想像以上の反響を呼ぶ「仙台ヨド初売りPS3売れ残り騒動」

先日「初売りにおける次世代ゲーム機販売状況」で触れた、仙台ヨドバシ初売りにおけるゲーム機販売。3日でDSLiteWiiPS3を各1000台と、1店舗としてはあり得ない数を用意していると言うことで話題になりましたが、結果的にはDSLiteWiiは臨時追加も含めて完売、PS3だけ大幅に売れ残る、という形になった模様です。

このネタは完全に2chなどネット主導で盛り上がっており、たしかにWiiやDSとPS3との比較ネタとしては面白いものの、所詮は1地方の1店舗での出来事に過ぎないというのが自分の認識でした。情報自体も2chなどでの有志での情報提供が基本でしたので、あくまで個人レベルで楽しむネタかなと感じていたわけです。

はてなブックマークでの反応

ところが、この情報が想像以上の反響を呼んでいるようです。まず、2chで盛り上がっていたスレをまとめた以下のページも、多くのはてなブックマークを集め、多くの日記が取り上げています。

はてなブックマーク - 痛いニュース(ノ∀`):仙台のヨドバシカメラ、初売りでPS3を3000台も入荷…値下げするも在庫の山

こうした反響を呼んだ原因としては、やはりPSブランドに対する大きな信頼感があるからでしょう。自分らのように日頃からゲームに関する情報をまめに仕入れている人たちにすれば、現状ソフトもろくにそろわず、値段も高いPS3が売れ残っていてもそれほどの驚きは無いのでしょうが、それほどまで関心のない人から見れば「え?PS3が売れ残り?!」「発売当時めちゃくちゃ品薄だったんじゃないの?!」という驚きがあるのかもしれませんね。併せて、この年始各種デパートやゲームショップに行って実際にPS3が売れ残っているのを見た人たちもおり、そう言った人たちが「ああ、自分もそういうの見かけた。やっぱ全国的にそうなんだ。」と反応するところもあるのかもしれません。

日本マスコミの過剰反応

また、このネットでの反応に対して、マスコミの方でも過敏に反応しています。1つは以下のJ-Castの記事。

J-CAST ニュース : 「売れ残り」PS3 Wii圧勝は確実

J-Castは、一応一般マスコミと週刊誌の中間ぐらいの位置づけ、とうたっていますが、この記事を見る限りではほとんど週刊誌ですね。というか、記事の内容がほとんど2chの一投稿レベルか、個人ブログレベルです。ちょっと2chなどでのネットでの盛り上がりにのせられすぎている印象がしますね。J-Castのニュースはその他のニュース統括サイトでも引用されることが多いので、そう言った意識を持って記事を載せて欲しいところです。(というか、最近Yahooニュースといい、ほとんど個人サイトレベルのものを一般マスコミのニュースと同レベルでトップ記事に持ってくるのはどうにかして欲しいと思っているんですけどね。文責の重みが違いすぎるように思うのですが。ネットでの悪のりを通常のニュースと同列に扱うのは勘弁して欲しいところです。)


そして、このJ-Castのニュースだけでなく、驚くことになんと、天下の日経新聞にまでこの仙台PS3騒動が取り上げられています。

 ヨドバシカメラ仙台市内の店舗で2日から3日間でDSとWii、PS3を各3000台用意。WiiとDSは開店から1時間あまりで売り切れたが、PS3は5日時点でなお在庫を残している。
NIKKEI NET:主要ニュース

2chでの情報によれば、実際の日経新聞の記事ではさらに詳しい記述もあった模様です。まあ、全国的に品あまりしている感がするのは事実ではあるのですが、このタイミングで仙台ヨドバシをネタに使うところは、あきらかにネットで話題になっていることを意識してのもののように感じられます。

ここ数年マスコミを見ていて思うのは、ネットに対する焦りというか、おびえですね。これまでは自分たちが率先して情報を入手し、それを取捨選択して提供することで、世の中の情報を管理し流れを作る側にマスコミはいたのですが、最近のブログなどの普及でむしろネットの方で先に盛り上がり、あとからマスコミが取り上げると言うことが増えてきているように思います。そして、その意識が強すぎるあまり、過剰にネットの話題に反応しすぎている感もあります。ネットでも一熱狂的ファン層での盛り上がりを、あたかも全体の盛り上がりのように曲解し、増幅し、センセーショナルな見出しで断片的に報道することが、マスコミにはよく見られるんですよね。日頃からネットにどっぷりつかっている側からすると、正直そうした動きは滑稽に映ってしまいます。ファミ通浜村通信で言っていた「マスコミは最初からストーリーを作り上げている」という浜村氏のコメントも一理あるように思います(まあ、浜村氏自身はどうなんだ、というのはありますが)。

今回の日経のニュースでも、紙面の方では各種量販店や流通関係者のコメントを取っているようですが、できればそれをネット記事でも載せて欲しいところですよね。ネットで話題の仙台ヨドの情報だけ、というのは、ネットコミュニティとの差別化が図られていない感じがしてしまいます。もう数日待てばメディアクリエイトなどの統計期間が出す情報も出てくるでしょうし、そうした情報に基づいて多角的な見方で価値の高い情報を発信してもいいのではないでしょうか。
ネットコミュニティの「即時性はあるが信憑性に欠ける」という世界に、一般マスコミまで踏み込む必要はないように感じます。消費者は、一般マスコミについては2chやブログに比べれば高い信頼感を持っているでしょうし、個人ブログと日経新聞のような一般マスコミでは記事の重みが違うのですから。

情報戦でもPS3に逆風、巻き返しなるか?

今回の騒動を見ていても分かるように、消費者・マスコミを含めて正直PS3にはかなりの逆風が吹いています。まあ、現状ソフトもなく、本体も高く、大量に買う層が見あたらないのは確かですし、こうした意見が出ても無理は無いとは思いますけど、あまりに序盤戦で一方的なムードがつけられている報道が出てしまうのはいかがなものか、とは感じますね。なんだかんだ言って50万台は出ているわけですし、ソフトさえPS2のように出てこれば、PS3もある程度伸びてくるとは思うですが、これだけ逆風が吹いていると、ソフトメーカーが躊躇してしまいそうですからね。世間の反応がPS3の将来的可能性を無理矢理削いでしまう可能性すらあります。本来起こりえた競争が、マスコミなどの反応で過剰に天秤が振られてしまうのは、何かちょっと違うようにも感じます。


とりあえず、PS3にはこうした逆風を止めるため、一刻も早い対策を取る必要があるでしょう。トロステも悪くは無いと思うのですが、もうちょっと、Wiiと差別化できる独自の、PS3ならではのサービスを見せていかないと、どんどん消費者の目が覚めたものになってしまう気がします。

とは言っても、自分も簡単には思いつかないのですが…。「5万という価格が高い」という消費者の反応が出ている以上、本当は値下げが一番なんですけど、ここから3万ぐらいにするのはいくら何でも無理がありますからね。即時にPS2のようなゲームを続々出す、と言ってもそう簡単に作れるものでもないですし。SCE自身が任天堂ぐらいソフト開発に力を入れ、ロンチにあわせて意欲作を多数提供できればよかったのですけどね。BDでとんでもないキラーソフトが出ればいいかもしれませんが、現状映画界ですらそれほどのキラータイトルは無いですからね。PS3の高い処理能力を用いて、所有者の生活の質が劇的に高まるようなキラーアプリが何かあればいいのでしょうけど。


ともかく、何か1つでも「PS3ならでは」「PS3がほしい」と思えるところを目一杯のばし、購入者拡大を図ることが逆風を止めるための至上命題でしょうね。そうでないと、MSや任天堂が不祥事起こしたり下手を打って自爆する、といった他力本願なことになってしまうでしょうし。たとえそうなってもおそらく、ゲーム業界ごと衰退するだけでしょうから。SCEから短期、長期両面について魅力的な提案が出てくることを期待しています。任天堂が「WiiSportsの次」を出すまでの数ヶ月間が勝負でしょう。