欧州でPS2互換機能なし廉価版PS3発売 〜 HDD40GBで399ユーロ

WiiXbox360PS3で激しいが繰り広げられている据置ゲーム機。現状は国内はWiiがダントツ1位でPS3が2番手、世界的にはWiiXbox360が1000万台越える状態で競り合っている感じで、PS3は未だ500万台ぐらいと苦戦が続いています。

苦戦の理由として、一番大きなものとして値段が高すぎるというものがよく言われているところです。ただ、PS3にはCell、BD、HDD、グラフィックスと高コスト要素満載で、現状でも逆ざや、赤字状態。ソニー的にもそこまで金銭的に余裕があるわけでもないので、そう簡単に値下げができないようです。先日の東京ゲームショウでも値下げが期待されながら、その発表はされませんでしたしね。

しかし、日本はそもそも昨年のTGS2006で発売前なのに1万円値引きされた状態。それに対して、北米では値下げなしで発売されたため、一度60GBモデルは100ドル値下げされています(ただし、在庫かぎりの処分価格扱いでしたが)。

PS3、北米で80GBモデル投入と60GBモデルの値下げ。日本では「予定なし」

また3月から発売されている欧州では、最初からPS2の互換性の低い、低コストモデルでの発売されていました。韓国や北米で発売されている80GBモデルも、同様にPS2互換性が低下したバージョンですね。

SCEE、欧州版PS3でPS2ソフトの互換性低下の可能性を示唆。“EE”をソフトウェア処理。日本版の仕様変更は未定

この低コスト版は、グラフィックチップにおいてPS2互換を司るEE+GSのうち、EEがハード的に除かれたものでした。これにより、本体価格はそれほど変わらないながら製造コストは抑えられ、PS3の逆ざや状態が少しは軽減できた感じですね。実際自分も、このPS2互換機能用ハードをとり、ソフトエミュレートに移行する流れは理にかなっていると思っていました。

わぱのつれづれ日記 - PS3における「PS2互換性」の重要性と展望について

しかしこの度、想像した以上の加速度を持って、次の段階へと動き出したようです。

欧州でGSも除いたPS3発売

今回発表されたのは、「欧州で40GB版PS3発売」というもの。欧州での発表でありながら、日本語でのプレスリリースも出ていますね。

「プレイステーション 3」新モデル欧州発売決定 HDD 40GB標準搭載 希望小売価格399ユーロ | プレスリリース | ソニー・コンピュータエンタテインメント

これまでの60GB版599ユーロから、実に200ユーロも安い399での発売。約3万3000円以上安いというのは、なかなかすごいですね。現在、欧州でのXbox360は20GB HDDの標準版が349ユーロ、コアシステムが279ユーロなので、これでも少し高い感じですが、HDD容量が倍であることを考えればほぼ互角な値段という感じでしょうか(もっとも、PS3はBD付きですけどね)。販売開始は10月10日からということで、ちょうど日本での任天堂カンファレンスの日にちというのは、何か意識したものがあるんでしょうか?

しかし、この40GB版PS3の大きな特徴は何よりも「PS2との互換性が完全に無し」となっていること。要するに、PS2互換用のGSもとっぱらい、ソフトウェアでのPS2エミュレートも諦めた、ということですね。

限界までのコストダウンのための唯一の手段

互換性はプレイステーションの文化」というのは、久夛良木氏が掲げたある意味PSを象徴する言葉でもありました。そして実際、前世代での勝者の流れをそのまま引き継ぐことができるということで、有効な手段でもあったように思います。それが、完全に無くなったモデルが出るということは、結構インパクトは大きいですね。PS3でも、久夛良木氏が非常にこだわっていた部分ですし(参考)。

とはいえ、よく考えると、現在のPS3の製造コストを下げる意味では、一番理にかなった方法だとも言えます。PS3の高コスト構成の要因としてはCell、BD、HDDというものがあるのですが、これまで発売しているPS3ゲームとの互換性を考えると、どれ一つ削ることはできません。これらを削るということは、それこそPS3プラットホームを一から仕切り直すということを意味しますからね。(もっとも、久夛良木氏の尻ぬぐいをしている形のSCE平井氏にしてみれば、むしろPS3の仕様決定からやり直させてくれ、とか思っているかもしれませんが。)

それに対して、PS2の互換性のために載せていたEEとGSは、実際にはPS3ゲームには一切使用していなかったため、「PS3ゲーム」には一切影響を及ぼしません。そうした意味では、PS3を安く販売する上では、現状この選択肢しか無かったということなのでしょう。40GB版モデルではその他にメモリカードスロットも除かれ、USBポートも4つから2つへと減らし、生産コストを少しでも下げようという努力が見られます。無線LAN機能が残されているのは、現在好調なPSPとの連動を残すためにははずせなかったという事でしょうか。

ちなみに、当然のようにこうした裏の理由はSCEは一切発言はしていません。今回PS2互換を無くした理由は以下の通り。

PS3®用ソフトウェアのさらなる開発強化とラインアップの充実に伴い、新モデルは「プレイステーション 2」専用ソフトウェアとの互換性を有しません。

まあ、SIXAXISで振動機能をはずした理由についても、特許訴訟があった件はおくびにも出さなかったSCEですから、当たり前の反応と言えるでしょうね。別にSCEがわざわざ自ら発言せずとも、昨今はそこら中のメディアが解説してくれますしね。

PS2互換打ち切り、今後世界中に派生?

今のところ、このPS2互換なしのモデルは、とりあえず欧州のみの発売となります。また、欧州では全てのPS3PS2互換性が無くなるのかといえばそんなこともなく、とりあえず現状の60GB版も販売は継続されるようです。とはいえ、この部分の表現もなんとも微妙です。

新モデルの導入に伴い、HDD 60GB標準搭載のPS3®にワイヤレスコントローラ(SIXAXIS)2個、自社制作のゲームソフトウェア 2タイトルを同梱したStarter Packを10月10日から499ユーロに変更いたします。このStarter Packは在庫限りの商品となりますが、引き続き60GBモデルをユーザーの皆様へご提供してまいります。

この文章を見る限りは、60GB版の販売は今後も継続し、その一部としてStarter Packを台数限定で発売する、というふうに読み取れます。ただ、そもそもこのStarter Packは7月に発表され、これまでの60GB版と同じ価格599ユーロでコントローラやゲームソフトを抱き合わせた、実質値下げモデルでした。

欧州PS3値下げせずに同梱版「Starter Pack」を発売 - PS3ナビ

現在の欧州で、わざわざ同じ値段で単体60GB版を買うような人はいないでしょうから、実質このStarter Packが通常版と考えてよいでしょう。そのStarter Packが100ユーロ下げられ、「在庫限り」の販売になる。これは、北米で値下げされた60GB版が同じく「在庫限り」という売られ方をしたことと非常にだぶりますよね。

異なる仕様を持つ本体を別々に生産を続けるということは、シングルモデルでの大量生産に比べれば製造コストは増大してしまうでしょう。いつになるかは分かりませんが、最終的にどこかの段階でPS2互換機能なしに統一されて行くであろう事は、今回の40GB版の発売で見えて来た形です。なにせ前述したように、PS2互換機能を取り除いたSCEの表向きの理由は「PS3ソフトの開発強化&ラインナップ充実」というポジティブなものな訳ですし。

やはり「PS初期型」はプレミアムモデルか

PS3の逆ざや構造は、ソニー本体を揺るがしかねないほど深刻なものですから、こうした製造コスト削減の流れは今後どんどん広がりを見せていくでしょう。日本で未だに初期型のPS2互換性の高いモデルが売っているのは、あとは販売不振により工場生産を低コスト版に切り替える前に作ったは初期型PS3の在庫が未だ残っているというこということでしょう。ソニーにとって、製造コストの高いEE+GS付きPS3を生産し続けるメリットはないですからね。世界で唯一Wiiに継ぐ第2位の位置を確保している日本市場だけに、初期型の在庫を捌く役目を任されているということなのかもしれません。

しかし、逆に考えてみれば、日本の消費者はPS2の互換性が高いPS3を、未だに自由に買えるわけです。しかも、PS3はCellのパワーを使った高性能なPS2アプコン機能を搭載しています。今後PS3からPS2互換が除かれていく流れだとすると、このPS2アプコン機能が最大限に生かされるのは、今、日本で発売されているモデルだけになるわけです。PS2のソフトは未だに週販売上でも度々上位にランクインしていますし、今後もPS2ゲームをやりたいと思っていてPS3ゲームに興味があるのなら、むしろ今こそPS3本体の買い時なのかもしれませんね。

Xbox360とのガチンコバトルの行方は?!

一方で、PS2互換を無くしたモデルでは、価格も下がることからより一層Xbox360とのガチな勝負を海外で繰り広げていくことになります。ゲームを重視するSCE平井社長の本気が感じられるところですね。特に、Xbox360でさえ数は少ないながらソフトエミュレートでXBOXソフトに一部に対応していたのに、40GB版PS3はソフトエミュレートも諦めてますからね。ソフトエミュレートのタメの開発コストすら削減し、本来のPS3ゲームにかけるということで、徹底した集中と選択を行っている形。だらだらとどっちつかずの停滞状態を続けることが日本企業の悪いところと言われていましたが、この大胆な舵取りはなかなかのものと言えるでしょう。

また、日本でも「PS2ゲームは手持ちの本体でやるから、少しでも安いPS3本体が欲しい」というユーザは多いでしょうし、このPS2互換無しPS3の需要も結構大きいように思われます。年末商戦でこの40GB版を39800円ぐらいでGT5PおよびDUALSHOCK3とパックして発売すれば、相当な数が売れそうな気もします。

とはいえ、やはり「PS2互換の切り捨て」という流れは、本当にソニーPS3がシャレにならない状態にまで追いつめられていることを印象づけられますね。まさしく正念場に立たされた状態。このガチンコ勝負の結果はどうなりますか。