ソニーCSL製技術がPSP版「ハルヒ」に採用

長らく研究が続けられながらも、なかなかこれといった目が出ていなかったヒューマンインタフェース研究。そもそも昔は計算機の処理能力が低いとか、そもそも精度が出ないと言った問題もありましたが、単純にインタフェースといった場合に想定される機器がPCやTVなどで、すでにあるキーボードやマウス、リモコンなどを越える操作性を他のヒューマンインタフェースで実現するのが難しかった、というものもありました。

しかし、PS2でのeyeToyを皮切りに、ゲームでの応用が徐々に見られ、特にニンテンドーDSがデフォルトで大きく入力形態が変わったこと、そして任天堂がヒューマンインタフェースの技術を積極的に取り込んでいったことで、徐々に実用の目が出てきた感じがします。脳トレの文字入力と音声入力、お料理ナビやWiiでやわらかあたま塾の音声読み上げなど、ゲームの新鮮味を増し、初心者でも手軽に扱える要素として、うまく活用されているように思います。

そんな中、最近はDSで「大人のDS顔トレーニング」が発表されるなど、「顔認識」をゲームに応用する例も出てきています。そんな中、また1つ新しい技術がゲームへの応用を見せているようです。

1枚の画像から3D CGを制作する技術がPSP版「ハルヒ」に

具体的に今回紹介された記事は以下のものです。

ITmedia News:PSP版「ハルヒ」にも 顔写真を“3D顔アニメ”にするソニー発の技術

まず、記事タイトルに『PSP版「ハルヒ」』と入れているだけでインパクトが大きいですよね。技術的には前にもデモレベルでなら見たことがあるものですが、実際にPSPの「ハルヒ」に応用されるとなると、かなりインパクトが出てくる感じです。(ちなみに、こんないかにもブロガー受けしそうな記事タイトルをつけるなんてもしや?と思って文責を見たところ、やはりIT戦士・岡田有花嬢でしたw。この人は、本当ネット住民を『釣る』のがうまいですよね。)

さて、具体的な技術ですが、1枚の顔画像からその目鼻位置などを認識、自動的に3D CG化してしてしまうというものです。実際のデモの様子などが記事でもいろいろ動画で載せてありますが、なかなかよく動いてますね。

この技術自体は、ヒューマンインタフェース関連では世界的に名高いソニーコンピュータサイエンス研究所(CSL)が開発したもの。PS3で今度発売される「THE EYE OF JUDGMENT」なんかも、CSLでかなり前から研究されていたテーマの実用化例ですよね。

ITmedia Biz.ID:実世界とコンピュータ世界の融合――ソニーコンピュータサイエンス研究所 (1/3)

今回のCG化技術は、会社としては「モーションポートレート株式会社」というベンチャー企業になっていますので、おそらくCSLからスピンアウトした形なんでしょうかね。会社HPに行くと、岡田有花嬢の記事よりも多くのデモを見ることができます。

モーションポートレート株式会社

実写のサンプルがありますが、結構ぐりぐり動いてちょっと気持ち悪いぐらいですね。かなり自然な感じではあるのですが、微妙に感じる不自然さ、違和感が気持ち悪さを演出している感じはします。それでも、ただの1枚のCGから、ほんの数秒でこれだけのCGモデルが出来るというのはなかなかのものだと思います。瞬きしたり口が動いたりするのもすごいですね。

PSP版「ハルヒ」での活用度合いは?

さて、この技術は岡田嬢によればPSPハルヒで利用されるようですが、果たしてどういった活用になるのか。単に京アニのセル画にこの技術を適用して3D化し、アニメーションするだけでしょうか?でもそれだと、別に2Dで普通にアニメーションしてもいい気もします。アナログスティックでカーソルを動かし、その方向にキャラが目線を向けるとか、そういった要素があるんでしょうかね?

ニンテンドーDSであれば、タッチペンという絶対座標入力のデバイスがある分、タッチした場所に目を向けるということはより効果的に使えると思います。ただ、ソニーCSLの技術と言うことで、さすがにライバルのDSゲームにはなかなか応用されないのかもしれません。ちょっと惜しい感じはしますね。

ソニーの技術」で巻き返しなるか

ソニーも、世界有数の研究機関と技術を持ちながら、eyeToy以降はことごとく任天堂にそっち方面で出し抜かれているというのも、なんとももったいない話です。

このあたりは、製品そのものにおけるインタフェースの重要度をどの程度の比重でとらえているかという、任天堂ソニーのスタンスの違いのせいのかもしれませんね。いくら優れた技術を持っていても、入力系が十字キーとボタンに固定してしまっていては、活用する口がないですしね。AV機能や処理性能ばかりに目がいってしまい、入力系も含めた直感的娯楽要素を高めるような製品企画を出来なかったことが、WiiやDSにしてやられている要因な感じもします。

とはいえ、今回のモーションポートレート、そして「THE EYE OF JUDGMENT」と、ソニーの持つ技術も徐々に実用化されてきています。技術レベル自体では、正直任天堂などよりも高いはず。あとは、それをどのように製品企画に結びつけていくか、でしょうか。ただのAV要素拡張だけではなく、ゲーム機として「あっと驚かせる」ようなものを、ソニーにも見せて欲しいですね。E3もいよいよ明日から開幕。PS2発売の頃、皆を夢見させていたあの輝かしいイメージをもう一度見せて頂きたいものです。