風来のシレン3がWiiで登場

東京ゲームショウ2007まで後2週間と迫ってきましたが、それに併せて事前に各種大手サードメーカーがプライベート発表会などを行うと言うこともあり、東京ゲームショウ関連・年末商戦関連の情報がいろいろ出てきています。任天堂以外のソフトメーカーが主体となって行うイベントだけに、情報の出所もやはりお抱えマスコミのファミ通。そのフラゲ記事で、一部層にはかなりインパクトのあるネタがありました。それは、「風来のシレン3 からくり屋敷の眠り姫」がWiiで発売される、というものです。

Go Nintendo » Blog Archive » Shiren 3 Wii Famitsu pics- What are you waiting for?

風来のシレンといえば、古典的PCゲーム「ローグ」を基本としたランダムダンジョン探索型RPG。ローグやNetHackなんかはPCのコンソールなどでアルファベットと記号でプレイしたものでしたが、難易度は激ムズ。グラフィックを親しみやすい形にした「不思議のダンジョン」シリーズでも、シレンはとくに高難易度を誇っており、逆にその難度が中毒性を生んで相当ディープなファンを抱えている作品でもあります。

その最新作がWiiで登場というのは、なかなかインパクトがありますね。これまで、「Wiiにはサードのシリーズ物ナンバリング最新作がない」「外伝ばっかり」という批判をよく受けていましたが、とりあえず「風来のシレン3」で一つ前例ができた形ですね。

Wii風来のシレン3を出す意味

しかし、この風来のシレン3、コントローラとしては特にWiiリモコンのモーション認識などを使う様子はありません。中村光一氏のコメントを見ても「クラコン推奨」となっていますしね。デジタル的な項目選択には十字キーがアナログスティックより適してますし、ボタンも多用するならやはりクラコンがいいでしょうね。一応、リモコンだけ、もしくはヌンチャクスタイルでもプレイできるようですけど。その分、ネットワークについては色々ネタは考えられているようです。インタビューではまだ伏せられていますが。DSのポケダンでも、救援システムのようなものが導入されていたので、それらを発展させたものが導入されるんでしょうね。

さて、こうした要素を見てみると、これまでのWiiゲームのように「Wiiならでは!」というほどのものではありません。それなのに、なぜ風来のシレン3Wiiだったのか?それはシレンというゲームの持つ特殊性がある程度影響しているように思います。

まず、風来のシレンシリーズがPS1でもPS2でも出ていないこと。つまり、別にPSで築き上げたブランドではないんですよね。ですので、シレンを支えるコアなユーザとPS2ユーザとは、結果的に重なる部分があってもイコールではないわけです。ですので、比較的PS陣営以外から出すことも楽でしょう。

次に、風来のシレンシリーズが支持されているのが、美麗グラフィックやストーリー性というものでなく、純粋にそのゲーム性、完成度、やり込み度というところを支持されていると言うこと。これも大きいでしょう。PS2で売れたアクションゲームやRPGなどは、そのグラフィックそのものを売りとしたゲームがいろいろありました。こうしたシリーズの続編では、やはり売りとしてはグラフィックを押すことが必要となり、グラフィック的には劇的な差はないWiiでは続編は出しにくいところもあると思います。それに対して、風来のシレンでは、ファンの方もグラフィック最優先ではないことを理解しているでしょうから、純粋に新ダンジョン、やり込み要素などで勝負でき、Wiiでも続編としてなりたつわけです。

セガWiiにかける意気込み

ただ、上記のような条件で見るのなら、現状最適な据置での解はPS2のような気はしますよね。この辺は、ある程度セガの戦略も絡んできているのでしょう。セガはサードの中ではかなり任天堂と良好な関係を築いています。日本でWii実機プレイを最初に一般人に見える場所で公開したのも、実は任天堂ではなくセガでした。以下は去年の東京ゲームショウでのレポートです。

わぱのつれづれ日記 - 東京ゲームショウ2006レポート〜Wii編

このときは、それほどWii自体も会場では注目されておらず、PS3の方が勢いがある感じでしたが、セガは早い段階からWiiにも力を入れていた感じですね。

その後も、セガサターンの名作「NiGHTS」をWiiで発表。他にも宿命のライバルだったマリオ&ソニック北京オリンピックと立て続けにインパクトある発表を行い、任天堂支持を強くアピールしていましたね。元セガハードユーザで現任天堂ハードユーザの自分としては、まさに願ってもない展開な感じです。

もっとも、一部幹部はWiiに否定的だったり(「Wiiは時代遅れ、近く人気が薄れる」by 米セガサミー後に釈明)、PS3Xbox360にもバーチャファイターを提供するなど、任天堂だけに力を入れている、という訳ではありません。ただ、サードの中では任天堂への比重は高い印象ですよね。やはり、PSとはSS、DCとやりあって結果的に撤退に追い込まれた歴史があるだけに、そこまでPS陣営べったりではないところもあるのでしょう。

シレン自体は、チュンソフトの管轄ですが、チュンソフトは現在セガと協力体制をとっていますので、セガの意向も反映しているんじゃないでしょうかね。もっともチュンソフト自体、SFC弟切草かまいたちの夜セガサターンで街などを出していますし、元からPS陣営というかんじもしないですけど。

Wiiでの「クラシックゲーム」呼び込みの呼び水になるか

以上見てきた「風来のシレン3」のWii発売ですが、従来作品も販売20万本前後ということで、直接のWii本体牽引という意味ではそこまで大きいものではないでしょう。ただ、ライトで非ゲーマー向けというレッテルを貼られがちのWiiにとって、こうしたディープでコアなファンを抱える作品が出る意味は結構大きい感じはしますね。WiiSports&はじめてのWiiだけと言われながらもなんだかんだ言ってすでに、ファミ通・浜村氏の言う「本体普及の目安」である300万台は軽々突破、PS2を上回る勢いで今もPS3に3倍の差をつけて売れている訳ですからね。この普及台数がこれまでのゲーム、任天堂的に言えば「クラシックな」ゲームの呼び込みにもつながっているとなれば、現状PS2にとどまって様子見しているゲーマーの中にも、Wii購入に踏み切る人も出てくるでしょうから。長期的な傾向の読みづらいライト層だけでなく、定期的にゲームを購入する層の獲得することができれば、Wiiの優位性をますます高めることができますし。

もっとも、こうした様子見をしている人には風来のシレンだけではまだまだ決定打にはならないとは思います。他の続編物はPS3Xbox360でのマルチが大半でしょうし、上記で述べたようにそうした続編の売りを分かりやすく見せるためには、グラフィックの向上というのは効果的な手段な訳です。携帯機でDSが圧倒的に売れていながら、なんだかんだいってPSPも500万台以上売ってそれなりの市場を築いてしまったように、PS3Xbox360でも既存ゲームの延長という意味で一定の市場が築かれる可能性も十分あるんですよね。

Wiiが据置市場で一強になりたいのであれば、MSやSCEが市場を築く前に、ゲーム業界撤退にぐらいにまで追い込まないといけないでしょう。もしくはサードを抱え込んでWii向けばかりにゲームを作らせるとか。ただ、Xbox360は世界的に結構売れてしまっているだけに、よっぽどえぐい手でも使わなければそれも難しそうです。そうなると、既存ゲーマーについての奪い合いは、今世代のゲーム機戦争が終わるまでは続きそうな感じはします。既存ゲーマーがわずか数年で壊滅すれば話は別ですが、そうでもないでしょうし、Wiiの性能で満足できない人も影響力を持つ程度は存在し続けると予想しますので。(同領域でかち合うPS3Xbox360はどちらかが脱落するかもしれませんけど。)

もっとも、任天堂もすでに色々戦略は練っているでしょうし、状況によってはWii2的な互換高性能機を早期投入した争いもあり得るでしょうね。まあ、このあたりは各種ソフトメーカーがどういったソフトを提供し、ゲームプレイ人口をどのように拡大・縮小させていくかにも大いに左右されてきそうですが。

ともかく、まずは東京ゲームショウまでの各社の発表を楽しみにしたいと思います。