深刻化してきたゲーム雑誌とメーカーの依存体質

ことあるごとにゲームマスコミの提灯記事らしきものに自分はつっこみを入れていましたが、以下の野安ゆきお氏の記事をきっかけに、ファミ通をはじめとするゲーム業界雑誌についての仕組みや裏事情についての議論がいろいろされているようです。

野安の電子遊戯博物館:ゲーム雑誌は岐路に立たされている

ゲーム雑誌の収入源として攻略本制作、ということがあり、その攻略本作成の権利を得るために雑誌の誌面に占める記事の割合にも影響が出ている、というもの。DSでは、攻略本が必要でないようなゲームも多いため、結果的に人気があるのに紙面上の割合が少ないという説明です。コメント欄も結構熱いですね。

攻略本が収入源、というのは前にもどこかで聞いたことがある話ですね。自分はファミ通ぐらいしか読みませんが、たしかにほとんどカタログ集みたいなものですしね。ソフトが売れれば、攻略本も売れる、そういったビジネスモデルで動いているということでしょう。攻略記事自体は、最近ではネットでいち早く最低限の情報はまとまってしまうので、速報性としての価値は正直あまりありません。ただ、マスコミならではの画像付き、マップ付き記事がある分、見栄えがいいのはたしか。攻略本などは資料集的な位置づけでもファンにはうれしいものですし。

とはいえ、「攻略本を売りたいゲームの記事しか載せられない」というのは、完全にゲーム雑誌業界側の意見にすぎません。まあ、野安氏はそちら側の立場の人間なので仕方ないのかもしれませんが、消費者がそれにつきあわされても迷惑なだけです。結果は、雑誌の売り上げ低下、読者ばなれなどで反映されていくでしょう。ビジネスモデルがうまくいかないのなら、それに適応して変化してくれないと。提灯記事や偏見混じりの記事で無理矢理自分たちの望むようにねじまげようとすることだけは、勘弁してほしいですよね。


また、上記のゲーム業界側からの言い訳に対して、メーカー側から見た反論を忍さんがなされています。

あくまでも私の知る限りだが、
「例え多くのユーザーが望んでいても、
 情報を独占(もしくは優先)出来ないのなら扱ってやらん」という態度が
某大手専門誌からははっきりと表れており、
この考えこそがゲーム雑誌を岐路に立たせている元凶ではないかと思う。

「忍之物欲館」オープン、他|忍之閻魔帳

忍さんの記事では雑誌名は伏せられていますが、なんとなくこの某大手専門誌はファミ通な気がしますね。後の文章で「キャラものに強いライバル紙」というのは、どうも電撃PSあたりっぽい感じです(もちろん、明言されていない以上、雑誌名は推測に過ぎませんが)。

実際ファミ通の思い上がった態度については、元セガデジキューブの黒川氏が実際の例を紹介されています。

■――ゲーム業界は未成熟な部分も多いから、いろいろな業界を知っている黒川さんは、相当イライラさせられたんでしょうね。
■黒川 未成熟と言えばメディアもそうだよね。僕はエンターブレインの浜村さん(※5)と、面と向かってケンカした数少ない人間だと思うよ。

■――なぜケンカしたんですか?
■黒川 サターン版『バーチャ』発売のときに、エンターブレイン集英社から攻略本を作らせてほしいって連絡があったんですよ。それはもちろん両方にOKしたんだけど、後日あらためて集英社から「『バーチャ』のパッケージのなかに解説本のチラシを入れさせてくれ」っていう連絡があったから、それも承諾してチラシを有償で同梱したんだよね。そしたら、発売日にエンターブレインの浜村さんから「あれはどういうことですか?」って電話が掛かってきてさ。「なんでウチのチラシを入れずに、集英社のチラシだけを入れるのか?」ってことだったんだけどね。

■――ゲーム業界には、とにかくエンターブレインを優遇する慣習がありますね。
■黒川 そんな慣習(最新のニュースはファミ通に出すという暗黙のおきてのようなものがった)はおかしいじゃん。僕は「集英社さんからオファーがあったから入れただけですよ」って言ったんだけど、あちらは「そりゃ間違ってる」っていうんですよ。僕も納得がいかないから「そちらが間違ってます」って言ったんだけどね。で、いろいろやり取りした挙げ句、浜村さんが「一度直接会って話をしたい」って言って会社まで来ちゃった。あのときは塩崎さん(※6)と2人で来たのかな。
新!大江戸デジタル走査線 :4月16日 売り ゲームラボ 掲載インタビューの抜粋 その2

この黒川氏のコメントを見ると、忍さんの訴えるメーカー側の不満というのも非常によく分かるように思います。野安氏の説明では「無理にでも誌面をさかないといけないことがある」ということでしたが、逆を言えばその分、忍さんが指摘しているように、自分の得にならない記事は掲載拒否するということもあるんでしょうね。結果として、双方に不満が残る、と。ぐだぐだな感じですよね。お互いの依存体質が強いからこそ、こうした自体が起こるのでしょう。


こうしてみると、ゲーム雑誌がいかに歪み、危うい状態にあるのかがよく分かります。だからこそ、浜村通信などがしょっちゅう苦しい電波発言を繰り返してしまうのでしょう。ファミ通も、そろそろ週刊は難しくなってくるのかもしれませんね。しかしそうなると一方で、ファミ通の記事での宣伝に頼っていたサードが困るのも事実です。どこかで大きなリストラが必要なんじゃないでしょうか。
1983年にファミコンが登場していらい早20年あまり。その割にはゲーム業界は成熟するというよりもむしろ衰退している雰囲気さえあります。宣伝活動についても、雑誌、メーカー、双方がよりかかって、なれ合いようになっている状態。課題は山積みですが、いつまでもだらだらやっていてもどんどん状況は悪化するだけでしょうし、思い切った構造改革に期待したいものです。