任天堂からサードへの開発環境提供について

Wiiの備える特徴的な機能として、Wiiリモコン、チャンネル、WiiConnect24がありますが、もう一つ非常に重要な機能として、似顔絵キャラを作成しゲームに登場させることもできるMiiがあります。MiiはミリオンヒットのWiiSportsやはじめてのWiiおどるメイドインワリオなどでも使われており、家族でプレイしているときには大いに盛り上がった機能です。

Mii利用環境はサードに未提供?

そんなMiiについてですが、現状ではサードメーカーではまだMiiを使用できる環境を提供していない、という記事がGameSparkさんのところで出ていました。

Game*Spark - : 任天堂はサードパーティによるMiiの使用を許可していない? by RIKUSYO

うーん、これは余りよくないことですね。ただ単に準備が間に合っていないだけと思いたいところです。WiiConnect24もライブラリ提供がかなり遅れてしまい、未だに任天堂ですらポケモンバトレボぐらいしか対応できておらず、サードもElebitsだけ。Miiについてもまだツールが提供されていないとなると、サードがMiiを活用したゲームを出すのはまだ時間がかかるかもしれませんね。EAなんかは、シムピープルとかMiiをすぐに活用できそうなコンテンツもあるだけに、この辺は歯がゆく思っているのかもしれません。

任天堂の台所事情の推測

任天堂は、まず自社でソフトを開発し、それでソフトを出してしまえば、それなりに売れてハードを支えることができます。というか、ハード立ち上げの時にファーストがまず全力を注ぐのは自然なことですしね。もしサードに任せてろくなソフト出てこなかったら、ハードそのものが大ゴケしてしまう羽目になりますから。
ただこうなると、社内でのソフト開発環境構築が第一で、その成果を順次サードに提供していく、という状況になりやすいようにも思います。この場合、内部にツールを配布する場合は、最悪仕様やバグがあっても融通が利くところがありますが、いざ外部に渡そうとなると、より丁寧なドキュメント・動作検証などが必要となってきます。社内環境を整備しながら同時に外部提供のものもそろえていくっていうのは、結構大変だと思うんですよね。先に社内で使っておき、環境をブラッシュアップさせておきたい、というのもあるかもしれませんし。(もっとも、この辺は任天堂の開発環境とか見たこと無いので、完全に素人の推測に過ぎませんが。)

ファーストとの差を少しでも無くしたいサード

ただ、やはりサードとしても、自分が開発したハードではないのですから、ハード固有の機能を使うツールは早く公開して欲しいと思うのもまたもっともな話な訳です。ただでさえ任天堂はソフトメーカーとして強力なのに、使える機能まで差が付いてしまうのでは、サードとしてもいい気分はしないでしょう。せめて近い条件で戦えないと。
学校とかに例えるのであれば、任天堂が優等生、サードが中の上くらいの成績の学生の場合に、その優等生がさらに他の人が持っていない便利な参考書や過去問をコネで入手して勉強しているような印象でしょうか。頑張る頑張らないで成果に差が付くにしろ、とりあえず条件ぐらいはそろえさせて欲しい、という気持ちを持ったとしてもおかしくありません。特にEAなんかは任天堂と並ぶ世界の強力ソフトメーカーですしね。

オープンで敵を作らないやりくりを

とはいえ、岩田社長もこの手の問題は64、GCでサードに逃げられた反省があり、講演などではちょくちょくサードへの技術提供、ノウハウ伝達、コンサルトなど、様々な施策をするとコメントしてます。また、他の記事でも、任天堂の姿勢はだいぶオープンになってきたというものもありました。いくら任天堂が強力で、ソフトシェアが大きいと言っても、任天堂のゲームが好きじゃない人も当然いるわけです。それもそれなりの人数が。任天堂がもし新規客層だけでなく、既存客層も取り込んでゲーム市場の制覇を目指すのであれば、細かいニーズに対応できるサードを多数取り込むことは重要でしょう。

任天堂自身もまだWiiConnect24などは活用し切れていない状態ですが、ゲームの質的変換のためにはこうしたWii独自の機能をどんどん活用していくのがいいと思うんですよね。先日の投票チャンネルインタビューでも、投票結果を他で使いたいみたいな要望があったらしく、こうしたWii本体機能を利用したいろいろな取り組みがゲームの可能性を広げてくれるような気がします。グラフィックや物理演算以外の部分での進化を目指したのですから、是非とも今後も進化し続けて欲しいですね。

そうした様々な可能性について、任天堂自らが活用するまで待たずとも、サードにもツールを提供して一緒に切磋琢磨していけるのが、結果的にはいい競争となってユーザに還元されるのでは無いでしょうか。できる限り敵を多く作らず、共存共栄していけるやりくりに期待したいところですね。