Wiiの運動関連への応用 〜 米高齢者施設で人気に

次世代機戦争序盤戦、ロンチからキラーソフトWiiSportsを用意して好調なWii。リモコン型コントローラを有効に生かした「これまでにない」、しかし「実際と似た動き」による直感的な入力が、老若男女問わず受けている形です。

発売当初より、老人がWiiをプレイする動画が公開されていたりしましたが、実際にアメリカの高齢者施設でもWiiが運動不足解消に用いられているようです。

高齢者施設の運動はTVゲーム(アメリカ) - 世界の高齢者 (気にな・る・こ・と♪経由)

脳トレにもなる?!Wiiでの運動

まず、面白いのが最初に示されている以下の効果について。

神経科学ジャーナル」で紹介された最近の調査で、高齢者の定期的な運動が身体的な利益に加え、記憶力と知力を高めることがわかったという。

この文章だけ見たら、「それなんて脳トレ?」と言いたくなるような感じですよね。高齢者が身体を動かすことが、脳の働きにも影響している、ということのようです。たしかに、どうしても高齢になり、身体が弱くなってくると運動をすることが少なくなってきます。そして、身体を動かさなくなると急速にぼけが進むことがあるんですよね。

Wii自体は、先日自分が「 Wiiやりすぎによる身体への影響について」で触れたように、やりすぎると身体を痛めたりする危険も持っています。ただ、これはあくまでゲーム機として見るとこれまでのゲーム機と違って危険性があるという話で、リアルなスポーツと比べるとメリットもあるわけです。

実際のスポーツと比べたメリット

このあたりの実際のスポーツに対するメリットについては、以下の部分の文章を見るとよく分かるかと思います。

78才の女性は、これまでボクシングをしようと思わなかったが、今はこのゲームをスクリーンで楽しんでいる。彼女は、ゲームをはじめて2、3分で汗をかき始めるという。毎日立ち寄る居住者は、フィットネス・センターと同じくらい激しく楽しいというから、結構ではないか。

高齢者が、リアルでボクシングをすることなんて、所詮無理なものです。力もないですし、下手にサンドバッグなんて殴ったら手首痛めてしまいますしね。それが、Wiiによるバーチャルな体験であれば、高齢者でも可能なわけです。これまでやれもしなかったボクササイズが出来てしまうわけですよね。

また、純粋に対戦としても、実際のスポーツほど「体力の差」が出ません。リアルなテニスで大人と子どもがプレイしたら勝負になりませんが、WiiSportsのテニスならあくまで加速度だけ見ているので、力の差は関係ないですし、移動もオートだから足の速さ、フットワークも影響しないわけです。そう言った部分を他のプレイヤーより伸ばして楽しむアスリートな人は逆に物足りないかも知れませんが、リアルのスポーツでは出来なかった、体力差のある人同士の真剣プレイを実現できるのは、Wiiの魅力的なところですよね。

バーチャルな「Wiiならでは」の活用法を

ニンテンドーDSは、本来のゲームという意味でも2画面、タッチパネル、Wi-Fiということで進化を見せましたが、そうしたインタフェースが知育・実用分野でも大いに活用が可能となり、世の中に新たな価値を生み出しました。Wiiも、純粋にゲーム体験に革新を与えるリモコンを使ったインタフェースですが、これもまた実際のスポーツなどとは違った新たな価値を生む可能性を持っています。

今回の高齢者のような話を見ると、WiiSportsだけでも十分すでに効果を上げているようですが、今後は何かと(主にネタとして)話題になっている「ビリーズブートキャンプ」みたいなエクササイズソフトなんかも出てくるでしょうね。DVDでの映像だけでは実際にそれを見ている人がどの程度運動しているかは把握できず、一方的なプッシュ情報に過ぎません。しかし、Wiiであればたとえ得られる情報が腕の振りだけであるとしても、トータル的にその数値を見れば、なんらかのフィードバックをユーザに与えることが出来ると思います。ゲームじゃないので、手だけ動かしてズルしてもユーザーにメリットがないですしね。その辺が、攻略が主目的のゲームと、自分を高めることが主目的の実用ソフトとの違いでしょう。

何かと宮本茂氏の名前とタイトルだけが先走っている感じがある「ヘルスパック」。おそらく、この辺のテーマについて、宮本氏ならではの切り口で仕上げた作品になってくると思います。また、ヘルスパックがなかなか出てこないだけに、DSの実用ソフトで頭角を現しているサード、またこれまでにゲームに参入していなかった会社なども、ビジネスチャンスは転がっていると思います。この手のジャンルでは、やはり人まねではなく、最初にインパクトを与えたところが強いでしょう。

Wiiでのプレイのやりすぎにはこれまでのゲーム機にはない危険があるのも確かですが、応用法によっては非常に益のある素敵な価値を創造していくこともできるでしょう。ゲーム関係の充実ももちろん期待していますが、今後Wiiでも実用ソフトの充実を期待したいところです。