マリア様がみてる 仮面のアクトレス

マリみての待望の新刊。今回は短編「黄薔薇、真剣勝負」と本編「仮面のアクトレス」、補足話の「素顔のひととき」の三本立て。各々について内容をみていきたいと思います。(ネタバレあり。)

まずは「黄薔薇、真剣勝負」。有馬菜々支倉令に挑むという展開。島津由乃が揺れる気持ちの中見守る、という感じですね。自転車練習のネタとあわせて、由乃の親離れならぬ姉離れをうまいこと描いてましたね。最後の、「絶妙のタイミングで手が離れた」という表現がきれいでした。へた令のはずの令が妙にかっこよすぎですw。あと、有馬菜々も微妙に由乃を気にする描写があってよかったですね。結局、菜々が令に挑んだ動機ははっきり書かれていません。菜々自身も分からないとは言っていましたが、なんとなく令から菜々へバトンが引き継がれたのかな、という印象。由乃の面倒というw。


続いて、「仮面のアクトレス」。今回も妹決定までは行きませんでしたが、着実に進歩はしているのかな、という話。去年もあった山百合会役員選挙に、なんと松平瞳子が出馬、という展開でした。結局、瞳子は負けてしまうのですが、その目的がどうやら「負けること」だったらしいのがなかなか謎な展開です。レイニーブルーのときにある意味敵役となり、そのイメージを引きずっていたわけで、何らかのけじめをつけたかったのか?それとも、この選挙の負けもお家事情らしきものと関連しているのか。いまいちはっきりしませんでした。瞳子のイメージは、何かこの話ではかなり作者が意識して、序盤のころの嫌みなキャラと最近のツンデレキャラの誤差を埋めようと努力している感じがしましたね。チェリーブロッサムのころとキャラ変わりすぎてますからね、瞳子は。まあ個人的には普通にツンデレキャラでもかまわないのですがw。一方で、可南子がストーカーだった頃の印象をとどめておらず、別キャラになってますし。ただ、瞳子の母親が登場し、その母親の印象について語るときの素なリアクションは、萌えポイントなんでしょうね。あと、スリッパでペッタペッタとか、マスタード・タラモ・サラダ・サンドとか。タラモサンドって、確か佐藤聖が好きだった気もしましたが。このあたりのキャラ作りも、同人の人にはネタとしていろいろ使えそうですね。
それ以外では、二条乃利子の瞳子ラブ度がどんどんエスカレートしているのが。終始瞳子を気にしているし、ボケもかますし。瞳子に「友達って言ってくれてうれしかった」と涙するシーンはなかなか感動的でした。
福沢祐巳は、一応中心的立場でしたが、あれこれ瞳子の真意をはかりながら悩んでいるだけで、これといって目立った活躍はしてませんでしたね。最後には自分の意志で自分に投票しましたが、それ以外これといった印象はありません。
由乃は相変わらずの暴走ぶりで。演説の前には令に対して「あの女(アマ)」よばわり、演説でも瞳子批判で暴走など。通常の会話でも「令ちゃん」呼ばわりを平気でしているし。蔦子が「瞳子立候補で危ないのは由乃」と言ったのも無理ありませんw。
藤堂志摩子はもう無敵キャラ化してますね。由乃が毒はいているところで、「そういうところが好き」とか言ってみたり。実は聖様の女たらしテクニックも受け継がれているとかw。


最後は、前にもあった令と小笠原祥子のやりとりを描いた「素顔のひととき」。この組み合わせもいいですね。令が最初の短編でうまいこと妹を姉離れさせたのに対して、祥子の場合は必死になって妹離れを自分がしようとしているところが、らしくてほほえましいですね。卒業が近づいてきてだんだん陰が薄くなってきていますが、こうしたシーンをちゃんと描写してくれるのが、今野緒雪さんのいいところでしょう。


ともかくこの話では、イベントは一つこなされましたが、謎はまだまだ残ったまま、という感じですね。まったりとマリみては続いていくのでした。