PS2互換無し廉価版PS3 日本でも39,980円で発売 〜 従来モデルも若干値下げ

先日紹介した、「欧州でPS2互換機能なし廉価版PS3発売」の件。日本でも年末商戦に合わせて投入、値下げがされるかなと思っていましたが、思ったよりも早くアナウンスが来たようです。

SCEJ、40GB HDDを搭載した新PS3発売決定。従来モデルは約5,000円の値下げ。「DUALSHOCK 3」も11月11日発売
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11月11日に新型登場、DUALSHOCK3も同時期に

投入されるモデルは欧州と同じで40GB版。そして、特徴的なのはやはり「PS2互換機能無し」ということでしょうね。値段は、欧州版の399ユーロからある程度予想されていたように39980円となっています(サンキュッパの方が頃はよかった感じですけど)。Xbox360通常版と同じ価格設定ですね。投入時期は11月11日と、約1ヶ月後。PS3の発売が昨年の11月11日ですので、ちょうど一周年記念の日に新モデルが投入される形ですね。

また、併せて新色「セラミック・ホワイト」が発売されることに。そして、DUALSHOCK3も11月11日に5500円での発売となります。ただし、新型PS3にはなぜかDUALSHOCK3は同梱されないので、注意が必要です。あと、新型PS3の発売に合わせて、従来発売されているPS3も在庫処分ということで値下げがされるようです。これは、北米や欧州と同じ流れですね。価格はそれぞれ44980円、54980円と、約5000円ほど下がっています。とはいえ、実売でも定価以下で売っていたところも多いので、こちらはそれほどインパクトのある下げ幅ではないかもしれません。

複雑になったラインナップ

しかし、今回の廉価版の投入で、ラインナップはかなりややこしくなったように思います。以下に、従来モデルとの比較表を載せておきます。

型番 CECHA00 CECHB00 CECHC00
HDD容量 60GB 20GB 40GB
価格 54,980円 44,980円 39,980円
PS2互換性 ×
無線LAN ×
メモリスロット × ×
USB端子 4 4 2
SACD再生 ×
本体重量 5kg 5kg 4.4kg
電源容量 380W 380W 280W
コントローラ SIXAXIS SIXAXIS SIXAXIS
黒or白

従来のPS3は、型番はあまり表に出しておらず、HDD容量だけで区別されていましたが、新型は最初から型番が公表されていますので、表にも載せてあります。こうしてみると、機能的にも価格的にも60GB版>40GB版となっていて、この二つは分かりやすいのですが、20GB版と40GB版とがスペックの食い違いが大きくて混乱する感じですね。

価格的には20GB版の方が高いのですが、HDD容量、および無線LANの有無では40GB版に負けています。ただ、PS2互換機能は20GB版はGS+EEを積んでいるのでかなり高いですし、新型ではこっそりはぶかれたSACD再生も対応しています。無線LANPS3PSPと連動でも使われるだけに、機能的には甲乙つけづらいところがありますね。発売当時はともかく、今は20GB版でも別途無線ルータやUSB接続メモリリーダを用いれば機能的には60GB版と差が無くなっていたわけですし。新型PS3から除かれているPS2互換機能は後から追加出来ませんからね。ただ、新型は40GBとHDD容量は多く、本体重量や電源容量が減っているところを見ても、内部のブラッシュアップはされてそうですけどね。

こうしたスペックのちぐはぐさを、果たして消費者にちゃんとアピールできるのかどうか心配なところです。新型PS3を買って、PS2ソフトを入れてもプレイできなくて苦情が出ると言うことは、結構起きそうな感じですね。少なくても販売店舗では、大きなPOPなどを用意して従来モデルとの違い、PS2互換機能の無さを分かりやすい形で説明する必要が生じそうです。SCEも、売れ行きに影響が出るかもしれませんが、できれば目立つようにPS2互換機能のないことを表示して欲しいですね。

不可解なDUALSHOCK3非同梱

あと、このラインナップをみて不可解なのが、新型PS3にDUALSHOCK3を同梱しなかったこと。正直、消費者からみれば新型PS3には当然DUALSHOCK3が同梱されると思うのではないでしょうか?だって、SIXAXISとわずか500円しか変わらない訳ですし。同日発売されて振動も付いているDUALSHOK3が同梱されないのでは、新型PS3を買った人がわざわざDUALSHOCK3なんて買うと思うんでしょうか?どうしても振動が欲しい人にとっても、新型PS3を買って、一度もSIXAXISを使うことなくDUALSHOK3を購入して使うことになるわけで、非常にばかばかしいように思いますね。

もっとも、新型PS3にはPS2互換機能がなく、現状振動を一番必要とするのはPS2ゲームです。そうした意味で、新型PS3には同梱しなかったのかもしれませんが、少なくともSCEの振動に対する入れ込みはその程度だということなんでしょうね。欲しい人だけ買えば?見たいな。

せっかくのDUALSHOCK3を標準化する機会だったのに、今回の新型に同梱しないのでは、PS3で振動機能が標準機能となる目は消えてしまった感じがします。ソフトメーカーはPS2時代にノウハウがあり、ソフトには振動機能は入れてくるとは思いますが、実際にユーザーがその機能を体感する割合は相当低いものになるでしょう。このため、振動機能をコア機能としては使えず、あくまで臨場感増すためのおまけ程度にしかならない感じですね。

PS3のソフトのみで勝負せざるを得なくなったSCE

今回投入された新型廉価版PS3PS3の深刻な逆ざや構造を考えれば、とにかく本体製造コストを抑えていくことは至上命題であり、早期の新モデル登場も理解できます。値下げをしなければ他社との戦いも苦しいですしね。

ただ、それによって今回、PS2互換機能の切り捨てという大きな仕様変更がされました。これは、かなり大きな方向転換となるでしょう。PS2はPS1の互換性とDVD機能で、PS1を持っていたユーザがDVDプレーヤ代わりで何となく購入するというケースがかなりありました。PS2は発売した段階で勝ちが決まっており、ソフトも付いてくることが決まっていたという安心感もありましたしね。

今回の廉価版は、そうした「何となくPS2」という層にとっては、かなり違和感を覚えるモデルになるんじゃないでしょうか。これまで持っていたPS2を単に置き換えるという形では、廉価版PS3を購入できないわけですからね。純粋にPS3のゲームソフトをプレイしたい、という動機が必要となるわけです。BDプレーヤとしては、現状レンタルもあまり無いですし、そこまでの需要は無いでしょうからね。

「何となくPS2」を買ってDVDプレーヤとして使っていたような層は、PS2ソフトの購入本数はさほど多くはないでしょう。ですので引き継げる資産もそれほど多くないと思います。ただ、むしろそういった低いタイレシオだからこそ、現状のPS3ソフトのラインナップを見て「本体買ってまでやらなくても…」と思われてしまう可能性もあります。

せっかく価格を安くしても、PS2互換機能がない分、純粋にPS3のソフトラインナップで「買いたい」と思わせる必要があるわけです。ここが、SCEに課せられた今後の指名ですね。現状ではSCE自身のファーストとして提供するソフトは、PS1の時ほど求心力のあるソフトを提供できていません。PS2時代にサードにソフトを任せっぱなしになり、ブランド力のあるタイトルを育てられなかったつけが来ている感じですね。後は、サードをいかに囲い込めるか、ということなんですが、スクエニバンダイカプコンコナミと、大手日本サードは軒並みマルチプラットホーム戦略をとり、特定のハードに依存しないソフト展開を進めています。このため「PS2だけ持っておけば大丈夫」という、PS2の時の状況とは大きく異なるんですよね。

今年の年末商戦の行方は?

今回の廉価版PS3の発売によって、年末商戦で一番影響を受けるのはXbox360でしょう。元々ゲームのラインナップもかぶっており、「HDゲームをするならPS3より安価」であることが売りだったわけですし。消費者は、とかく高い製品には「買わないですむ理由」を見つけて我慢しがちですが、現状真っ先に「買わないですむ理由」にされてしまう「騒音」と「故障率」も、これといった具体的な対策が打てていません。11/1には大量の名作プラチナ化と、独占タイトルAC6が発売され、ソフトラインナップ的には充実してきているだけに、PS3が値下げする11月にあわせて、熱対策版Falconをお買い得なパッケージで提供する戦略をぜひ打って頂きたいところです。

Wiiについては、正直PS3Xbox360との勝負とは別のステージで戦っている印象です。従来のゲーマーをいかにして獲得するかということも重要ですが、最近落ち気味の売れ行きを見ても、「新規顧客にいかにして飽きられないか」が最重要課題となっていると思います。これはDSの時も同じで、どうしてもライト層はゲーム機への依存は少なく、他の面白い娯楽があれば簡単に映ってしまいます。ですので、いかにして一般層が目を引くような、タイムリーなネタを提供し続けられるかどうかが鍵となるでしょう。まさに、TVのバラエティー番組的戦略という感じですかね。注目のWiiFitは、別途周辺機器を用意し、価格もそれなりにしそうなので、正直DSの時の脳トレほどの存在感にはなれないでしょう。明日の任天堂カンファレンスで、WiiFit以外にどういった戦略が示されるのかに注目ですね。

そして、最後に今回値下げしてPS3。国内ではXbox360への強烈なパンチになると思いますが、Xbox360はソフトがそろっているだけに、すでにコアなゲーマーが一定量いることがSCEとしても無視できない要素でしょう。それに、海外ではXbox360の方が強く、そのことが国内サードのソフト展開にも影響を及ぼしてしまっています。ですので、PS3は国内だけでなく、海外でまずXbox360と互角の勝負を行う必要があるわけです。今回製造コストを下げましたが、値下げも同時に行った分、逆ざやはそこまでは解消されてないでしょう。PS2互換無しモデルを早期投入したことで、日本でも将来的PS2互換の切り捨てがかなり明確となった今、購入客層は確実に狭められたように思います。そうした状況の中でも、SCEPS3事業を早期黒字化に持って行かないと、会社自体がソニーに切り捨てられる可能性があるので、厳しい展開が続きますね。とりあえず、来年爆発的に売り出すための弾を今の内にいかに仕込んでおくかが重要となってくるでしょうか。

3機種それぞれ特性が違い、世界規模でも売れ行きが異なることで、まだまだ先の見えない据置ゲーム機戦争。今年の年末商戦がどうなるか、注目です。