スマッシュブラザーズXに物理エンジン「Havok」が採用

次世代ゲーム機において向上された処理能力により、ゲーム性に影響を与える要素として注目されるものに「AI」、そして「物理演算」があります。「AI」は特に大量に敵キャラが出たときにそれぞれが個性的な動きをすることでリアリティや臨場感を高めることにつながり、物理演算もキャラクターが攻撃を受けた際の吹っ飛び方やぶつかり方、障害物の壊れる際のリアリティの向上などにつながります。また、PS3の「LittleBigPlanet」なんかは、ゲーム性の中心に物理演算を据えて注目されているゲームですよね。

こうした演算処理を多く要するものは、次世代ゲーム機の中では圧倒的に処理性能が劣るWiiは不利な部分だと思われていましたが、そんなWiiで、この冬最大の注目作の「スマッシュブラザーズX」に、物理エンジンである「Havok」が利用されているという情報が入ってきました。

Havok公式サイトに「スマブラX」の名前が

情報は、海外の任天堂ファンサイトとしては有名なGoNintendoの記事。

Go Nintendo » Blog Archive » Super Smash Bros. Brawl using Havok physics- What are you waiting for?

こちらの記事によれば、元々数ヶ月前に「スマブラXでHavok採用」という情報はあったものの、ただの噂と思われていたようですが、この度Havokの公式サイトにある「採用リスト」内で「Super Smash Bros.Brawl(海外名)」が掲載されていたということです。

Havok - Upcoming Releases

リストを見ると、「Assasin's Creed」や「Halo 3」、「Heavenly Sword」や「Killzone 2」と、PS3Xbox360における注目タイトルがずらっと並んでいますね。日本メーカー製でもコナミの「サイレントヒル5」が入っていたりします。その中に、性能に劣るWiiスマブラXが入っているというのは、たしかにちょっと異様な感じはします。

物理エンジン「Havok」とは?

そもそも、「Havok」というのはどういうものでしょうか?自分もそれほど詳細な知識を持っている訳ではないので、細かいところはゲーム関連技術解説のスペシャリストである西川善司氏の解説記事を紹介しておきます。

3Dゲームファンのための物理エンジン講座 〜HAVOK編〜 余ったそのビデオカードで効果物理を加速しよう!
【レポート】CEDEC 2006 - Havok物理シミュレーションエンジンの秘密 (1) Havok物理の概要 | パソコン | マイコミジャーナル

便宜上「Havok」と呼んでいますが、Havok自体は会社名であって、エンジンの名前としてはHavok Spectrumといった名前がついており、その中に様々なエンジンが内包されているようです。

技術の内容としては、例えば複数の物体の衝突判定、そしてその連鎖判定などを行ったりする模様。少ない物体同士の判定なら、プログラマも自力でコードを入れることが出来るかもしれませんが、数十、数百のオブジェクトの相互作用などを考えようとすると、各ソフトメーカーが独自にプログラムを組んでいてはそれだけで開発がふさがってしまうレベルでしょう。そうした中、こうした専用のエンジンに対する需要が高まっているのだと思われます。

日本で「Havok」というと、PS2で出た「聖剣伝説4」が有名どころでしょうか?商業的には大値崩れ起こしただけに、あんまりイメージよくないですけど。

聖剣伝説4 - 『聖剣伝説 ヒーローズ オブ マナ』 / ファミ通.com

スマブラXでの物理エンジンの意味

ただ、Wiiより処理性能の劣るPS2でも聖剣伝説4のように物理エンジン採用しているものがあるわけですから、WiiでHavokが採用されてもおかしい話ではないですよね。実際、ロンチの段階ですでにElebitsが独自に物理演算を組み込み、物体の反射などのリアリティを高めて表現していましたし。もちろん、PS3Xbox360に比べれば処理量が劣る分、一度に計算できる量とかいろいろと制約は付いているのでしょうけど。

後は、今回採用されることになった「スマブラX」で、一体何にHavokを使っているか、ですね。元々ワラワラ系のゲームでもないので、考えられるとすると背景部分の爆発や破壊などをリアルにする感じですかね?もっとゲームの売りになるようなところに使っているのなら、公式サイトのスマブラ拳!!の方でネタになっていそうなものなんですけど。あくまでおまけな感じに使っているということでしょうか?

PS3Xbox360などの超リアル路線のゲームだと、キャラはリアルなのに動きが不自然だと強烈な違和感を感じそうですが、元々SDでディフォルメ中心のスマブラだと、背景の動きとかも多少ディフォルメされていてもあんまり気にならないような気はするんですけどね。

ただ、Elebitsのように、ゲーム性のそのものに関係してくるようだと違ってきますが。もしかして、キャラクターが攻撃を受けて連鎖で吹っ飛び、その作用にHavokが使われているとか、そういった要素があったりすんですかね?

今後の情報に期待

いずれにせよ、性能に劣るWiiでも、最近のゲーム技術のトレンドを取り込もうとする動きはあるようですね。別に任天堂がアンチスペック主義という訳でもないですからね。WiiやDSは価格や大きさ、そして短期間での投入という戦略的要素で処理性能での冒険を避けている点が強いですし、実際無理に性能を上げてしまってライバルは逆ざややゲーム制作の難しさに苦戦しているところもありますし。

とはいえ、先の技術は時間がたてば当たり前の技術になってくるものです。Wiiは短期的視点で性能よりもインタフェースの変化で攻撃に出た分、高性能を生かす技術開発は油断しているとどんどん取り残される危険性があります。任天堂としても、この先何年後かに当たり前に利用できなければいけない技術を習得できないようでは、Wiiだけの短い天下に終わってしまう可能性もありますからね。Wiiの次も見据えた技術革新はどんどん進めていかないといけないでしょう。そうした意味では、限られた性能のWiiでも積極的に次世代の技術に挑戦することは、任天堂の限られたリソースの活用という意味では意味のあることかもしれません。

とにかく、スマブラXではたしてどのように物理エンジンが活用されているのか、今後出てくる情報に期待したいと思います。


P.S.(9/4)
現在、リストからはスマブラXからAssasin's Creedも含めて消されているようですね。採用されなくなったのか、情報を伏せただけなのか、詳細は不明です。