セガ、ハドソンハードの名作がレボリューションに向けてネット配信 / ファミ通.com

昨日のGDCで発表されたレボリューションのバーチャルコンソールへのセガ、ハドソンの参加。マスコミでしっかりした記事が出てきていますし、各社からの正式発表もされていますね。

セガがレボリューションのバーチャルコンソールへのソフトの提供を表明 / ファミ通.com
ハドソンがレボリューション上でのソフトダウンロードビジネスに参入! / ファミ通.com

しかし、任天堂ハードに、過去に競争してたセガとハドソンのゲームが載る、というは感慨深いものがありますね。特に、自分は元メガドライブユーザで、スーパーファミコンも持っていなかっただけに、セガの正式参入は魅力的です。PCEも、友人宅ではボンバーマンなどで非常に盛り上がりましたしね。PCエンジンについては、どうやらCD-ROM^2まで対象に入っているのが少し驚きです。おそらく、CD-DAの部分は圧縮するなどして配信するんでしょう。圧縮CDイメージ、みたいなものにも対応するのかも知れません。PCエンジンはCD-ROM^2がある意味主役だったと言っても過言ではないので、これはうれしいところですね。イースI&IIとか、プレイしてみたいところです。

このバーチャルコンソールの構想、岩田社長がGDCの講演の中で、「iTunesのゲームバージョン」という表現を使ったのが非常に興味深いところですね。自分は以前、レボとアップルの提携の可能性について論じたことがありますが、未だにその可能性はあると思っています。しかし、この発言の意味としては何より、「違法なソフト流通を、合法で安価なソフト流通で対抗する」ということにあるのではないでしょうか?


iTunes登場以前、アメリカでは爆発的にP2Pが普及し、MP3の無料ダウンロードが広まりました。これは、なによりも無料で曲が聴ける、と言う点もありましたが、それ以上に、好きな曲を、好きな曲だけ、手軽に検索して即座に聞くことができるという利便性の向上が非常に大きかったわけです。しかし、基本的にこうした著作権物のアップロードは違法であり、ダウンロードも社会的モラル違反なのは間違いありません。音楽業界や著作権団体は、こうしたP2Pでの流通を徹底的に目の敵にして攻撃していました。
それに別のアプローチで一石を投じたのがアップルな訳です。アップルは、P2Pではやっている音楽流通を、その利便性はそのままに、手軽に利用できる料金で実現。試聴も可能で無駄なお金を払うこともなく、なによりiPodという非常に魅力的な携帯プレーヤと手軽に連携もできるという、ユーザへの利益も大きい仕組みを作り上げました。これにより、消費者は社会的モラルに反しているという後ろめたい気持ちを持つこともなく、合法的に安心して、安価にネットでの音楽入手が可能になったわけです。iTMSが普及したからと言って、音楽のP2Pでの流通が激減した、ということはないでしょうが、それでも圧倒的多数であるモラルをもった人間の利用者を増やし、ビジネスモデルを確立させたことで、著作権者などのネット流通への反抗を押さえることに成功したのです。


レボリューションのバーチャルコンソールも、それと同じような効果が得られるかも知れません。PCでは、かなり以前からレトロゲームエミュレータが広がっており、過去のゲームソフトが多数ネットに流れていたりします。これらエミュレータでは、手軽にPCで入手困難なゲームをプレイできるだけでなく、どこでもセーブができたり、速度調整ができたり、スナップショットがとれたりと、通常のゲーム機でやる以上にプレーヤにとって便利な点が多かったりもします。こうした位置づけは、MP3のP2Pでの流通とよく似ている印象です。しかし、以前はPCでアングラ系というかぎられた範囲だったエミュレータも、ソニーPSPエミュレータ可能にするセキュリティホールをつくってしまうという大失態をやらかしたこともあり、急速に一般層にも利用が広がってきてしまいました。任天堂からしてみれば、自社の過去の遺産でライバル企業のハード環境が潤っている状態になってしまい、とても看過できるものではないでしょう。かといって、訴訟とかに持って行くのも難しい問題です。
それを、今回のバーチャルコンソールでは、iTMSとにたような仕組みで打破しようとしているのではないでしょうか。入手困難な過去のゲームを、手軽にプレイする、というユーザにとっての利便性を、プラットホームメーカーが自ら安価に提供することで、消費者はアングラな世界に手を出すことなく、安心してその恩恵を受けることができるわけです。また、ゲームソフトメーカーも、安価でも確実に、大量に販売することができれば、過去のソフト遺産により収入を得られることができるわけです。ただでエミュレータでゲームをやられるよりはよっぽどましでしょう。


ブロードバンドの普及など、急速に広がりを見せるインターネットの世界。一方で最近のWinny騒動のように、大きな混乱も多数起きています。そうした中で、いかにこの優れた、しかし混沌としたインフラの中でビジネスモデルを確立していくか。このことは、ありとあらゆる業界で重要となってくるでしょう。音楽については、アップルのiTMSで一つの解法が見いだされました。ゲームについて、レボリューションのバーチャルコンソールが同じように解決の道筋を見いだすことができるのか、非常に注目したいところです。