来年新型?迷走するWiiのDVD再生対応

先にPS3の互換性を発売後に公表したことを非難しましたが、一方のWiiも完全に全てが明らかになっているわけではありません。その中でも、特に日本の任天堂から口が重く公式なコメントが聞かれないのがWiiのDVD再生についてでした。これについて、今日大きな動きのある報道がなされたので、詳しく見ていきたいと思います。

WiiのDVD再生サポートの経緯

そもそも、WiiのDVD再生機能は、E3 2005で以下のような紹介がされています。

また、別売の小型アタッチメントを本体内部に取り付けることで、DVD再生機能も追加できます。
レボリューション

しかし、その後の発表では詳しい話がされず、E3 2006でも詳細は説明されませんでした。そして、9月の世界同時的に行ったWii Previewでも詳細発表無し、さすがにおかしいと思ったところに出たのが以下のニュースでした。

Wiiはリージョンフリー、DVD再生機能は削除 - Nintendo iNSIDE

リージョンフリーの方も後日否定コメントが出ており、まだ詳細が分からない項目ではあるのですが、DVD再生機能もここでいったん目がなくなったと考えられていました。

もっとも、7月末に出たNintendo DREAM (ニンテンドードリーム) 2006年 09月号 [雑誌]の「任天堂の質問箱」で以下のようなコメントがあった時点で、DVD再生は怪しいな、とは思っていたんですけどね。(当時のエントリーではとりあげなかったんですけどね。)

Q WiiにはDVD機能がつくのですか?
A 最近その話題は少なくなってますよね(笑)。というのも、DVDプレーヤーをすでにお持ちのご家庭が増えてるからじゃないんでしょうか。Wiiでは、別売りの小型アタッチメントを本体内部に取り付ければ、DVDも見られるようになる予定で、その方針は変わっていません。ただ、いろんなご家庭がありますので、「DVDが見られると便利だ」とおっしゃっていただけることもあるとは思いますが、DVDプレーヤーって、すごく安くなってますし、使い勝手も、DVD専用プレイヤーのほうがよかったりもしますしね。WiiにDVD機能を必要とする人も、もちろんいらっしゃると思いますが、WiiでDVDを見る以上に、ゲームで遊んで欲しいですね。

この返答を見れば、なんとなくDVD再生に乗り気じゃない、と感じられると思います。実際、Wiiに期待する人の中でも、まあDVD再生無くても仕方ないか、と思っていた人はいたことでしょう。現実的な問題としても、DVD再生機能というのは実装後に検証試験をパスしてロゴを受けないと完成したとは言えませんし、実際に売る際にもライセンス料が必要になるはずですので、コスト増加要因とはなるでしょう。(最近は低価格DVDプレーヤーがあふれているので、消費者もタダ同然と考えているかもしれませんが。)そうした意味では、あまり価値がないなら思い切ってのぞいてしまうのは、それはそれは有りな選択だと思ってました。(もっとも、DVDレコーダ買うまでは自分はずっとPS2をDVDプレーヤとして使っていたので、必要な人は必要だと思いますけどね。)


しかし、そういった感じでなんとなくDVD再生なしで話が進みそうだったところに降ってわいたのが、PCでDVDオーサリングソフトなどを提供している、ソニックソリューションズの以下のプレスリリースでした。

ソニック、任天堂の Wii™ の将来バージョンに DVD 機能を提供 - Sonic Solutions/ プレスリリース

実は海外のニュースサイトではしばらく前にも同様の話は出ており、ゲーマーホリックさんのところなどで紹介されていたいたので知ってはいました。
[Wii] 『Wii』 DVDプレイヤー機能付きの本体も発売予定 - ゲーマーホリック

しかし、正直「なんでいまさらDVD?チャンネルで追加なら分かるけど、別モデル出すのは意味不明だよな」と思い、噂レベルの話だとスルーしていました。ただ、今回のプレスはこの噂を裏付ける形ですよね。

今回さらに大きな混乱を呼んでるのは「2007年下半期に出るWiiの新バージョン」という言葉ですね。これが非常に曖昧な形なのが、騒動の一因のように思われます。

不可解な「Wii新型バージョン」についての情報

上記新バージョンについてはインパクトがあっただけにいろいろ報道が出ているのですが、その表現が曖昧だったりぶれが見られます。

まず、騒動元のソニックのプレスにおける表現。「このWiiバージョン」という、どっちかというとソフト実装っぽいニュアンスです。

任天堂は、2007 年下半期にこの Wii バージョンをリリースする予定です。
Sonic Solutions/ プレスリリース

上記に対して、「詳細は未定」とする記事。

次期バージョンのWiiは2007年下半期に発売される予定。詳細は未定となっている。
ITmedia +D Games:ソニック、Wiiの将来バージョンにDVD機能を提供

なお、現在のところ、任天堂Wiiの将来バージョンについては具体的な発表は行なっていない。
任天堂「Wii」のDVD対応モデルが2007年下半期発売

さらに、確認取ったものの詳細未定とする記事。

任天堂ソニックの両社に、この「将来バージョン」の具体的な内容について尋ねたところ、明確な回答は得られなかった。単なるシステムソフトウェアのアップデート版なのか、ハードウェアに何らかの改変が加えられたものなのかは、現段階ではわからない。

任天堂「Wii」でDVD再生が可能に − 来年下半期登場の「将来バージョン」で対応 AV&ホームシアターNews

さらに、広報からのコメント補足した記事が以下のものになります。

この新バージョンのWiiについて任天堂は「DVD再生機能を搭載したWiiを2007年下期に発売するということが決まっているだけで、形が現状のものと変わるのか、その他に新機能が追加されるのかなどは、一切未定」としているが、「DVD再生機能が付いているので、12月2日に発売される機種よりは価格が高くなる」としている。なお、12月2日に発売される機種にソフトウェアなどによるバージョンアップは予定されていないとしている。
ソニック・ソリューションズ、2007年下期発売予定の「Wii」新バージョンにDVD再生機能を提供

任天堂によれば、DVD再生は当初からの予定であるが、当初予定していたアタッチメントでの対応に加え、DVD再生に対応した新型機種発売の可能性も含めて、現在のところは未定とした。なお、Wiiではゲーム用に12cmの光ディスクドライブを採用しているが、ソフトウェアバージョンアップなどによる Wii単体でのDVD再生はできないという。
任天堂、WiiのDVD再生対応は2007年下半期に。新型モデルの可能性も

Wiiの新バージョンに関して任天堂は「2007年下期にWiiの新バージョンを発売し、ソニック・ソリューションズのDVD再生機能を搭載することは決っているが、形状やそのほかの機能については未定」(同社広報)とコメント。また、「価格は2006年12月2日に発売される機種よりも高くなるだろう」(同社広報)とのこと。なお、2006年12月2日に発売される機種に、ソフトのバージョンアップによるDVD再生機能の追加は予定されていない。
2007年下期発売予定のWiiの将来モデルにDVD再生機能が搭載 / ファミ通.com

こうしてみると、一応最後の3つはほぼ同じことを言ってますね。ファミ通とGAMEWatchは文章までほぼ一緒なところを見ると、任天堂広報から、同一文面のメールかFAXでももらったのかもしれませんね。

とはいえ、任天堂以外から出たリリースを受けて、返答する任天堂側が「まだ未定な部分が多い」と応えるのは、最近の任天堂を見ると、かなり異例な状態だと思います。

任天堂の徹底した情報公開と管理

岩田社長になって以降、こうした大きな項目の情報公開については、かなりしっかりとした形でやってきた印象があります。説明会の質疑応答を書き起こして公式HPにのせるなどしていますしね。

任天堂株式会社 経営方針説明会 質疑応答
Wii Preview Q&A - Wii

一方で、「公以外のコメントを抑え、誤解・曲解を含む報道を避ける」という姿勢も見受けられます。実際、ImpressなどではナムコSCEなどのクリエーターなどが多数インタビューなどに答えていますが、任天堂がインタビューに答えることはほとんどありません。唯一の例外は以下のGAMEWatchに寄せられたコメントぐらいでしょうか?

任天堂、岩田社長よりWiFiを利用した無線通信サービスに関するコメントを独占掲載!!

Wiiという名称も、大きくリークされることなく突然HP上で公開されました。E3の内容なども、直前にはある程度漏れていたとはいえ、かなりがちがちに固めていた印象。Wiiの宣伝方法も公式のHPに、公式のインタビュー、任天堂主催の体験会と、とにかく主導権を自らの手に置き、コントロールできる形での情報公開に努めていました。ゲーム雑誌などでのインタビューなども、ファミ通などにはかなり限定的ですよね。基本的には任天堂専門誌が中心な印象。ほぼ日にインタビューをたくさんのせたりするところを見ても、基本的に気心の知れた、信頼できる相手に積極的に情報を公開し、悪意あるねじ曲げや偏見などが報道に混じらないよう気を付けてきた印象があります。

提携相手主導なプレスリリース

ただ、一部違うところがあるのは、部品やミドルウェアで提携しているところの情報公開です。これは、任天堂自らが行うことは少ないです。基本的にその主体となる会社がプレスリリースを行っています。ざっと思いつくところでは、以下のようなものです。

このように、他社の技術、製品を使わせてもらう場合には、基本的には任天堂からアナウンスするのではなく、その提供元がアナウンスする形です。これは、義理を通す意味でも好ましい態度と言えるでしょう。実際、こうしたプレスリリースがあった直後は、株価がすさまじい勢いで上がったりしますので。

今回は、こうした提携相手主導のプレスリリースが、混乱を招いた形になりますね。ただ、基本的に相手側にプレスリリースをさせるとしても、任天堂の許可なしにプレスリリースできるとは思えません。守秘義務など契約で縛られているでしょうしね。そう考えると、今回のWiiのDVD対応についてのプレスリリースは、任天堂らしくないな、と感じるところがあります。


意味不明なプレス発表の意図

正直、今回のこの発表は、発売直前の状態でもあるだけに無駄に混乱を与えるだけで、任天堂にとってあまりメリットがあるようには思えません。そもそも、2007年に新型が出ると言うことについても、その新型というのがどの程度なのかによって、意味は非常に異なってくるセンシティブなものです。

単にDVD機能が追加されただけであとは全く従来機と一緒であるなら、それはいわゆるゲームキューブの時の松下Qと同じ位置づけであり、Wiiそのものにはあまり影響はありません。ただ、任天堂自身がニンドリのQ&Aでも「DVD再生機器は普通すでに持っている人が多い」と言っている割に、単にWiiにDVD再生機能だけつける、というのも解せません。要するに、さほど重要でないと思っているものを追加するために別バージョンを価格を上げて出すわけですしね。
まあ一応、この実装であれば2007年後半に出てきても不思議ではないですが、価格差によっては商品価値としてはあまり高くないと思います。価格差が小さいならば、WiiリモコンとDVDとの親和性は高いと思うのでいいと思うのですけど、価格差の小さいもので2モデル用意するのも、効率が悪いと思います。DVD再生程度の付加価値なら、ソフトのみでの対応、もしくはまだアタッチメントの方がしっくり来ます。


一方で、仮にWii新バージョンがDSLite相当だとすれば、もっと問題です。つまり、単にDVD再生機能がつくだけでなく、例えばフラッシュメモリ増量とかリモコンの充電対応といった、ゲーム関連もハイスペックになる場合です。こうなると、そういったハイスペックに引かれるゲーマーも多数いますし、不満がより大きくなってしまうでしょうから。(本当にスペックアップすると断言しているわけではないで、誤解無きようお願いします。あくまで仮定の話です。)

DSLiteの時は、年末の品切れの中、苦労して探し回って家族の分を買ってあげ、皆で喜んでいただけに、大変なショックと、裏切られた感覚を受けました。このあたりのことは、その発表された日のエントリーに記してあります。
わぱのつれづれ日記 - DSの上位機種「ニンテンドーDS Lite」が発表に - Nintendo iNSIDE
結果的に、DSLite自体はGBA関連で出っ張ること以外はよくできていましたし、売れ行きも毎週10万以上という売れ行きを継続したことから、現在ではあまり批判的なコメントは聞かれません。ただ、あの瞬間に大きな衝撃を受けた人は多数いたことでしょう。
今回の「Wii新バージョン」というのも、「また任天堂がやらかすのか」と思っても、別に不思議なことではありません。任天堂GBASPDSLiteという前科を持っている会社なのですから。幸い、今回はWii発売前なので、買ってからだまされた、という過去の状態よりはましですけどね。発売日に購入する予定の人からみたら、ハイスペックバージョンを出すならせめて2年は期間をおいて欲しいと思うのではないでしょうか?DVD再生がさほど重要でないと思っている自分から見ても、正直いい気分はしませんし。


つまり、DVD機能を足すだけの別モデルでは商品価値なし、その他付加価値があるようだと、発売日に買うユーザが何か嫌な感じがしてしまい、デメリットありという感じで、どっちにしてもうまい話ではありません。普通に考えれば前者なんでしょうが…。

一刻も早い任天堂公式プレスリリースに期待

以上のように、今回のソニックのプレスリリースは、任天堂にとっても消費者にとっても、あまりいい話はないように思うんですよね。一体どういった経緯でソニックがこのプレスを出したか気になるところです。任天堂の許可なしにここまでしっかりしたプレスを出すとは思えませんし、何を思って任天堂がOKを出したのかも解せません。
こうした、曖昧な情報公開により消費者に混乱を与え、余計な憶測、噂を生んでしまうことは、任天堂の本望では無いでしょう。実際、まだ決定していない情報が大いにしても、それだったらなぜ今回ソニックからこうしたプレス発表が行われたのかという背景・経緯の説明、発売日に買うユーザが不利を被ることは無いのかなどのしっかりとした説明を、迅速に行って欲しいと思います。いくら現在任天堂に世間が好意的であっても、対応を間違えば一瞬でそれらは覆ってしまいますので。