PSP®「プレイステーション・ポータブル」全世界生産出荷累計1,000万台を達成 - PlayStation.jp | プレスリリース

ソニーすげええええ、再び。


苦戦が伝えられていたPSPですが、何と全世界で1000万台を達成したそうです!
しかし、この数字、実は毎度おなじみの「累計生産出荷台数」なんですよね。この用語は、ソニーだけが用いている用語で、「工場で生産され、どこかへ出荷された台数」を表します。この数字のすごいところは、たとえ子会社の倉庫に移動しただけでも、累計生産出荷になってしまうところです。つまり、倉庫に移動しただけでもカウントされてしまうんですね。普通、出荷台数と言えば小売りまで、販売台数と言えば、実際に消費者の手に渡った台数を表します。しかし、ソニーだけはずっとこの「累計生産出荷台数」という言葉を使っているんですね。
で、この数字が以下におかしいか、それは他の情報ソースと比較するとよく分かります。
まず今回のソニーが発表した、全世界の累計生産出荷台数は以下の通り。

日本(アジア含む) 300万台 (発売日 2004年12月12日)
北米 447万台 (発売日 2005年3月24日)
欧州(PAL地域) 253万台 (発売日 2005年9月1日)

メインである日本が、なぜかアジア含む数字、しかも綺麗に300万台。普及の目安となる数字になっています。北米と欧州は中途半端な数字ですが、足すと綺麗に700万台。見事なものです。

一方、他の情報ソースです。まずは海外の販売台数。
「PSP」販売、ホリデー商戦中に倍増めざす=SCE米国法人CEO - ロイター
このなかで、SCEAのCEO、平井一夫氏が、以下のようなコメント出しています。

「北米の販売台数は9月末時点で約230万台」

まず、この時点で447-230=217万台ものずれ。
次に日本。こちらはメディアクリエイトの発表している週間販売台数が、2ch■ ハード売上を見守るスレッド Vol.16 ■などで随時カウントアップされています。それによれば、PSP(およびDS)の国内販売数は以下の通り。

          DS    PSP   (DS-PSP)  累計差
2004/4Q  1,286,074  352,295  933,779  933,799
2005/1Q   694,892  753,120  -58,228  875,551
2005/2Q   550,997  355,007  195,990 1,071,541
2005/3Q   730,039  357,830  372,209 1,443,750
〜10/02    43,362   .31,702   .11,660 1,455,410
〜10/09    39,137   .31,089   .. 8,048 1,463,458
〜10/16    44,262   .29,162   .15,100 1,478,558
販売累計  3,388,763 1,910,205 (メディアクリエイト調べ)

10/16までで191万台。よって、300-191=109万台のずれが発生しているわけです。
残り、韓国と欧州がありますが、これはこれといった情報はありません。しかし、北米での2倍近く異なっていることを見れば、日本、アジアでも韓国だけで100万台売っているというのはちょっと信じがたいですね。
こう考えると、実際の販売台数と比較して、なんと300万台ぐらいの差がある台数な訳です。これで「1000万台突破」、なおかつ「当社で出したゲーム機で一番早い」とか言っているのが、もうあきれてものも言えません。


正直、この値は自分は生産出荷ですらないのではないかと思います。というのも、数字、時期があまりに意図的だからです。北米の200万台以上の差、これは上記リンクで出した記事にある、「北米で年末の販売目標は250万以上」という数字とマッチします。また、日本についても、300万台というあまりに綺麗な数字。このあたり、かなりの作為的なものを感じます。そして、たとえ本当に生産出荷していたとしても、300万台近く在庫として眠っているわけです。年末商戦向けの作りだめ、と言ってもまだ年末までは1ヶ月以上あるわけです。その間も生産は続けるわけで、今以上の在庫が発生していくわけです。全然自慢になっていません。

思えば、PSPを発売する前、以下のような販売予想をソニーは出していました。
スクリーンショット
この図では、PS2を上回る、あり得ないほどの垂直立ち上げを示していて、多くのゲーマーから失笑を買っていました。しかし、今回の発表からよれば、このスクリーンショットのグラフを綺麗に10ヶ月ぐらいで実現していることになるわけです。うーわ、すごいですねぇ。なんという有言実行でしょうw。まあ、あり得ない予測をたて、あり得ない生産出荷台数を公表するだけならば、誰だって有言実行できますけどね。口だけなんだから。(本当に計画通り生産しつづけて、在庫の山になっているならそれはそれで地獄だけど。)

任天堂は、この間のカンファレンスで、国内出荷台数が350万台、販売台数でも300万台と、比較的近い値を公表しています。本来はこうあるべきではないでしょうか。ソニーのやっていることは、映画とかの「全米No.1ヒット」とか、雑誌の通販にある「人気絶頂!」というのとレベルが変わりません。要するにハッタリです。


しかし、各マスコミはこの発表を大々的に取り上げちゃっているんですよねぇ…。

PSPの全世界での出荷台数が1000万台に到達 / ファミ通.com
PSP、全世界累計出荷台数1,000万台を記録
ITmedia +D Games:PSP、全世界での生産出荷累計1000万台を達成
PSP:世界出荷数1000万台突破、PS2上回るペース - MSN-Mainichi INTERACTIVE IT

これらを見て、一般の人たちはまず間違いなく、「おお、やっぱりソニーPSPは売れているんだ、すげー」と思うんでしょうねぇ。こうして裏側を知ってしまうと、なんだかひどくせつなくなります。こんなのを見てしまうと、これまでのPS100万台達成とか、PS2の全世界台数とかも、多分にハッタリが混ざっていたのだな、と感じてしまいます。当時はそれらのニュースを聞いて、単純にすげーなぁ、と思っていただけに、このだまされた、脱力感はなんとも言えません。いつか、一般人もこうした裏側を知る日が来るんですかね?この累計出荷について、そろそろマスコミが食いついてきても良さそうなものですが。


思えば、少し前のニュースで以下のようなものがありました。

Yahoo!ニュース - 産経新聞 - 1位はソニー5兆9762億円 ブランド価値、金銭評価

これ、「日本一のブランド価値」、と言えば聞こえがいいですけど、今回の発表みたいなハッタリばかりを知ってしまうと、嘘ばかり言って客に高いものを売りつける、「日本一中身がない、ハッタリ企業」とも言えちゃいますよね。昔のソニーは、「他のよりいいものを、遙かに高い価格で売る」企業だったのに、今は「他より劣る、もしくはバランスの悪いものを、高く売りつける」企業に鳴っているようです。まあ、最近はそれが通じず、極端に価格破壊して自爆し、業界全体だめにしたりしているから、もうたちが悪すぎ何ですが。

トップの刷新、リストラ策などを公表していたソニー、その当時も冷たい評価を浴びせられましたが、今回の発表を見ても、昨日の不良品新型PS2発表を見ても、ソニーはぜーんぜん変わっていないのがよーく分かりますね。とりあえず、マーケティング部門のトップからクビをすげ替えることをおすすめします。 このやり方は、駄目です。