Wiiの抱える訴訟リスク

Wiiはリモコンを振り回す仕様であることから、すっぽ抜けてテレビを破壊する危険など、物損や傷害などの危険性がかなり早い段階から言われていました。自分も「「任天堂が挑むべき課題」について」で取り上げている項目です。
任天堂も十分この点は理解しており、ゲーム機同時にストラップをつけることを促す画面を表示、体験会でも常にWiiストラップを装着するようスタッフが指示、製品版Wiiパッケージでも最初からWiiリモコンにストラップをつけた状態で販売と、かなり頑張って対策をしてきた印象はあります。

Wiiリモコンで早速TV破壊報告

とはいえ、そこは何十、何百万台と売り出すゲーム機、そんな指導を徹底しないユーザ、徹底しても予期しないことを起こすユーザも有り、万全な対策はないと思っていました。そんな中早速TV壊した報告が報じられているようです。

Wiiリモコンが飛行、テレビを破壊 - Engadget Japanese

この報告でのポイントは「ストラップがちぎれた」というところですね。この項目の真偽について、あちらのフォーラムでも注目されているようで、その真偽が焦点となってきそうです。ストラップをつけずに遊んでいてすっぽ抜けたのならユーザの過失と言えるかもしれませんが、本当にストラップをつけた状態で遊んでいてちぎれたとしたら、任天堂側の過失が問われることになるかもしれませんので。

まだ訴訟には発展していないでしょうが、もし訴訟になれば、通常のストラップをつけたプレイで果たしてストラップがちぎれることが起きうるのか、科学的な検証が必要になってくるかもしれませんね。おそらく、任天堂的にはすでにその手のデータは調査しているとは思いますけど。

ただ、どちらにしてもWiiリモコンがすっぽ抜けてTV破壊、というリスクが存在することには変わりません。よく「ストラップなんか面倒でつけるわけがない」とコメントする人をネットで見かけますが、非常に危険な印象ですね。逆に言えば、ストラップを用意しているからといって、任天堂としても安全を保障できるとは限らない、ということだとは思いますが。

【追記】

海外ニュースサイトのIGNでも、実際にプレイしていてストラップがちぎれた例が報告されているようです。傷ついたのは幸い壁がへこんだ程度だったようですが。
IGN: IGN Wii Playground Video 1742357
ちぎれ方はEngadgetのコントローラとは違いますが、ちぎれる可能性があるというのは事実の模様。これは、任天堂は早急に調査が必要でしょうね。一体、どの程度の力で、どれほどの速度で振ったときにすっぽ抜けると、ストラップがちぎれるのか。そのデータが必要だと思います。もしそれがWiiテニスなどで1%以上の頻度で生じてしまうようなら、もっと接続部分が強固な材質でできたストラップに置き換える必要が出てくるでしょう。すでに購入した人には無料配布ですかね。そして、最悪ストラップホールごと壊れてしまうようなら、Wiiリモコンごと再検討が必要になるかもしれません。
とにかく、プレイ中にストラップをつけるのは当然としても、「ストラップをしてても駄目な場合」の情報を公開して欲しいです。どの程度ストラップを信じていいのかと言うことです。幸い日本の発売までまだ2週間以上あるのですから、是非検証して欲しいところです。なまじストラップがある分、すっぽ抜けるのを気にせずにプレイしてて、結果テレビが壊れたらたまったものじゃないですしね。壊れた場合の代金請求など、正直訴訟を起こさないと請求できなそうですし、そんなの面倒でやってられませんからね。安心してプレイできるようにして欲しいです。

(いったん上記文章は削除線を入れていましたが、コメント欄で補足が入ったので削除線をはずしました。)

動画から見るWii操作の危険性

これ以外にも、Wiiは身体を動かすことが多い分、かなりの訴訟リスクを抱えている商品であることは確かでしょう。自分ですら、結構狭いところにテレビを置いているので、普通に遊んでいても手をぶつけて怪我ぐらいはやりそうで怖いです。

Wii発売以降、YouTubeで実際に家でWiiをプレイする動画がいろいろ公開されています。どれも非常に楽しそうにプレイしており、Wiiの魅力を存分にアピールしてくれている、…のはいいのですが、こうした動画の中にも、危険性を感じさせるシーンがいくつか写っています。ここでは、いくつかの動画を取り上げて、その危険予知をしてみたいと思います。


上記の動画はWiiボーリングですが、振り切った地点はかなりテレビに近づいて見えます。もう2,3歩テレビに近づいていたら、手をテレビにぶつけて怪我・物損が起きてしまいそうです。


上記のWiiテニスのプレイ画面でも、かなり近づいてプレイしている割に、お互い全く隣の人に視線を向けていません。こうした動画を見ていると、いつか他人を殴ってしまいそうで怖いですよね。体験会ではスタッフが両者の手を伸ばしても届かない位置に立たせてプレイさせていましたが、通常の家はそこまで広くないでしょうし、注意深く指示してくれる人もいないことがあるでしょうからね。

【追記】


非常に熱くなってボクシングをプレイ。しかし、その左隅の方に娘と思われる子どもが。親は全く気づかずボクシングをプレイ。間違って娘を殴ってしまいそうでちょっと怖いです。


子どもが一人でボクシングプレイ。相手をダウンさせた後、興奮して思わずテレビの方に近づいて行ってます。子どもはやはり熱中すると周りが見えなくなる比重が大人より大きいと思うので、ゲームが面白ければ面白いほど、危険な感じもしますね。


こっちも子どものボクシングですが、もっとすごいですねw。非常にほほえましい光景ではあるのですが、今にもTVにぶつかりそう。


狭い部屋での青年2人のプレイ。非常に楽しそうですが、かなりギリギリのプレイをしている感じです。


個人的には、すでに以下のElebitsの動画ページのGCショー出展ムービーの最後で複数人プレーを密着して行っているところで「危なっかしいなぁ」という印象を持っていました。
Elebits (エレビッツ)

「危なっかしい」要因に対する考察

これら動画を見ていて危なっかしく見えるのは、「プレーヤーがテレビのみを注視し、周辺の障害物に気を配っていないこと」だと思います。もちろん、自分の動作範囲について何となくは各自把握しているので、そう簡単にぶつかったりはしないのでしょうが、それでもテレビに集中して大きな動きをするうちに注意力が下がる可能性があります。テレビしか注視していない状態ではなおさらです。通常のスポーツでもそうですが、障害物が近くにあっても動作中はなかなかそれらに注意できません。また、大きな動きでは、そのフォロー動作はコントロールできない物があります。ゴルフなどで木の下のボールを打つ際、スイングが大きすぎてフォロースイングでクラブが木に当たり、クラブを折ってしまうというケースも珍しくありませんので。Wiiはこれにさらに、視点がテレビに向くという制約がある分、危険度が増す印象です。

また、通常のテレビとは動かずに見るのが普通ですから、いくら家が広くてもテレビの前に十分なスペースが用意していない可能性もあります。その状態で、Wiiのためだけに机を動かしたりする人がどれほどいるかが心配なところ。狭いスペースでプレイすれば、当然物に手をぶつけたり、対戦相手とぶつかる危険も増えます。

今までは体験会での動画が多かったのであまりこうした危ない印象は受けませんでしたが、家庭ではいちいち危険性を配慮してくれるスタッフはいませんしスペースも違います。住宅事情の厳しい日本なら一層条件は厳しくなりますね。

他にもある健康リスク

その他、自分も体験会で若干感じましたが、手首を無理に振ることで手首を痛める、腕を振りすぎて肩が痛くなる、ということはありそうです。Wiiリモコンの場合、何かに当たって抵抗を感じる、ということがない分、思いっきり振り切れてしまうんですよね。そのため、フルスイングすると、思った以上に関節に負担がかかる印象です。もちろん、これらは他のスポーツでも素人が力んでしまって陥りやすいことで、別にWiiに限ったことではないのですが、スポーツという普遍的ジャンルと違って、Wiiの場合任天堂という明確な訴訟対象がありますからね。何かあったときに標的にされるのは確かでしょう。

「何を馬鹿なことを」「そんなの利用者が悪い」と言っても、訴訟社会である北米では何が起こるか分かりません。「そこまで無茶する馬鹿なユーザがいるわけがない」という意見も通常は思うでしょうが、Wiiは売る数がとにかく桁違いですからね。中にはそうした安全についての配慮ができないユーザがいてもおかしくないでしょう。利用者が皆常識的な思考でプレイしてもらえる、というのは、玩具である以上できない発想だと思われます。

任天堂の対策、配慮に期待

これら問題は、Wiiリモコンが発表されたときからずっと自分が懸念していたところなので、任天堂がどの程度ケアしているか、興味深いところです。以前に、ニンテンドウ643Dスティック訴訟で敗訴し、全米ユーザに手袋をくばったという前例があるだけに、日本はともかく北米では訴えられる可能性が十分ありますからね。基本的にユーザの使い方に問題がある場合であっても、Wiiというのは任天堂が新たに生み出す物ですからね。「Wiiがなければ被害は無かった」と言われたときにどう陪審が判断するか、難しいところもあります。

健康に関わるものだと、正直敗訴するととんでもない金額になる危険もあります。被害の程度によっては、振動ライセンス訴訟どころではない可能性も。頻度、程度によっては販売禁止などが起こる可能性だってあります。


当然、この手の任天堂も承知済みでしょうし、だからこそ警告などを繰り返しているのは分かるのですが、実際に事故が起こってしまったときどうなるのかは、読めないところがあります。Wiiの性質上、そうした危険を常に抱えながら商売をするようになると思いますね。これこそ、まさに任天堂のお手並み拝見、といったところでしょう。消費者にうざいと思われても、とにかく安全への呼びかけを徹底すべきだと思います。

また、今後Wiiを購入される予定の方も、自分が被害者とならないよう、ストラップの装着、周辺スペースの確保、身体に負担のかかる動作の抑制などに配慮してプレイするよう、気を付けた方がいいでしょう。任天堂に非がないとなったら、物損や傷害が起きて損するのは丸々消費者の方なので。