伝説の振り逃げ3ラン〜神奈川大会準決勝 横浜vs東海大相模

世の学生達は夏休みに突入。そんな夏の風物詩といえば高校野球で、今も全国各地で甲子園を目指し地方大会が行われています。甲子園での開幕も近づきどこも決勝、準決勝などのレベルの高い大会が行われている中で、何とも珍しい出来事が起きました。それは、「振り逃げ3ラン」というものです。それも、原監督の出身校・東海大相模松坂大輔の出身校・横浜という強豪校同士の対決でです。

この件については、以下のcode-Realityさんのブログで詳しく触れられています。
code-Realityの時間です。: 真夏の珍事

また、地方大会ながらいくつかニュースにもなっていますね。

振り逃げで一挙3失点…横浜高、準決勝で涙 高校野球神奈川大会|野球|スポーツ|Sankei WEB
「振り逃げ」3失点!横浜ミスに泣く!…高校野球選手権神奈川大会:高校野球:野球:スポーツ報知

問題のシーン

一体何が起きたのか、これはcode-Realityさんの記事にも上げられていた動画を見ていただくのが手っ取り早いでしょう。


ニコニコでも上がってますね。自分が知ったのもこっちでランキング入りしていたためです。
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状況説明 〜 三振ワンバウンドキャッチ後が問題

状況を簡単に説明します。まず起こったのは4回表、東海大相模の攻撃。3点取ってなお二死一三塁の場面。ここで、2ストライクからワンバウンドの投球をし、それをバッターは思わず手が出てしまいます。これに対して横浜のキャッチャーが一塁塁審に振ったことをアピール。それが認められて、主審も右手の拳を振り上げます。

これを受けて、横浜の守備陣はそのままボールを置いてベンチに帰って行ったのですが、ここで事件は起こります。バッターの判断かベンチの指示かは分かりませんが、打者は一塁にかけだし、塁上のランナーもホームに帰ってきます。そして、打者もそのままホームインし、一気に球場はざわつき始めたわけです。

問題となったのは、横浜の捕手の行為。ワンバウンドキャッチをした後、打者のスイングアピールだけして三振を確認した後、ボールで打者にタッチすることも一塁にボールを投げることもしなかったんですよね。上記産経や読売の記事では監督が「捕手はタッチしたと主張」と言っていますが、動画を見ればタッチしていないことは明らかです。

振り逃げは、通常は一塁にランナーがいた場合は併殺などの関係でルール上できないことになっています。ただ、二死だと併殺関係ないので、出来てしまうんですよね。(Wikipediaにはすでに今日の事件も追加されてたりします。)

振り逃げ - Wikipedia

プロ野球などを見ていれば、三振でのワンバウンド捕球時、いつも何気なくキャッチャーがやっている行為なんですけど、そのことがこれほど大きな意義持っていたとは、思っても見ませんでした。

微妙な主審のコール

ただ、逆にスイングと塁審が判定した後、主審が拳を振り上げているところが引っかかるところではあります。ここで主審が「アウト」と口に出してコールしていたら、状況がややこしくなりそうです。おそらく、主審は「あれはスイングについてコールしただけ」と言うんでしょうが、振り逃げでホームイン後、審判団が大慌てで協議をしていたところを見ると、あの時点では「アウト」のつもりでコールしていた気がします。この辺、code-Realityさんも指摘されているように、曖昧さのないコールであるべきだったと思いますね。動作自体はスイングもアウトも同じならば、どっちの宣言をしたのかはっきりと声にだすとかで。

クオリティの高い実況

今回の件で、何より自分が感心したのは、上記動画における実況です。東海大相模の打者が走り出したところで、「ん、待ってくださいよ?」とコメント。そしてすぐに「三振ですが、これは、ツーアウト一塁三塁ですから、振り逃げが成立するケースですねぇ。」と、即座に何が起きようとしているかを把握しました。ここで声のトーンが一段上がっているのが、ちょっとゾクっときます。実況の人も、そのとんでもない事実に話しながら気づいて興奮してきたんでしょうね。その生々しい感じがたまりません。こういった、普段冷静に知的に実況している人が思わず興奮してしまったシーンとか、大好きなんですよね。

そして、解説の人が遅れて状況を認識し「キャッチングがどうだったでしょうかね」とコメント、ホームインのシーンでは実況も「ひょっとすると、これは全部得点になるかもしれません!得点になる可能性があります!」と興奮した口調で発言していたわけです。

実に適切で丁寧な解説であり、今回の事件を視聴者に分かりやすく伝えていますよね。何よりも、実況の方の豊富な知識が感じられます。最近アニメ化されて話題の「おおきく振りかぶって」なんかも、高校野球の非常に細かい駆け引きやルールなどに触れて話が展開されますが、同じ野球でも高校野球は個々人の能力よりもチームプレーが重要視される分、本当に細かいんですよね。ただ、その分緻密でプロ野球のような大味さはない分、純粋に野球に対してのマニアックな魅力もあります。この辺の実況をやっているだけに、今回の実況の方もレベルが高かったのかもしれません。

自分は基本的にNHKのスポーツ中継ばかりを見ており、民放の実況はやたら煽るばかりで知識も無く、無駄なかけ声などばかりで「うざい」という印象ばかり持っていましたが、地方局ではこうした人もいるんですね。他の民放の方も是非見習っていただきたいものです。

何についても基本が大事ということか

さて、この試合の顛末ですが、結局東海大相模が6−4で勝利。振り逃げ3ランで最後の3点が入っているわけですが、要するにこの振り逃げが決勝点なんですよね。横浜としては、もう一生忘れられない汚点になってしまったように思います。今回のキャッチャーは、ちょっと立ち直れないかもしれませんね。

結局、いつもあたりのようにやられている「ワンバウンドキャッチ後のタッチ」というもの、それを行わなかっただけで致命的な自体を招いてしまったわけです。今回の件は、他の高校野球のチームにも、基本を再確認するいいきっかけになったかもしれませんね。この後始まる甲子園大会、質の高い試合を期待しています。