マリア様がみてる 未来の白地図 感想

発売日は22日だったわけですが、ようやく購入。一気に読み進めました。全体を通した感想としては、「ようやく動き始めた」というところでしょうか。福沢祐巳松平瞳子のスール問題。表紙の絵からもこの問題が中心になるとは思われましたが、まだまだ始まったばかりと言うところでしょうか。とりあえず、妹候補が瞳子に絞られたのは間違いないところですが、完全に妹にするにはまだいくつか問題をクリアしないといけません。遅ればせながら感想です。

祐巳瞳子

話の中心である祐巳瞳子の妹問題。現状では祐巳瞳子に対する感情の説明が不十分です。瞳子の方は、これまでに何度か祐巳の天然、奔放なところに惹かれていたところが表現されていましたが、祐巳に関してはほとんどありません。この状態でいきなり瞳子を妹にしても、いまいちしっくり来ません。今度の新刊でも、正直まだまだ不十分です。瞳子が家のことで悩んでいることで、どうにも心配になり、気にかかり、そして意識していると自覚する、ということなのですが、いまいちその突然意識している感じは伝わってきません。同情しているようにしか。ただ、このあたりは今野緒雪さんの意図したものの可能性もあります。ただ漠然と意識し始めた、ということを、祐巳自身うまくコントロールできていない、という状態なのかもしれません。そして、それは「同情にしか見えない」ため、瞳子にもそれを見て取られて最後、妹への誘いへのきつい断りへとつながっているのではないかと。
瞳子についても、これまでは単なるツンデレ、ほとんど発言も無かったわけですが、今回は妹候補としての本格化のために、かなり発言や描写が増えています。現状ではかなり強烈な「ツン」状態ですね。それでも、冒頭でなんとなく祐巳の所に来てしまうところは、かなり祐巳への意識があることが見て取れますが。これまでの経緯からして、瞳子の家の事情、というのも志摩子の住職関連と言い、かなり突拍子のないものになるのでしょうね。

●令と祥子

それ以外でも、本巻ではいろいろな描写があって面白かったですね。一つは支倉令小笠原祥子の会話。由乃の病気が治り、妹も作ろうとしているのを見て、守るべき相手が強くなってしまったことをあらためて思い知らされた令。これまでも、何度かへた令を克服するチャンスはあったのですが、結局へたれを直しきれなかったわけですが、今回はようやく子離れを決意した模様。たいした進歩です。一方で、祥子はリリアン大学へ進むことへ。令は、由乃がいると弱い自分を見せてしまい、強くなれないのに対し、祥子の場合は、祐巳がいることで、固かった自分が変わることができる、そのことはプラスに働いていると祥子自身が判断できているということなんでしょう。祥子と祐巳の別離も一つのテーマになるかと思っていましたが、これがなさそうということですかね。まあ、ハッピーエンドな感じでよくはありますが。

由乃と菜々

さて、もう一本の軸は島津由乃有馬菜々。菜々の完璧超人っぷりはますます健在。由乃が振り回されっぱなしとなっています。令には興味を見せるくせに、由乃自身には興味を示していないのが悲しいところ。しかし、菜々の興味を惹こうと必死になったり、あれこれ悩んだり、ちょっとした菜々の言葉に一喜一憂する由乃様子は非常にほほえましいですけどね。 菜々が妹になることの決意はどういったことをきっかけにするのか、こちらにも注目です。

●その他の人々

その他、乃梨子はますます瞳子ラブっぷり。無神経に瞳子を誘うよう依頼してくる祐巳に反抗し、それを志摩子にたしなめられて涙ぐむ、など、最近のクールな様子はどこへやら、情緒不安定娘になってます。でも、友達思いで好印象ですけどね。志摩子も、乃梨子の感情を感じた上で、「何となく」という自分の直感を信じていろいろ裏で動いているところも面白いです。
そのほか、小夜子様、祐巳の家族など、いろいろ描写があって楽しかったですね。


新刊で一気にストーリーが動き始めたました。早ければ次巻で妹決定となるのかもしれませんが、個人的には二巻ぐらいかけて、じっくりと心理描写をして言って欲しいと思います。せっかくここまで続いているのですから、納得のいくストーリーを是非紡ぎ出して欲しいですね。