ITmediaニュース:ジャストが逆転勝訴 「一太郎」アイコン訴訟

ジャストシステムのバルーンヘルプ訴訟について。その控訴審の判決がでましたが、今回はジャストシステムの逆転勝訴と鳴った模様です。記事を見ると、ジャストシステム側が「公知例」として示したHPのシステムが、裁判において実際に公知例と認められ、特許が無効であると判断された模様です。

この問題については、自分も記事:松下VSジャストシステム 考察で詳しくふれています。そのときの主張は、「特許が有効であるならば、いくらばからしい特許であっても、訴え勝訴するのは理にかなっている。ただし、それは日本人の感情にマッチしないので、勝訴したことで松下側も困っているのでは?」というものでした。その気持ちは今も変わっていません。

その上で、今回の判決を見ると、正直松下としては、「負けて利を取った」という印象ではないでしょうか。いくらなんでも、この訴訟の前回の勝訴は世間的に印象が悪すぎました。これでは、いくらジャストシステムから和解金など取れたとしても、ブランドイメージの低下は避けられなかったでしょうから。今回負けたことについて、「当社の権利は主張したいが、他社の権利も尊重する」という発言で、さらなる控訴はしないような印象も受けます。最近業績好調な松下としては、ここは正論をとなえて争う場ではないことを把握しているのでしょう。妥当な判断だと思います。

しかし一方で、今回容易に公知例が示され、それにより判決がひっくり返ったことは大きな意味があるように思います。仮にも、松下の特許は、特許として成立しているものです。その特許成立までには、特許申請者が公知例あげてそれに対する進歩性を主張するのはもちろんのこと、それを審査する特許庁側も、他に公知例が無いかを調べ上げ、たしかに進歩性があるからという理由で特許を認めるわけです。今回、裁判で特許の無効性が認められたと言うことは、ある意味「日本の特許庁の審査がザル」ということを裁判で突きつけられたとも言えるのではないでしょうか。たしかに、ソフトウェア特許は、机上の空論でも特許化できてしまうもので、真似も物質系にくらべれば容易です。判断はむずかしいかと思います。ただ、こうした特許の有効性を裁判で簡単に覆されてしまうのでは、ソフトウェア特許に対する信頼性を失う結果となってしまうでしょう。

今回の件で、松下を「ざまーみろ」と思う人は当然いるでしょう。また、「ソフトウェア特許なんて、そんなものすべて認められない」とか思う人もいるでしょう。しかし、単純にそう決めつけてしまうことは、自分は間違いだと思います。ソフトウェア特許は認められるべきです。そうでなければ、諸外国よりも技術力が高いことで優位性をしめしていた日本企業が、ソフト中心になってきた現在、ますます諸外国に圧迫されてしまうでしょう。
何でもかんでもタダがいい、というのは消費者の理想です。ただ、ハードであってもソフトであっても、優秀な発想、発明については尊重されるべきではないでしょうか。
ただし、現状の申請状況、特許庁の審査状況が不十分であり、不備があることは、今回の件で露呈されました。アメリカはもっといい加減な感じです。ソフトウェアというものは、ハードに対してとかく低く見られがちですが、その真の価値を認めてもらうためにも、こうしたソフト知財処理のさらなるブラッシュアップが、国として急務ではないでしょうか。政府には、こうした国力を伸ばす部分にもしっかりと注力した政治を行って頂きたいものです。