Wiiストラップ米国訴訟騒動について

先日自主交換が発表されたWiiの0.6mmストラップ。これに関連して、米国で訴訟が起こされていたことが日本の各種メディアで話題になっています。

任天堂:集団訴訟に発展 Wiiリモコン問題−ゲーム:MSN毎日インタラクティブ

上記のニュースは、集団訴訟が起きているという書き方ですね。ただ、この「集団訴訟が起きた」というのは実際には若干語弊があった模様で、各種マスコミの対応が微妙に異なったり混乱したりしています。一部を以下で紹介したいと思います。

訂正されたITmediaの記事

ITmediaでは当初以下のような文面で記事が掲載されており、2chなどで非常に大きな反響を呼びました。

ITmedia News:Wiiリモコンのストラップ問題、米国で集団訴訟に発展

任天堂次世代ゲーム機であるWii用リモコンのリストストラップが切れるとの苦情を受け、無償交換プログラムを発表したが、それに先立つ12月6日、ワシントン州シアトルの連邦地裁で集団訴訟が起こされていた。この訴訟は、不具合の部分の交換を要求するもの。

カリフォルニア州サンフランシスコのGreen Welling、テキサス州オースティンのSiebken & Siegele、シアトルのShort, Cressman & Burgessが共同で起こした集団訴訟ではNintendo of Americaを相手取り、ワシントン西部地区連邦裁判所に訴えている。

この集団訴訟では、「任天堂がNintendo Wiiに関して不公正または虚偽の商行為を実施することを禁じること」を求めるとともに、不具合のあるWiiリモコンの欠陥を修正し、購入者には返金もしくは正しく動作するWiiリモコンに交換できることを要求している。

上記文章は、2chに転載されたものの引用になります。一応、当時の記事の様子は上記記事のはてなブックマークにあるはてなスクリーンショットでうっすら確認することができます。

最初の文章では「集団訴訟」と断言していたわけでしたが、実際には、まだ一人が集団訴訟を求めて訴えを起こした段階の模様。それを受けてか、ITmediaの記事も、記事のタイトルの末尾に「発展“か”」とつけ、文末にも以下のような細く文章を付加して訂正しています。

任天堂の広報担当者は「集団訴訟になるかどうかは裁判所が決めること。いま訴えているのは米国の1個人であり、1件であると認識している。訴えられたことについては戦う」とコメントしている。

ITmedia News:Wiiリモコンのストラップ問題、米国で集団訴訟に発展か

これはおそらく、任天堂の広報から直接コメントが行ったんでしょうね。もしくは、ITmediaが確認したか。いずれにしろ、いい加減なことが多い某IT系マスコミならいざしらず、ITmediaほど大きなマスコミが、こうした訂正に対してなんの付加もなく文章を修正してしまうのは、ちょっといかがなものかと思います。意味が変わらない微修正や誤字訂正などならともかく、今回の件は集団訴訟と断言するかどうかで、ニュアンスがだいぶ変わってしまいますからね。普通だったら太字や赤字で「追記」なりをつけるものだと思うのですが。(まあ、自分も投稿後に修正することがちょくちょくあるので、あまり人のことは言えない気もしますけど。)

より細かいコメントを掲載しているJ-CAST

集団訴訟がらみの件については、一般マスコミとスポーツ新聞系の中間のような位置づけのJ-CASTが、もう少し詳しいコメントを任天堂広報より得ています。

J-CAST ニュース : 絶好調任天堂にトラブル 「おごり」はないのか

タイトルからして、基本的に任天堂を糾弾するスタイルですね。この手の糾弾姿勢のマスコミのコメント引用は、得てして過激なコメントに誇張しがちです。敬語で話していたのを省略させたり、高圧的に見える言葉をあえて引き出して提示したりと。SCEの数々の暴言も、少なからずそうした誇張が含まれていたとも思います(まあ、「お子ちゃま」発言みたく、動画になっているとだめですが)。この記事での引用コメントも、多少そうした「角が立つ」印象を受けるものではありますが、そこまでひどくはない感じですかね。

「欠陥などでは全くありません。前にも話したように、余程の事がなければ切れるなどということは起こりえないし、また、リモコンを手から離さないようにという注意を呼びかけてきました。ただし、より安心して遊んでいただけるように改良にも取り組んできたわけで、今回の無償交換を行うことになったわけです」
集団訴訟に発展させようとしているようですが、訴えたのは1人です。集団の利益の何を求めているのかはっきりしていなくて、コメントのしようがないんです。凄いことがアメリカで起きているような誤解を生む報道はどうかと…」
「そういうご指摘があるのなら、真摯に耳を傾けたい。DSは国内1,400万台という前人未到の売れ行きで、Wiiも従来のゲームスタイルの変革に取り組んでいる中で、そういうスキが生まれたのか…身を引き締めなくてはいけない」

まだ集団訴訟レベルでもない、ということも触れられてますね。ITmediaにも同様のコメントを寄せたのではないかと推測します。また、その他貴重なコメントも掲載されています。

一部の報道にある「リコール」も完全否定。アメリカのCPSC(米消費者製品安全委員会)、日本の経済産業省から欠陥はないというお墨付きをもらい、それでも自主回収することにしたのだという。

一応、公的機関の判断は仰いでいるんですね。リコールというと、Wikipediaの「リコール (一般製品) 」によれば「欠陥があるから交換すること」のようですので、欠陥そのものは否定しているということでしょう。これは、昨日の記事で述べたように、安易に非を認めると裁判で圧倒的に不利になる、ということを意識してのもののように思いますね。

北米での交換対応について

上記J-CASTの記事でも出ているCPSCの件については、日経ITproでも似たような記事が載っていますね。

Wiiでゲーム中にWiiリモコンが手から離れ,ストラップが切れて,近くにいる人や物に当たる危険性があるという。実際,任天堂では「Wii Sports」ゲームをプレイ中にストラップが切れたという報告を複数受けており,3件の「診察を必要としない程度の軽傷」(CPSC)が含まれる。
任天堂がWiiリモコン用ストラップをリコール,米国で約200万本:ITpro

このCPSCのところの記事は、おそらく下記のCPSCの任天堂のストラップ交換プログラムに関するリリースを参考にしていると思われます。
Nintendo of America Initiates Replacement Program for Wrist Straps Used with Controllers for the Wii Video Game System

基本的には、日本と同様、購入者が任天堂に問い合わせ、0.6mmストラップを1mmストラップに変えてもらう、という形のようですね。

今後のマスコミ対応にも注目

安全対策に風当たりが厳しい昨今ではマスコミの食いつきは非常に敏感でしょう。ただ今回のITmedia記事のように、あまりに糾弾的話題性に目がいってしまうと、勇み足でばたばたした対応が見られることがたまにあります。マスコミは一般人への影響力が大きいだけに、適正な報道を求めたいものです。

とはいえ、絶好調の任天堂が起こしたトラブルと言うことで、引き続き関心を集めることは確かでしょう。Wiiの革新性の普及を損なわないレベルで、任天堂がどう立ち回れるか。岩田社長だけでなく、任天堂全体の危機管理能力が注目されるところです。