新選組! 「決戦、油小路」

続いて油小路の変。見るまでは詳細は知っていません。伊東と藤堂がなくなるところだという印象はありましたが。
この回は、伊東の屈辱と葛藤、弱さ、意地、そういった人間的な面が存分に現れた、すごくいい回でしたね。藤堂平助についても、その師匠に準ずる武士道がかっこよかったです。
まず伊東。岩倉具視の会合に参加し、いよいよ表舞台に出るときだと勢い込んで発言しようとする。しかし、得意げに話す言葉も、周辺の雑多な意見と同列に紛れてしまっているところが非常に哀れ。その後、個別に聞くという際に率先して話をしようとしても、岩倉から「元新選組の奴の話なんか聞けるか」と言われてしまう。さらに、名前をわざと間違えられてしまうところなど、屈辱以外の何者でもない。それでも、平静を装って対処する姿が痛々しい。会話終了後、得意げな表情から、完全に傷ついて泣きそうになっている表情が印象的でした。
それでもめげずに、大久保利通に自分の案を聞かせようとする伊東。大久保は、伊東に、話を聞いてもらえるようにするには、近藤を斬るしかないと言い放つ。…なんか、この高ずって、武田観柳斎西郷隆盛のときと全く同じなんですけど。利用される側となった伊東が惨めです。これ、死ぬときの構図も武田のときと同じなんだよねぇ。意識してやったのかな、三谷幸喜
近藤暗殺の手はずを斉藤に頼む伊東。この時点でかなり間抜けです。
「疑いをはらしておいてはいかがかな」
とか言っているけど、さくっとばらされてちゃ意味ねぇのに。藤堂が斉藤を止めようとするが、藤堂はあっさり返り討ち。…藤堂って、強いと思っていたのに、剣の腕までへたれ扱いなのがちょっと寂しい。斉藤もそのあと無傷とは行かなかったわけだけど。
伊東は、このあと差しで近藤と話し合い、そこで近藤を刺殺するという姑息な手を選択。近藤はあえて罠と知って受ける。これが今回のメインですな。
近藤と伊東の話し合い。ここは久しぶりに近藤を本当に格好いいと感じた場面で、痺れました。まず、伊東が、斉藤に暗殺を打ち明けたのは、間者説をはっきりするため、とそれっぽい理屈を披露。なるほど、近藤だったら簡単に丸め込まれるかとおもったらそうではなかった。
「伊東先生、それはいけませんな。それでは到底、私を言いくるめることはできません。あなたらしくもない。」
この言葉は、わざと言いくるめられたという、伊東が御陵衛士に抜けたときの状況と賭けているのでしょう。うまい。伊東は、前回簡単に言いくるめられたと思っていたので、面を食らった様子。しかし、なんとか取り直して、新選組にいたという事実が重荷になっていると告白。しかし、その上で相手を説得することでなんとかしましょうと口先だけで言って、いよいよ近藤を斬るそぶり。しかしまたここでぐさっと一言。
「あなたは新選組だからはじかれたのではない。薩摩や長州の出身ではなかったからはじかれたのです。」
この言葉、しびれますねぇ。まさに真実をついているだけでなく、ここで伊東がやろうとしていることも全くの無駄だと言うことをズバリ指摘しているわけですから。そして、自分の武士でなかったことの話を例に出して、その悔しさを説明。平等な世の中をめざすと。
この話を受けて、伊東は泣きそうな表情に。意地とプライドの塊だった男が、素直に他人の意見を受け容れた瞬間。それが非常によく表現されていました。
伊東は完全に敗北を認め、懐刀を差し出す。近藤もそれを分かっていたと告げる。指されるとは思わなかったのか、という問いに、
「私は、ですから、命がけで話をしました」
くー、かっこいい。話で説得することに命をかける、それはなんともすごいことだ。近藤が、人間として、完全に伊東を上回った瞬間でした。
…ここまでは非常にいい話だったのに。すごすがしい表情で帰る伊東に、またまた大石鍬次郎が。武田の時と全く一緒の展開。
「おろかもの!近藤先生のお心を無駄にするな!」
この台詞も、武田と時とほぼ同じだ。そして、言いくるめたと思って通り抜けようとしたところを後ろからぶすり。バカに理屈は通用しませんでした。大石鍬次郎、非常にたちが悪い奴です。さっさと切腹させてください。伊東甲子太郎、最後はあっけないものでした。
ここからは藤堂平助。伊東が討たれたことを知っていきり立つ御陵衛士たちについて油小路へ。土方から平助を助けるように言われた永倉、原田らが待ち伏せ。斬り合うときに藤堂を逃がそうとする。しかし、藤堂は逃げない。この藤堂のことは、沖田が代弁していた。
「あいつが逃げるわけがないでしょう。あなた達が思っているほど子供じゃないんだ。」
このあと沖田は助けに行こうとして喀血。助けよるおゆきの妹。もしかして沖田に気があるのか?
平助は、結局逃げずに新選組隊士を斬っちゃいます。このために、結局永倉以外の隊士にも目をつけられ、他の隊士に斬り殺されてしまいます。永倉たちの目の前で。悲惨です。また遅れて駆けつけた近藤。
「おまえは、誠の武士だ。」
結局、平助は武士道に殉じて亡くなったわけです。史実とはいえ、やりきれない隊士の死が続きます。この後もまだ続くんだよなぁ。気が滅入ります。