任天堂カンファレンス2007 岩田社長講演 感想

モンハン3やらウイイレWiiやらで、すっかり日が空いてしまいましたが、一応任天堂の戦略の要となるものがいろいろと発表された任天堂カンファレンス2007について、主に岩田社長の講演について感想を述べてみたいと思います。

講演の動画およびスライドは以下のページから見ることが出来ます。

任天堂カンファレンス2007.秋 - IR Webcasting

文章として書き起こされたものとしては、ITmediaの記事が分かりやすくていいですね。

ITmedia +D Games:“ゲーム人口の拡大”戦略は第3のステップへ――任天堂岩田社長

毎度毎度、岩田社長自ら資料作成、情報ソースもちゃんと個々のグラフについて示し、スケールが変わったらその事にまで口頭で触れながら説明するところはすごいですよね。「感動度」とか訳分からない指標でアピールする人とはレベルが違う感じです。

購入者層の拡大と弱点

情報ソースとしては、これまで同様メディアクリエイトが多かったのですが、その中で任天堂が独自に東京と大阪で3000人規模で面接調査した購入者の比率などに関するデータが面白いですね。

特に、GBAGCが従来極端に15歳以下が多かったのに対して、Wiiでは25歳以上の購入者も同じぐらい多くいるというところ。また、Wiiであっても現状19歳〜24歳というのがぽっかりと穴が空いたように少ないのも特徴的です。

ここの年代が、いわゆる「PS世代」という事なんでしょうかね。PS1が出たのが1994年12月3日、ちょうど13年ぐらい前な訳です。そうすると、19〜24歳というのは6〜11歳の時と言うことで、まさしく「PSシリーズを買うだけで満足できた人」も多く存在するのでしょう。また現時点で見れば、19歳〜24歳といえばまさに大学生・大学院生と見事にかぶります。時間もあり、ファッションなどにも特に気を配る年代ですし、Wiiのライトな感覚、リモコンを振りまわすというかっこ悪さに対する拒否感が強いのかもしれませんね。逆に、25歳を越えてしまうと、過去に任天堂ハードを持っていた人も多いでしょうし、「リモコン=かっこわるい」という過度な拒否感は無くなっているのかもしれません。

また、世帯当たりのユーザー数と、ユーザーの女性比率というのも面白いデータです。他のハードが平均2以下なのにたいして、DSとWiiは3以上。女性比率もPS3Xbox360が1割程度なのにDSやWiiは5割以上というのも特徴的です(というか、このデータは任天堂が集めたものですけど、実は他社にとっても重要なリサーチ結果何じゃないでしょうかね?)。

女性割合、家族割合が高いことで、いわゆるい家庭における「サイフ」を握っている層に受けているのが、任天堂が好調な理由なんでしょう。「金を出すのは誰なのか?」をとらえた、理にかなった戦略だと言えるでしょう。逆に上記のように19〜24歳というのは自分でバイトも出来、一人暮らし比率も結構あって自由にゲームにお金を使える世代であることから、こうした任天堂の戦略とずれている部分と言うことなのかもしれませんね。

Wiiの残された課題「ネットとの関係」

次に、「WiiやDSは一過性のブームだ」という指摘に対する回答。これも、まずWiiで掲げた3つのコンセプトと、その達成具合とを比較して考察し、まだ達成できていない「ネットとの関係の変革」という点に取り組むことで、さらに継続的ゲーム人口拡大を図るとしています。

問題点としては「技術的・心理的不安」と、「ソフト不足」と分析。技術的な点については、NTT東日本・西日本と連携してWii専用のコールサービス、そして回線斡旋などを計画するとのこと。この辺も、ぼったくりをしようとしている訳ではないことを、口頭で断っていましたね。一見すると、Wiiに便乗したネット押し売りに見られかねませんし。ただ、メカ音痴な人は本当にこの手の設定は過度に嫌い、金で解決するならそれで頼むような人は結構いますしね。特に中高年の人だと。そうした人向けのサービスを用意するというのは重要でしょう。ゲーム会社らしいアプローチではなく、むしろプロバイダなどのアプローチな感じですが、同じ「娯楽」というジャンルから見れば、ゲーム機ということだけにとらわれていてはいけないということでしょう。

一方の「ソフト不足」についての方が、ゲーマーには重要な課題です。これまでニュース、天気、投票ぐらいしか無かったですからね。これに対しては、Wiiソフトのオンライン配信「Wiiウェア」、そしてDS体験版配信サービスを解としていますね。

ライト層の購入意欲を刺激する「Wiiウェア

Wiiウェアは、すでにPS3Xbox360で行われているダウンロード販売であり、目新しい要素では無いですが、Wiiにはかけていた要素であること、Wiiのユーザー層がライトで安価なソフトを好むことを考えれば、必要なコマであったことは確かでしょう。Dr.マリオなんかが出るのは、なかなか憎い展開ですね。携帯電話のライトなゲームに強い危機感を抱いていた任天堂が、DSでそうしたゲームの取り込みを狙ったように、Wiiウェアもそうした取り組みの一環のように感じられます。

また、単にライトなミニゲームだけでなく、ゲーマー向けアプローチも用意しているのが、自らの弱点を理解しているところでしょう。用意されたタイトルはFFCC。こっち関係は、任天堂はかなりスクエニに頼っている感じですね。冒頭で「DSではサードが5割になってきた」という紹介で触れたタイトルも、半分以上スクエニのタイトルでしたし。なんだかんだ言ってスクエニは従来ゲームの代表格、ということでしょうか。

Wiiの幅を広げる追加Wiiチャンネル

それ以外としては、Wiiチャンネルに「Miiコンテストチャンネル」、そして「みんなのニンテンドーチャンネル」があります。「Miiコンテストチャンネル」は投票チャンネルMiiチャンネルという感じですね。とくに、個人的に嬉しいのは、投稿されているMiiを自由に持ち帰られること。パワプロMiiだけのチームとか、観戦者とかに出てくるMiiなども、自分で作ったキャラだけじゃ飽きてきますからね。いわゆるMobキャラとしてのMiiを、フレンドコード登録とか関係なく自由に取ってこれるのはいい感じです。

また「みんなのニンテンドーチャンネル」は、店頭のDSステーションクラブニンテンドーを組み合わせたようなサービスですね。一つはゲーム情報の配信ですが、ここでは実際の購入者が1度だけそのゲームの評価や自身の情報などを登録できる仕組みが用意されるようです。また、同意があればゲーム履歴なども付随させることも可能とのこと。感じとしては、ゲーム感想サイト、mk2が組み込まれたような感じになる訳ですかね。ゲームを実際に持っていないと登録出来ない訳なので、アンチによる変な投票もなかなか難しいでしょうから、それなりに参考になるデータが見られるかもしれません。

また、発売前から公約されていたDSの体験ソフト配信もようやく実現。ここまで時間がかかったのは、DSステーションを置いている店頭に配慮したからか、と思っていましたが、純粋にソフト開発が間に合わなかったのかもしれませんね。どちらにしろ、DSのダウンロード配信は電源を切ると消えてしまうというもので、店頭でダウンロードしても、別のゲームをやりたいときに消さざるを得ないという欠点がありましたから、Wiiを使って何度でも家でダウンロードできるのは非常に大きいでしょう。できれば、ストレージ容量の問題を外付けディスクなどで解決し、Wiiソフトの配信も実現して欲しいところですね。

各種ソフトラインナップ

最後は、Wii向けゲームの説明ですね。「WiiFit」、「スーパーマリオギャラクシー」、「マリオ&ソニック北京オリンピック」と発表されます。マリギャラが11/1、マリオ&ソニックが11/22、WiiFitが12/1と、クリスマス商戦の前に間隔を置いて発売する感じですね。こうした前持った発売を見ると、クリスマスの主役は明らかにスマブラXだったように思うのですが、肝心のスマブラは1/24と、来年にずれ込んでしまいました。北米版も遅らせるみたいですね。ソニック参戦というのは、一つのインパクトではありますが、すでにマリオ&ソニックの件もありますし、そこまで驚きはなし(効果音がまさにソニックなのはニヤリとしましたけど)。

それよりも発売時期がずれたことの方が影響は大きいでしょうね。これは任天堂にとっても誤算だったでしょう。結局、クリスマス&年始のお年玉を狙う目玉タイトルとして、WiiFitマリギャラという事前に発売しておいたタイトルで戦うことになるわけですから。逆に言えば、サードとしてはチャンスなところだとは思いますけどね。現在のところ、12/13のナイツぐらい。まだ発売日が決定していないタイトルは、なんとしても年末年始での発売を狙った方がいいでしょう。せっかく任天堂が出してこない訳なので。

Wii発売・配信開始スケジュール / ファミ通.com

後は、今後出るソフトとして、「マリオカートWii」。ハンドルコントローラ+Wi-Fiと、基本的にはDS版の+α的な感じになりそうですね。ただ、新たにバイクも出るようなのですが、ハンドルコントローラーでバイクを操作するのは果たしていかがなものなんでしょうね?

それ以外はあの「モンハン3」があるわけですが、これは前に語っているのでここでは省略します。

「DVD再生機能付きWii」と「DS用ワンセグチューナー」は?

今回の講演で気になったのが、前々から公言されていた「DVD機能付きWii」そして「DS用ワンセグチューナー」についての言及が無かった点です。これらはゲームとはあまり関係なく、そもそも任天堂はこの手のAVにそこまで乗り気でないので、現時点で無理に発売する意味があるかどうか疑問は持つところはあるのですが、一旦出すと言ってしまった以上、延期なり中止なり、ちゃんとしたコメントをすべきです。

一応、DSワンセグチューナーについては別途「年内発売」について言及したようですが、大きな情報公開はされていませんし、実機のお披露目もありません。

任天堂、ニンテンドーDS用ワンセグ受信カードを年内発売 AV&ホームシアターNews

DVD再生機能付きWiiについては、なんの情報もなし。一応、下記のページで「2007年後半発売予定」と言っているのですから、ずるずる発表を伸ばすのでなく、出す気がないならさっさと発表して欲しいですね。これでは、明らかに発売できそうに無いのに2006年春発売を訂正しなかったPS3と、対してレベルも変わりませんので。

音楽CDやDVDビデオは再生できるの? : Q&A - Wii

まとめ〜無難な感じの講演

以上、講演を時系列的に追って見てきましたが、基本的には過去に自らが提唱したプロセスに対して、どういう成果が出てきたかを示し、足りない部分を追加していくという、今まで通りのしつこいぐらいロジカルな内容でしたね。

ただ、ゲーマー向けにモンハン3移籍という爆弾があった以外は、そこまでサプライズと言える内容もなし。年末商戦も実質マリギャラWiiFitで戦うことになり、DSで特に任天堂側の目玉タイトルはありません。ドラクエIVFFIV、レイトンなどが、一応主役になるのかもしれませんが、ちょっと寂しい感じもしますね。他のゲーム機もそこまで強烈なタイトルは無いですし。むしろ、3月の春商戦の方が大きな勝負になるのかもしれませんね。

とりあえず、目玉は一応WiiFitと言うことになるわけですが、果たしてこれがどの程度ムーブメントを起こせるか。バランスボード付きで8800円と、ある程度頑張ったとはいえ結構な値段がするわけですし、バランスボードもちょっと邪魔くさいイメージもします。WiiSportsのように同時に複数人がワイワイ楽しむものでも無いですし、柱としてはちょっとインパクト不足な気はするんですけどね。あとはどれだけマスコミ総動員してブーム的印象操作をできるか、でしょうか。