CEDEC2006 ファミ通浜村氏基調講演

現在開催されているCESAデベロッパーズカンファレンス(CEDEC)2006。CESAがらみと言うことで、サード中心でどちらかというとPS陣営的な話が多いのですが、その中であのファミ通浜村氏も講演しています。

【CEDEC2006】2日目の基調講演で浜村弘一氏がゲーム産業の将来を展望 / ファミ通.com
4Gamer.net [CEDEC 2006#06]浜村弘一氏基調講演「プラットフォームに縛られる時代は終わった」
CESA DEVELOPERS CONFERENCE 2006レポート

今回は珍しく、「携帯機が牽引」とせず「ニンテンドーDSが牽引」としていますね。いつもはPSPも含めて両者の功績のようにしていたんですけど。さすがに毎週PSPの4倍以上売れている状況に加え、ソフトについてもTOP10をDSが独占するような状態でPSPまで同列に扱うのは無理だと感じたんでしょうかね。
ちなみに、DSに対する不安として、よくある「サードが売れない任天堂」をあげていますが、それに対して「FF3が売れたから今後は改善」と、特に深みもない解説をしています。FF3はなんだかんだ言ってもリメイクではあるので、これだけを持ってサードのソフトが売れるようになる、と言うにはちょっと早いような気はしますけどね。とはいえ、DS陣営に参加したいけどいまいち売れるか不安に思っていたサードにとっては、いいきっかけになるのかもしれません。

○比較的まともな次世代機戦争の分析

次世代機については、意外にもWiiを本命視。PS3についての代弁は必死で行っていましたが、Wiiを持ち上げるのは浜村氏としては珍しいですよね。正直、逆に不安になってしまいますw。Wiiを推す理由としては『「ファンがファンを呼ぶ構図」ができていること』とのこと。これについては、自分が以前に述べた「触れなくても「面白そう」なDSのゲーム」と近い論調ですね。要するに、プレイしている場面を見るだけ、感想を聞くだけで、楽しさが口コミで伝わっていくという正の流れですね。
そして、課題点としては「"ならでは"のゲームを提示できるか」とのこと。自分は以前、「「任天堂が挑むべき課題」について」と題して、とにかくWiiの死角と思われるところを列挙しました。その中には、すでに任天堂が克服できていることもありますが、まだまだ不安要素があるのも事実。「ならではゲーム」を作ることは、移ろいやすい浮動層であるライトゲーマーをWiiに引き入れていくためには必須でしょう。なにもせずにDSからWiiに流れ込んでくれるわけがないのですから。とりあえず、WiiSportsがキラーなのは確かでしょうが、それ以外に第2弾、第3弾と独自タイトルを出す必要があるでしょうね。Wiiに続編を安易に出されると、ただでさえグラフィックの進歩が少ない分、よけいに古くさい・進歩のないイメージが出てしまいますので。

PS3については、以前の浜村通信で書いていた持論を展開してますね。2007年末ぐらいからが本番だと。ただ、今回はちゃんと課題点として、BDがDVDほどの『吸収力』がないこと(普通牽引力と言うと思うが…)、「スロースタートを挽回できるか?」ということをあげている分、説得力はありますね。BDがDVDほどの牽引力がないという点について、「高解像度テレビが前提だから」というのも、自分の考えと同じです。いくらHDTVが普及してきているとはいえ、まだまだSDTV所有者が多く、なおかつHDTVを持っていたとしてもリビングに1台ぐらい。カジュアルにPS3を楽しむには、まだ環境ができてない感じですしね。また、スロースタートについての課題も至極もっとも。というか、ファミ通コラムの段階で触れてほしかった。PS3陣営やアナリストは、とかく2007年末以降とか、10年は戦えるとか気の長いことを言ってますが、出だしで躓くと消費者が尻込みし、ソフトメーカーも尻込みするという、今のXbox360みたいな負の連鎖が起きるのはよくあること。いくらブランドイメージが高いソニー、PSだからといっても、大きく差をつけられてしまうと挽回が難しいと思いますよね。なんだかんだ言って、2007年末までは他のゲーム機といい勝負しておかないときついと思います。
Xbox360は、売れ行きのムラがあるものの、負けはないという判断らしい。まあ、北米では強いですしね。デッドライジングも50万本出荷しているようですし。あと、個人的にはVistaの普及がXbox360の行方も握っていると思いますね。Vistaは3Dグラフィック機能必須となる分、とりあえずVistaが満足に動くPCを買ったユーザなら、かなりきれいな3Dゲームを楽しめます。これは、これまでPCの弱点であった「3D性能のばらつきの大きさ」をある程度改善できることにつながります。このため、PCゲームとのソースレベルでの互換が高く、対戦ゲームでも相互接続しやすいXbox360としては結構な強みとなるでしょう。あとはVistaがどの程度売れるか、という問題はありますが、MSは「XPのサポート打ち切り」という、恐怖の販売戦略がありますからね。腑に落ちないながらもセキュリティを考えれば買い換えざるを得なくなりますので。こうした強引すぎるMSの手法も、なんだかんだいって強みではあります。(もちろん、自分は好きじゃないですけどw。)

○結論ありきで説得力にかけるオンラインゲーム分析

上記の次世代機戦争については、まあそれなりにまともな発言のように思えたのですが、オンラインゲームの話になってくるとどうにもおかしくなってきます。浜村氏の論調では、まるでオンラインゲームが将来的な勝者、みたいな大げさな言い方。その根拠はソフトバンクの「Gプラネット構想」のようです。たしかに、最近のソフトメーカーのオンラインゲームへの力の入れ方は相当なものですが、それはどちらかというと据え置き型でうまくいかなくなってきたための後ろ向きな理由が大きいのではないでしょうか?それに、最近のWeb2.0の流れをうけて、ネット関連の方が投資や資金が集めやすいというのもあると思います。ようするに、注力はしているけど、まだ実態がない状態なんですよね。課金にしろ、継続性にしろ、発展方法にしろ、まだまだ課題は山積みな訳です。
そんな状態で、ここまでオンラインゲームを持ち上げるというのは、やはりいつものように、浜村氏の偏見、意志が先に来てしまっているからのように思います。要するに、オンラインゲームに注力しているソフトメーカーの代弁者という位置づけです。こうした代弁的なコメントが出てくると、とたんにうさんくさくなってしまうのが、浜村氏の悪いところですね。
(ただ、ゲームクリエーターへのアンケートの内容はちょっと面白かったですけどね。Wii、DS、PS3が60%以上が作りたいと思っているのに対して、PSPが27%ぐらいというのも興味深いです。)

○『持論』と『誘導』とを混在しない発言を期待

浜村氏の講演のオチは「もはやプラットフォーマーにビジネスを縛られる時代は終わった」というもの。前半の次世代機分析はどこに行った?という結論。最後にポンと出てきたオンラインゲーム分析がそのまま結論に直結しているわけで、なんだかなぁ、という話の持って行き方ですよね。
もっとも、「自分が何を持っているかを見極め、自らの持つリソース(資質)に合わせ、どんな作品を作るか」という話自体は、自分が昨日述べた「粗製濫造せず実力にあった物作りを」という考えと近いところはあるのですが。
まあ、CESA主催のイベントなだけに、ソフトメーカー主体の結論に持って行きたいという意図は分かるんですが、結局こうした強引な話の持って行き方は、浜村氏自身の信用の低下につながってしまい、あまりいいことではないと思うんですけどね。

ちなみに、以上の浜村氏の講演について、4Gamerの記者はなかなか鋭い駄目出しをしています。

厳しいことを書かせてもらえば,全体として,どこかで聞いたような話の寄せ集めという印象はぬぐえない。オンラインゲームビジネスの注目例として,ネットワークインフラと携帯電話を持つ企業という,極めて特殊なものを挙げたことが,どれだけの意味を持つのかも,正直疑問が残る。

同業のゲームマスコミ最大手の社長に対するコメントとしては、かなり辛辣ですね。でも、同業者であってもこうした批判もたまには書いてくれてくれた方がいいですよね。浜村氏も、とりあえず電波発言ばかりでなく比較的正論もまぜて話せるようになったようですので、今度はもうちょっと結論のところを恣意的に見せない努力をしてほしいところです。