して定められた規格で、解像度やデータ放送の表示方法の仕様なども多分に携帯電話を意識したものですので、これは当然の流れだったことでしょう。

そして、挙げ句の果てには新型PSP発売にあわせて、PSP用のワンセグチューナーが発売。薄く、軽くなった新型PSPと共に好調な売り上げを見せていました。

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そんな感じで、正直DS用ワンセグチューナーはすっかり存在感も話題性も失った状態となっていました。もっとも、ワンセグチューナーを出さなくてもDS Liteはゲームによる市場拡大で絶好調でしたし、任天堂的にもそれほどワンセグチューナーに固執するところも無かったのでしょうが、一応ワンセグチューナー自体は開発が進められており、先日の株主総会では株主に対して試作品が公開されていました。

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この段階で、すでに2アンテナ版だったようですので、おそらく今回発表されたものと同等のものだったのでしょう。この時点で「年内発売」がアナウンスされていたので、てっきり先日の「任天堂カンファレンス2007」の際に発表されるのかと思っていたのですがスルー。結局、第2四半期中間決算報告のあった今日の発表となった形です。

大型化&2アンテナ化された本体

さて、ここからは実際に発表されたチューナー「DSテレビ」について見ていきたいと思います。まずは一番目を引くのはその形状ですね。最初に発表された際はDSカードのところに差して突き出る形で、アンテナが一本のシンプルな形状でした。

初出時のDSチューナー

しかし、今回発表されたものはアンテナが2本になっているだけでなく、DSカードの部分から棒状のぐいっと伸びた形状になっています。正面からの画像ではあたかもDSの上画面のさらに上からアンテナが伸びているように見えますが、もう一つの斜めから透過状態で表示されているイラストを見ると、その棒状の部分がよく分かるかと思います。

発売されるDSチューナー

ワンセグチューナーの場合、実際に購入したユーザーから不満点と上がるのはその受信感度が多いと言います。自分もワンセグ携帯を持っていますが、屋内だとかなり電波の入りが悪く、たまに見ようと思っても全然映らなくてますます見なくなる、ということがあります。PCワンセグチューナーでも、最近は外付けアンテナや2アンテナ仕様にして受信感度を増した機種が多く出ていますからね。実際、そうした製品の方が受信感度テストでも好結果が出ているようです。

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DSテレビの場合もこうした受信感度を意識した仕様になっているわけです。ただ2本のアンテナだけでなく、棒状の部分が用意されているのはどういった理由でしょうかね?前の仕様のままで、アンテナの数だけ反対側に増やすという形でも対応できた訳ですから。PSPの場合、旧型にカスタムファームで装着してもノイズのせいで感度が落ちるということでしたから、「DS本体からアンテナを出来る限り遠ざける」という意味合いがあるのかもしれませんね。ちょうど外付けアンテナと同じような感じで。もっとも、別途外付けアンテナも付くみたいですけどね。あとは、「DSテレビ」という名称にあるように、古いアナログTVのイメージを醸し出すという側面もあるかもしれません。

見るからに邪魔くさいこの棒状の部分ですが、一応折りたたむことができ、アンテナも収納することで思ったよりもコンパクトになるようです。ニュースサイトではあまり紹介されてませんが、任天堂の公式ページ「ワンセグ受信アダプタ DSテレビ」に画像が出ていますね。

ワンセグ受信アダプタ DSテレビ:本体写真

持ち運び用のカバーも付いているようですので、毎回取り外すならば持ち運びもそれほど問題ないのかもしれませんね。ただ、さすがにこれをつけっぱなしで持ち運びするのは難しそうで、完全に屋内用という感じですが。

独自のメモ・字幕録画機能も〜データ放送・録画機能は無し

形状以外の機能ですが、基本的にはワンセグ放送の視聴は普通にできます。解像度については、DSのディスプレイがそもそも256×192なのに対して、ワンセグは通常16:9で320×180。両端をカットして表示するパンスキャン表示であれば元映像から縮小されることはありませんが、上下にスペースをいれて全体表示するレターボックス表示だと実映像領域は256×144となり、一回り小さい解像度に縮小されることになります。もっとも、ワンセグ放送自体低ビットレートで圧縮され、高周波領域がつぶれてボケボケの状態。この程度の画像縮小ならほとんど差はないとは思いますけどね。DSのゲーム画面同様、多少ドットのガタガタが見えるかもしれませんが。

その他の機能として、デジタル放送の特徴であるデータ放送機能は対応していないとのこと。まあ、たしかにデータ放送表示はほとんどWebブラウザと同じですからね。携帯電話であればソフトで簡単に実装できるでしょうが、処理性能の低いDSでは負荷が大きすぎると言うことでしょう。双方向通信がないのも、Wi-Fiがあるとはいえそれほど頻繁に使われるものでもないし、そもそも双方向通信自体ワンセグでそれほど活用されていないので、削除されているのも理解できます(放送業界の人は悔しがるかもしれませんが)。

その代わり、比較的処理負荷の小さいと思われる、字幕データの再生には対応してますね。字幕データとは、映像や音声とは別のデータとして放送波に載せられてくるデータであり、ワンセグでは結構積極的に運用されています。自分も、いちいちイヤホンするのが面倒でたまに字幕表示だけで音声オフでワンセグ見たりしますからね。この機能は重要でしょう。

それにプラスして、DSテレビでは字幕記録機能なるものもあるようです。ニュース番組などで流れている字幕を記録しておき、ニュース記事代わりにあとから見る感じですかね?もっとも最近では、ソニーワンセグウォークマンで搭載されていた機能で、PSPチューナーに続いてここでも先を越されている感じではありますが。

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その他、メモ機能やら生活豆知識みたいな機能もつく模様。このあたりは、データ放送に対応しないところの補充といった感じですかね。

値段は6800円・発売日は11/22でオンライン販売のみ

さて、このDSテレビの販売ですが、これまでのニンテンドーDSブラウザーWi-Fi USBコネクタのように、ネット専売の形式を取るようです。正直、ワンセグチューナー程度なら使い方も難しくなく、普通に市販してもいいと思うのですが、この手のゲーム以外の追加デバイスは基本的にネット直販というのが任天堂のスタイルなのかもしれません。顧客を任天堂が把握でき、サポートしやすいですからね。ただ、市販されない分、気軽に買いづらいのも事実。もっとも、DSブラウザーやUSBコネクタも現在は大手量販店では発売されていますし、そのうち市販されるとは思いますけどね。

値段は6800円(税込)。送料も込みというのが、Wi-Fiコネクタなどと違うところですね。2006年6月の発表ではDS Liteの半額程度、8500円前後で発売と言われていただけに、それに比べれば安くなっている感じですね。

ニンテンドーDS用ワンセグチューナは1万円以下

これは、多分にPSPワンセグチューナーを意識したものだと思います。PSPワンセグチューナーが6980円ですので、それよりも安い値段にしたのだと思います。実際にコスト的な面を考えるのならば、PSPのチューナーがアンテナ1本のシンプルな構造に対して、DSテレビは上記で説明したようにアンテナ2本で凝った作りになっています。また、PSPが本体にH.264デコード機能を持ち、純粋にチューナーモジュールだけ追加すればいいのに対し、CPUパワーの低いDSでは間違いなくDSテレビ側にH.264デコード機能が内蔵されています。

そうしたことを考えれば、PSPのチューナーよりもコストは遙かに高いはずです。下手をするとこの6800円という値段では利益がないぐらいかもしれませんね。公約したままずるずると発売が伸び、世の中にワンセグ機器もあふれてしまった今、安く売らざるをえないのかもしれません。ネット専売というのも、もしかしたら積極的に売るつもりはない現れだったりするのかもしれませんね。

まとめ 〜 家庭内モバイルテレビ需要をすくい上げられるか

以上紹介してきたDS用ワンセグチューナー「DSテレビ」。すでにワンセグ携帯があふれかえっており、発表当時ほどのインパクトはありません。ただ、今や一人一台感覚で所持しているニンテンドーDSでテレビを見れるということ自体の意義は、たしかに大きいとは思います。6800円という価格は、PC用のUSBチューナーよりも安いぐらいですしね。ですので、子ども部屋でのテレビ代わり、キッチンなどに設置するモバイルテレビ代わりとして、まだまだ潜在的な需要は眠っているように思われます。

とりあえず、ネット専売と言うことで、さすがに最初はかなり限定的な売上となることでしょう。あとは、市販されるようになってどうなるか、ですね。ワンセグ携帯は無駄に高いからいらないとか、そういった指向のある人にはありな製品かもしれません。ただ、その形状からして移動しながらの利用はかなり苦しそうですからね。果たして、どの程度家庭内モバイルテレビ需要を拾い上げることができるか、そこに注目ですね。

一応、今回は「DS用ワンセグチューナー」については約2年遅れで守った形になりますが、まだDVD機能付きWiiの件も残っています。ミクロのフェイスプレートも含めて、出さないなら出さないではっきりアナウンスして欲しいところですね。大部分で丁寧な対応をしていても、ほんの一部分の不手際で消費者は感情を害してしまうものなのですから。